★日本政治の深刻な「ねじれ」解消が急務-(植草一秀氏)

トランプ大統領は大統領選挙中、

「ディール(取引)できる相手とだけゴルフをする」

と述べていたという。

安倍首相がトランプ大統領に取り入ろうとする姿は、世界の嘲笑を買っているが、

この間の会談で、日本が米国に対する従属と上納をさらに強めたのではないかと懸念されている。

日米間で新たな通商協定を締結することになる場合、現在の安倍政権が交渉をする限り、

日本の全面譲歩は目に見えている。

農業などの国内の重要産業を破滅に追い込み、

国民の「いのちとくらし」を脅かす対外的な協定を結び、

さらに日本の国家主権まで喪失するという事態が生じてしまうことが最大の懸念事項である。

今後の事態推移を日本の主権者と国会が厳しく監視しなければならない。

しかし、国内ではいま、安倍政権の存続をも左右しかねない重大事案が表面化している。

すでに一部メディアが伝えているが、

安倍首相夫人である安倍昭恵氏が名誉校長を務める

「瑞穂の國記念小學院」の運営法人である学校法人森友学園が、

大阪府豊中市内の国有地を不当な安価で買取した問題が明るみに出たのである。

豊中市の木村真市議が情報公開請求したことにより、この問題に光が当てられた。

この問題を調査し、スクープ報道したのが朝日新聞である。


大阪府豊中市野田町の空き地だった約8770平方メートルの土地を、

国が2016年6月、この土地に小学校の開設を計画した学校法人「森友学園」(大阪市)に

随意契約で売却した。

木村市議は2016年9月に、情報公開法に基づき価格の開示を求めたが、

木村市議による情報公開請求は通らなかった。

近畿財務局が「学園側から非公表を強く申し入れられた。

公表によって学校運営に悪影響が出る恐れがある」として情報公開を拒絶したと朝日新聞は報じた。

朝日新聞が登記簿などを調べた結果、

森友学園側に契約違反があった場合、国が「1億3400万円」で買い戻す特約がついていたことが判明した。

買い戻し特約の代金は売却額と同じ額におおむねなることが多く、

森友学園の籠池泰典理事長が、売却額が買い戻し特約と同額と認めたため、

売却価格は1億3400万円であることが判明した。

朝日新聞の報道によると、

財務局が森友学園に売った土地の東側にも国有地(9492平方メートル)があったが、

この土地は2010年に公共随契で豊中市に売却された。

価格は約14億2300万円。

森友学園への売却額の約10倍とみられると報じている。

この土地は公園として整備された。


つまり、安倍首相の夫人が名誉校長を務める小学校の運営法人に対して、

国が随意契約で近隣地の10分の1の価格で土地を払い下げていた事実が発覚したのである。

森友学園が買った土地には、2017年春に同学園が運営し、

安倍昭恵氏が名誉校長を務める「瑞穂の國記念小學院」が開校する予定である。

森友学園の籠池泰典理事長は憲法改定を求めている日本会議大阪の役員で、

「瑞穂の国小学校」のホームページによると、同校は「日本初で唯一の神道の小学校」とし、

教育理念に「日本人としての礼節を尊び、愛国心と誇りを育てる」と掲げている。

また、森友学園が運営する大阪の塚本幼稚園は、園児に毎朝教育勅語を唱えさせることで知られている。

安倍首相に直結する巨大スキャンダルの表面化であると見ることができる。

近畿財務局は法人側の事業に影響があるとして非開示を決めたと説明していたが、

朝日新聞によるスクープ報道後に、近畿財務局は売却価格を公表した。

近畿財務局は安価な売却価格と価格非公表の理由について、次のような説明を示している。

問題の土地には地下埋設物があり、その埋設物撤去費用を差し引く必要があったため、

売却価格が廉価になった。

他方、森友学園より、地下埋設物の存在が周知されることにより

小学校に入学する保護者等への風評リスクが懸念されるとの理由で、

売却価格非公開の要請があった、としている。

これらの諸点について、

「日本会議」について掘り下げた追跡をされているジャーナリストの菅野完氏が、調査詳報を展開されている。

周辺土地価格の10分の1にまで地下を下げてしまう「地下埋設物」とは何か。

そのような、土地の価格を激減させるような「地下埋設物」が実在するのか。

仮に、そのような「地下埋設物」が実在するなら、そのことを隠蔽して小学校を開校することが適正であるのか。

いずれにせよ、重大な問題を孕んでいる。

何よりも重大な事実は、安倍首相夫人が「名誉校長」というかたちで、この問題に関与していることである。

安倍首相夫人の記者会見なども必須であろう。

安倍首相帰国後の国会では、この問題の真相解明が急がれることになる。


日本政治は「ねじれ」ている。

どのような「ねじれ」であるのかと言えば、

主権者の意思



国会の議席構成

が「ねじれ」ているのである。

極めて深刻な「ねじれ」である。

2014年12月の総選挙における比例代表選挙で自民党が得た投票は、

全有権者の17.4%にしか過ぎなかった。

主権者の6人に1人しか自民党に投票していない。

それにもかかわらず、この選挙で自民党が獲得した議席は290議席に達した。

衆院議席総数の68.4%を占めたのである。

「安倍自民一強」

と言われるが、それは、国会議席数が「安倍自民一強」であるだけで、

主権者国民の支持が「安倍自民一強」ということではない。

主権者国民の支持は「安倍自民脆弱」に過ぎない。

これがもっとも重要な「ねじれ」である。


しかし、安倍政権は国会内における与党議席が多数であることを盾に、

主権者多数が反対する政策を「ゴリ押し」している。

特定秘密保護法制定

集団的自衛権行使容認

戦争法制制定

TPP批准

刑事訴訟法改悪

そして

原発稼働

などの施策を強行してきた。

国民の多数がこれらの施策に強く反対している。

主権者国民の多数が安倍政権が強行する施策に賛同しているのなら問題はない。

しかし、実情は違う。


そして、この安倍政権は衆参両院の3分の2以上の議席を活用して、

憲法改定にまで足を踏み入れようとしている。

その際、真っ先に手を付ける可能性があるのが、

緊急事態条項の新設

である。

内閣総理大臣が緊急事態の宣言を発することができる条項を憲法に新たに盛り込む。

そして、緊急事態条項を発した場合の効力として、

法律同等の政令を決定すること

財政措置を実施すること

基本的人権を制限すること

国政選挙を行わず、議員任期を延長し、

政権を永続させること、

などを憲法の規定に盛り込むことが、

目論まれている。


この「緊急事態条項」が制定されてしまうと、政権が勝手に「緊急事態」を宣言して、

独裁体制を敷いてしまうことが可能になる。

この状態を実現し、基本的人権を制限した上で、憲法の他の条項などが、

次々に改変されてしまうことも想定される。

日本が破壊されてしまうのである。

こうした危険が迫っている。

したがって、一刻も早く、日本政治の「ねじれ」を解消しなければならない。

つまり、主権者国民の意思に沿う政権を樹立しなければならないのだ。


現状は「少数者による日本支配」が生じている。

これを是正して、主権者国民の意思に沿う政権を樹立し、

この政権に日本政治を委ねることが必要なのだ。

「少数者による日本支配」

を維持するには、

「工作」

が必要である。

その「工作」として、安倍政権が活用しているのが以下の五つだ。

「教育」、「洗脳」、「弾圧」、「堕落」、「買収」

である。

メディアを支配し情報を統制するのが「洗脳」

警察・検察・裁判所制度を活用して「人物破壊」を実行するのが「弾圧」

3S=スポーツ・セックス・スクリーンで民衆の関心を政治からそらすのが「堕落」

テレビコメンテーター・学者・有識者をカネの力で支配するのが「買収」である。

そして、長い目で見て、一番効果があり、重要なのが

「教育」

による「工作」である。


安倍首相は2007年に政権を無責任に放り出したが、このときに実現した唯一の政策が

「教育基本法」の改悪

だった。

日本の教育の目的を

「国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた国民の育成」

と明記し、

この目的を実現するために、

「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養うこと」

という目標を達成するように教育がなされることを定めた。


そして、本年の通常国会には、国家が家庭教育に介入することを実質的な目的とする

「家庭教育支援法」

という名称の法律案が上程される見込みである。

安倍首相夫人が名誉校長を務める小学校は、

日本初で唯一の「神道」の小学校であるとされるが、

この小学校開設のため、国が土地を不正に低い価格が払い下げていたのなら、重大な問題である。

国会での厳正な問題追及が求められる。

Reply · Report Post