★天下り批判の人身御供にされた文科省ー(天木直人氏)

官僚だった私だから書ける。

 小泉首相を批判して首になり、天下りには無縁の官僚だから書くことが許される。

 いま大騒ぎになっている文科省の天下り問題はやり過ぎだ。 

 直前まで次官をつとめた組織のトップが、「万死に値する」という言葉を国会で語って組織全体を否定した。

 歴代の人事課長が雁首そろえて国会に招致され、口をそろえて組織犯罪を認めた。

 なぜここまで文科省は叩かれるのか。

 天下りがなくならないのは暗黙の事実だ。

 天下りはすべての省庁がやっていることも皆が知っている。

 民主党が政権時にもそれは根絶できなかった。

 それを知りながら野党は、安倍政権を追及するためにこの問題を取り上げる。

 そしていまの安倍政権は世論の支持率を犠牲にしてまで官僚組織を守る余裕はない。

 これが財務省や経済産業省といった一流官庁だったらここまで叩かれなかっただろう。

 いや、一流官庁は、ここまでやらなくても、天下りに困らない。

 三流官庁だからこそ、文科省は組織的に天下りをしなければならなかったのだ。

 しかも、世話係の職員はノンキャリアだ。

 ノンキャリアがキャリアの天下りを手助けする汚れ役を引き受けて、キャリアから見返りを受ける。

 これも官僚組織の悲しい現実だ。

 こう書いていくと、文科省があまりにも気の毒に見える。

 しかし、現実はそれほどでもないのだ。

 官僚組織を敵に回す事の出来ない野党が、本気で天下り防止策を安倍政権に求めることはない。

 官僚組織と一体の与党が文科省をこれ以上追いつめることはない。

 各省は文科省が人身御供である事を知っているから、内心感謝し、

ほとぼりが冷めたら、あの時は大変だったなと、慰労してくれる。

 つまり、すべては、嵐が終われば元どおりになって忘れ去れらるのである。

 いまの政治システムの下では、天下りは決してなくならない。

 文科省の天下り騒動は、この国の政治に不満だらけの国民の怒りが、

自分たちに向かってこないようにそらせる、与野党のガス抜きなのである。

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