★「翁長さん、弾はまだ一発残っとるがよ」ー(植草一秀氏)

沖縄県の翁長雄志知事が訪米している。

この訪米について、辺野古に基地を造らせないために活動を続けている

乗松聡子氏(「ジャパンフォーカス」エディター)は、

「撤回せずに行ったら、工事再開を許したことに礼を言われるだけだ」

とし、

「すぐさま承認を撤回すべきだ」と述べている。

1月28日に沖縄大学で開催されたシンポジウム

「沖縄はどうすべきかー安倍政権の対沖縄政策に対抗するために」

での発言だ。

このシンポジウムでも、

「翁長雄志知事に対し、辺野古埋め立て承認を撤回し立場を明確にして

30日からの訪米に臨むべきだとの声が上がった」

(1月29日付琉球新報)

と報じられている。

沖縄名護市辺野古の新基地建設を巡り、翁長知事による「埋立承認取消」に対して国が県を訴えた

「辺野古違法確認訴訟」

で、最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は昨年12月20日に、国側勝訴の判断を示した。

裁判所は法の番人ではなく、政治権力=行政権力の番人であるから、当然に予想された判決であった。

しかし、判決は翁長氏の埋立承認取消の取消を強制する法的拘束力を持たない。

翁長氏は、埋立承認取消を取り消す必要はなく、工事の停滞を獲得するべきであり、

埋立承認取消が認められなければ、直ちに埋立承認の撤回に進むべきである。


上記の乗松氏の発言もこのことを示している。

「埋立承認の撤回」

については、

2015年5月1日に、

沖縄県内の弁護士や行政法研究者らでつくる「撤回問題法的検討会」が

「埋立承認を法的に撤回することは可能」

との見解をまとめた意見書を提出している。

また、うるま市島ぐるみ会議(共同代表・仲宗根勇元判事)は2016年12月22日に、

翁長氏への「要請書」を提出し、

「行政行為の撤回は行政行為の取り消しと異なり、

根拠規定がなくとも行政行為の主体がいつでも撤回権を行使できます」

としたうえで、

「知事は前知事のした埋め立て承認の撤回を必ず実行してください」

と要求している。

(「アリの一言」ブログさま

https://goo.gl/SgH2fl より)


翁長雄志知事が、本気で

「辺野古に基地を造らせない」

と考えるなら、いま直ちに実行するべきことは、

「埋立承認の撤回」

であって、

成果がまったく見込めない訪米

ではない。

翁長雄志氏が本当に

「辺野古に基地を造らせない」

と考えるなら、知事選の公約に

「埋立承認撤回・取消」

を明記していたはずだ。

そして、知事就任直後に「埋立承認撤回・取消」

に動いたはずだ。

ところが、翁長氏の行動はあまりにも遅かった。

「埋立承認取消」に動いたのは、

辺野古基地本体工事着手に必要な事前協議書を沖縄県が受理してからだった。

本体工事に着手する条件が整うまで、「埋立承認取消」を先送りしたものだと理解できる。

「辺野古に基地を造らせない」

ことを求めるすべての沖縄主権者は、

「翁長タブー」から脱却するべきである。

「翁長タブー」とは、

翁長氏を批判することを禁忌とすることだ。

翁長氏の行動は、客観的に評価して、「辺野古に基地を造らせない」ために「全力投球」しているものでない。

沖縄の2紙

琉球新報、沖縄タイムス

が「翁長タブー」を打破できなければ、この沖縄2紙自体の立ち位置が強く疑われることになる。


2014年11月の知事選で、沖縄県民は

「辺野古に基地を造らせない」

という意思を明確に表示した。

したがって、このことが、

「知事による埋立承認撤回」

を正当化する、最大の根拠になる。

「埋立承認取消」の妥当性は、

「埋立承認」に法的瑕疵があったのかどうかが争点になるが、

「埋立承認撤回」

は、選挙によって「埋立承認」についての沖縄県の判断根拠が変化したことに基づく措置であり、

違法とは言えないものである。

法廷闘争に持ち込まれても、十分に沖縄県の主張が認められる可能性がある行為である。

したがって、

「辺野古に基地を造らせない」

公約を実現するには、直ちに「埋立承認撤回」に進む必要がある。


安倍政権は2月6日にも、本体工事に着手する構えを示している。

米国の新国防長官の来日に合わせて、辺野古基地建設工事の進捗を安倍政権は報告したいのだろう。

翁長知事の行動は、この安倍政権の希望に全面協力するものである。

翁長知事が動かぬ間、辺野古基地建設は着実に進行する。

工事が進行してしまうと、「基地建設阻止」の訴えが、裁判所によって

「訴えに利益なし」

と断じられる可能性が著しく高まる。

翁長氏は、実はこの状況の確立を狙っているのかも知れない。


見かけだけは

「辺野古に基地を造らせないために、あらゆる手法を用いる」

としながら、

結局、実行している行動は、

国による辺野古基地建設のアシスト

になっている。

翁長氏が本当に「辺野古に基地を造らせない」ために全力を注ぐというのであれば、

いま、直ちに「埋立承認撤回」を実行しない理由がない。


安慶田副知事が教員採用に関する口利き疑惑で辞任した。

この問題も、真相を解明するべきである。

そもそも、

「オール沖縄」

とは、

「腹八分、腹六分」

の結束によって成立したものである。

「同床異夢」なのである。

「辺野古に基地を造らせない」

ことを求める人々が、翁長氏の擁立に際して、

「埋立承認の撤回・取消の公約への明記」

という候補擁立基準を取り下げたのは、

「辺野古に基地を造らせない」

ことよりも

「沖縄県政を奪還する」

ことを優先したためとも考えられる。


このような判断があってもおかしくはないが、

もし、そのような事情で翁長氏擁立を決めたのであるなら、沖縄県民に対して、

「辺野古に基地を造らせないためにあらゆる手法を駆使する」

という公約はウソになってしまう。

「知事ポストを獲得することを優先して、辺野古に基地がう造られてしまうことは容認する可能性がある」

とはっきり言うべきであった。

しかし、こうなると、前任の

仲井眞弘多知事と同類になってしまう。


亡くなられた菅原文太氏が、2014年11月の翁長氏を支援する集会で発した言葉について、

私は2015年7月7日付メルマガ記事第1187号

「翁長知事の基地建設阻止行動が「ゆるい」理由」

に次のように記述した。

「故菅原文太さんがスピーチでこう述べた。

「(仲井真知事は)今、最も危険な政権と手を結んだ。沖縄の人々を裏切り、

公約を反故にして、辺野古を売り渡した」

そして、映画『仁義なき戦い』の最後に登場する、

『山守さん、弾はまだ残っとるがよ。一発残っとるがよ』というセリフを仲井真氏にぶつけた。

「仲井真さん、弾はまだ一発残っとるがよ」

しかし、この言葉は仲井真氏だけに振り向けられた言葉ではない。

翁長雄志氏が、

「最も危険な政権と手を結び、沖縄の人々を裏切り、公約を反故にして、辺野古を売り渡す」

なら、そのときゃ、

「翁長さん、弾はまだ一発残っとるがよ」

になるよと、翁長雄志氏に警告を発したものなのである。」

翁長氏は菅原文太さんが発したこの言葉をしっかりと胸に刻む必要がある。

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