★天下りを根絶する新しい政権を樹立-(植草一秀氏)

公務員の天下り問題が再燃しているが、旧態依然。

何も変わっていない。

2009年8月30日の総選挙。

当時の民主党は

天下り根絶

を掲げていた。

当時の民主党代表は鳩山由紀夫氏。

8月30日の総選挙で大勝して、政権交代の偉業を成し遂げた。

鳩山民主党は、日本政治の基本構造を刷新しようとした。

米国が支配する日本

官僚が支配する日本

大資本が支配する日本

を排し、

主権者国民が支配する日本政治の構造を構築しようとした。

「官僚が支配する日本」

を排するために民主党が掲げた方針が、

「天下りの根絶」

であった。


この政策方針を声高に叫んだ民主党議員がいた。

野田佳彦氏である。

野田氏がどのような訴えを示したのか。

いまでも、ネット上には野田氏の主張が映像で残されている。
  
「天下り根絶なき消費増税糾弾」街頭演説
http://www.youtube.com/watch?v=y-oG4PEPeGo
 
「天下り根絶なき消費増税糾弾」国会演説
http://d.hatena.ne.jp/rebel00/20120109/1326095651

前者は2009年8月15日、前者は2009年7月14日の発言だ。

前者の演説の一部を以下に示す。

マニフェスト、イギリスで始まりました。
ルールがあるんです。
 
書いてあることは命懸けで実行する。
書いてないことはやらないんです。
それがルールです。
 
その一丁目一番地
税金の無駄使いは許さないということです。
 
天下りを許さないわたりを許さない。
それを徹底してゆきたいと思います。
 
消費税1%分は二兆五千億円です。
十二兆六千億円ということは、
消費税5%ということです。
 
消費税5%分の皆さんの税金に、
天下り法人がぶら下がっている。
シロアリがたかっているんです。
 
それなのに、シロアリを退治しないで、
今度は消費税引き上げるんですか?
 
消費税の税収が二十兆円になるなら、
また、シロアリがたかるかもしれません。
 
 
鳩山さんが四年間消費税を引き上げないと言ったのは、
そこなんです。
 
シロアリを退治して、
天下り法人をなくして、
天下りをなくす。
 
そこから始めなければ、
消費税を引き上げる話は
おかしいんです。
 
徹底して税金の無駄使いをなくしていく。
それが民主党の考え方であります。 
 
 
ところが、この演説の主である野田佳彦氏が2012年8月、

シロアリを一匹も退治しないまま、消費税増税の法律を強行制定した。

これが、民主党が主権者の信頼を完全に失った主因である。

野田佳彦氏は2012年12月に「自爆解散」に踏み切った。

安倍晋三自民党に大政を奉還すること

消費税増税に最後まで反対して党を割った小沢一郎氏が率いる第三極政党「国民の生活が第一」を
せん滅すること

が「自爆解散」の目的だった。

大政は安倍晋三自民党に奉還され、

爾来、官僚天下りは完全擁護・拡大されて現在に至っている。

天下り問題を考察する際には、この経緯を見落とすことができない。


安倍政権で行革、天下り問題を担当しているのが

山本幸三議員

である。

山本氏は旧大蔵省出身者であり、官僚天下り根絶に完全に背を向けている人物であると言える。

財務省は財政危機を叫び、財政を立て直すために、

社会保障支出を切り、

消費税の過酷な負担を一般庶民に強制する

ことに血道を上げているが、

財務省の利権をまったく切ろうとしない。

日本の財政危機を訴える際に、いつも使われる数値は、

日本政府の債務残高が1000兆円を超えているという話だ。

確かに2014年末の一般政府の債務残高は1200兆円強の水準にある。

GDP比が200%を超えており、

「あのギリシャ」

よりも政府債務残高が大きいと喧伝されている。

お人好しの日本国民は、

「あのギリシャより深刻」

の言葉に踊らされて、庶民の生活を破壊している消費税増税を受け入れてしまった。


しかし、財務省はもう一つの重要なデータについてまったく触れない。

それは、日本政府の資産残高だ。

2014年末の日本政府の資産残高は1200兆円存在する。

つまり、債務とほぼ同額の資産を保有しているのである。

債務残高から資産残高を差し引いた

純債務

はほぼゼロである。

純債務ベースで見ると、日本政府の借金はゼロなのである。

借金100兆円と借金ゼロではまったく状況が異なる。


個人で借金が10億円あると聞かされれば、

「おー、それは大変だ」

という話になる。

しかし、

「でも、資産も10億円ある」

と聞かされれば、状況判断は完全に変わる。

こんなイカサマを財務省は演じているのだ。


本当に財政が危機に直面しているなら、

まずは、財務省が範を示すのが当然のことだろう。

財務省が天下り利権を自ら切る。

そして、政府支出のうち、

不要不急の「利権支出」を切る。

これらを徹底して実行して、

社会保障給付は、最後の最後まで削減しないようにする。

これが正しい財政運営ではないのか。


ところが、財務省の財政運営は真逆だ。

真っ先に切り刻んでいるのが

社会保障支出

である。

他方で、

オリンピックや

利権公共事業

そして、

天下り先への補助金は、

拡張させるばかりなのだ。

そして、国民には、

実質的に借金がゼロなのに、

政府債務1000兆円、あのギリシャよりも深刻な財政事情

という「ウソ八百」を流布して、

所得がゼロの国民からも8%の税率で税金を巻き上げている。


財務省に誠意を示す意思があるなら、

まずは、天下り氷山の一角を断ち切るべきだ。

私は20年来、たった一つのことを提唱し続けてきた。

それは、

日本銀行、日本証券取引所

日本政策投資銀行、国際協力銀行、日本政策金融公庫、

日本たばこ、横浜銀行、西日本シティ銀行

への天下りをまず断ち切ることである。


退職後10年間は、退職直前10年間に関与した業界、団体、企業への再就職を法律で禁止する。

日本国憲法第22条は

「職業選択の自由」

を定めているが、

「公共の福祉に反しない限り」

との留保条件が付されている。

官僚天下りを禁止することは「公共の福祉」の観点から是認される。

国民に過酷な増税を押し付ける前に、

「シロアリ天国」

「官僚天下り利権」

を根絶するべきなのである。

安倍政権にこの意思は皆無であると考えられる。

天下り利権を根絶するには、もう一度、本当の意味の政権交代を実現するしかないと考えられる。

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