★誰が東電法的整理を闇に葬ったのかー(植草一秀氏)

日本のメディアは反トランプキャンペーンを展開している。

トランプ新大統領はハゲタカ勢力にとって、よほど気に入らない存在なのだと思われる。

ハゲタカ巨大資本の支配下に入らない米国新大統領。

これがトランプ攻撃がやまない唯一の理由である。

テレビ朝日はハゲタカ勢力が支配する代表的なメディアのひとつであると考えられるが、

連日、コメンテーターを使ってトランプ叩きを実行している。

1月27日の放送では

日本政策投資銀行出身の

藻谷浩介氏に延々トランプ大統領攻撃をさせた。

米国の主権者が正当な選挙で選出した新大統領である。

米国には「ハネムーンの100日」という習慣がある。

この習慣は、民主主義のプロセスによって選出された新大統領の政策運営について、

少なくとも最初の100日間は、批判を控えて新大統領の政策運営を見守るというものだ。

この「ハネムーンの100日」について、トランプ氏を批判する主張があるが的外れだ。

「ハネムーンの100日」は、

メディアや議会が大統領の政策運営に敬意を払うというもので、その逆ではない。

いま繰り広げられていることは、

メディアが、まだ発足して10日も経っていないトランプ新政権をヒステリックに攻撃しまくっているという事実だ。

批判されるべきはメディアの姿勢である。


テレビ朝日はせっかく藻谷浩介氏をスタジオに招いているのだから、

東芝問題

について、コメントを求めるべきだった。

東芝問題を報じる際には、カメラも藻谷氏を一切映さずに、そのままCMに移行させ、議論を封じた。

東芝問題で最大の論点になるのは、

日本政策投資銀行

の問題なのだ。

日本政策投資銀行は、

実質的に政府・与党の

機関銀行

と化している。

政治的に極めて不透明な資金が日本政策投資銀行から流出している。

日本政策投資銀行こそ、日本政治経済の暗部、闇である。

JR東海がリニア新幹線の構想を提示したとき、何を公約していたのか。

「すべてを自前資金で調達する」

としていたのではないか。

ところが、現実はまったく違う。

リニア新幹線の財源の大半は、

日本政策投資銀行

が提供するのだ。


東芝の粉飾決算問題は、

当然のことながら、刑事事件として立件するべきものである。

ところが、これを封殺する動きが展開されてきた。

選挙が行われる岐阜県美濃加茂市の前市長は、この事件の最大の被害者である。

完全なる冤罪事案であるにもかかわらず、

藤井浩人市長は、2審の名古屋高裁判決で、驚異の逆転有罪判決を受けた。

この背景を明らかにしているのが、闇株新聞氏である。

http://diamond.jp/articles/-/109972

東芝の不正会計問題を刑事事件として「完全にクロ」とする佐渡賢一委員長率いる

証券取引等監視委員会に対して、東芝を不問にする政治圧力がかかり、東京地検が動かないのだという。

そして、東芝立件を企図する佐渡賢一委員長が更迭され、

この12月に後任の委員長として長谷川充弘・広島高検検事長が就任した。

そして、この長谷川充弘氏こそ、

藤井市長を無理筋で逮捕・起訴した名古屋地検の当時のトップだったのである。

東芝不正会計問題をもみ消すために長谷川氏が送り込まれるが、

その長谷川氏が現職市長の冤罪逮捕・起訴問題で失点を挙げたとなると具合が悪い。

このために、名古屋高裁が無理筋逆転有罪判決を示したという見方が存在するのである。

そして、東芝の破綻を避けるために政策投資銀行の資金が投入されると伝えられている。

トランプ大統領よりもはるかに問題の多い存在が日本政策投資銀行である。

このことをじっくりと掘り下げる必要がある。


2011年3月11日に東京電力は福島原子力発電所で人類史上最悪レベルの放射能事故を引き起こした。

財務省は原発事故が発生するや否や、三井住友銀行に東電に対する短期資金融資を実行させた。

その結果、融資残高で三井住友銀行が首位に躍り出た。

本当のメインバンクは日本政策投資銀行であった。

財務省は三井住友銀行に短期融資を実行させて、

日本政策投資銀行が東京電力のメインバンクである重要事実を隠蔽したのである。

そして、財務省が主導して、東京電力の法的整理を消滅させたのである。

本来は、東京電力は法的整理させなければならない。

法的整理することと法的整理をしないことの違いは、

株主責任

融資責任

を問うかどうかの違いである。

東電は実質的に破綻している。

したがって、株主は出資資金を、債権者は債権の一部を毀損する。

東電の原発事故処理に国民資金、

すなわち、税金や電力料金を充当するのは、当然のその後でなければならない。


国民が税金や電力料金で原発事故費用を負担させられ、

株主が出資資金を温存され、

融資金融機関が融資資金を保全されるのは、明らかにおかしい。

しかし、その不正極まりない対応がいまなお続いている。

原発事故が発生した時点で存在した原発事故処理費用に関する規定は、

「原子力損害賠償法」に明記されていた。
 
第二章 原子力損害賠償責任
 
(無過失責任、責任の集中等)
第三条  原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、
当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。
ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。
(一部略)
 
第四条  前条の場合においては、同条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき原子力事業者以外の者は、その損害を賠償する責めに任じない。

原子力事故が発生し、損害をもたらした場合、その損害を賠償する責めは、

事故を発生させた当事者である原子力事業者が負うことを定めている。
 
例外になるケースは、
 
「異常に巨大な天災地変」、
 
「社会的動乱」
 
による場合だけである。 


原発事故の発生原因になったと考えられる地震や津波は、過去に経験した規模のもので、

事前にそのリスクが関係機関等から警告されており、当事者の東京電力自身が明確に認識していた。

リスクを把握しながら、安全対策を取らなかったために重大事故が発生した。

明らかな「人災」である。

この点は、当時の東京電力副社長の皷紀男氏が記者の質問に対して明確に回答している。

したがって、原発事故の損害賠償責任は東京電力が負う。

しかし、東京電力の純資産は損害賠償債務をはるかに下回っており、

東京電力は実質的に大幅債務超過であり、法的整理する以外に選択肢はなかった。

しかし、東電を法的整理すると、株主は出資金を失い、

融資銀行は融資資金の一部または全額を損失処理しなければならなくなる。


このとき、最大の負担を負うのが日本政策投資銀行だった。

だから、財務省は東電の法的整理という、当然の道筋をせん滅したのである。

日本政策投資銀行は財務省の最重要天下り先であり、

「政治案件」

の資金源

「打ち出の小槌」

だからである。


この日本政策投資銀行が、グレーな資金提供に全面的に関わっている。

政治家の「口利き財布」にもなっているのである。

そして、いま、東芝を「政治的に」救済するために、

またしても、「打ち出の小槌」の日本政策投資銀行が利用されようとしている。

トランプ大統領の施策は、基本的にすべてが、政権公約に明示されたものである。

選挙の際に公約に明示し、

そのトランプ氏を米国の主権者が新大統領に選出した。

そして、トランプ新大統領が公約を「有言実行」するかたちで、実行に移している。

これは賞賛されても、避難されるべきことではないのではないか。


すべての政策に賛否両論があり、それぞれの立場によって評価は変わるだろう。

しかし、選択したのは米国の主権者であり、米国のことを決める主権を、米国の主権者は保持している。

米国の主権者の選択、判断を、日本の国民が頭ごなしに非難、否定するのは、礼を失する対応である。

安倍首相などは、選挙の際に、

「ウソつかない!TPP断固反対!ブレない!自民党」

などと大書きしたポスターを貼り巡らせて選挙を戦っておきながら、

選挙から3ヵ月もたたずに、TPP交渉への参加を決めた。

トランプ新大統領に罵詈雑言、批判の集中砲火を浴びせる前に、

安倍首相の行動に注意を促すのが先だろう。

こうした、いささかバランスを欠いた言論が、日本の情報空間にはびこっている。

こうした、歪んだ論評に毒され、洗脳されないように気を付けなければならない。

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