★日米関係、重大な危機。
「米国と波風侵さなければいい」がこれまでの基本。
トランプ政権はかさにかかって、要求を強化してくる。
米軍基地負担これまで年7600億円負担。
トヨタのメキシコ建設に国境税かけると脅し。-(孫崎享氏)

A:事実関係

(1)安全保障政策

「トランプ政権:マティス次期国防長官「同盟国に応分負担」」(毎日新聞)

米上院軍事委員会は12日、

トランプ次期米大統領が国防長官に指名したマティス元米中央軍司令官の承認に関する公聴会を開いた。

マティス氏は提出した準備書面の中で、「同盟国と緊密に連携しなければならない」と述べる一方で、

同盟国に応分の負担を求める考えを示した。

 マティス氏は米国が直面する脅威について

「我が国は中東などで過激派組織『イスラム国』(IS)や他のテロ組織と戦っている。

ロシアは各方面で重大な懸念を呼び起こしており、

中国は周辺国との信頼をずたずたにしている」と指摘した。

 さらに、準備書面で

「米国が米国とアジア太平洋地域の安全保障上の利益を守ることに疑いの余地はない」と強調。

「同盟国も我々と同様に義務を果たすことを期待する」と述べ、

日本などに米軍駐留経費の負担増を求める考えを示唆した。

(2)「トランプ氏会見、日米貿易摩擦の懸念、赤字削減要求へ」

トランプ次期米大統領は11日の記者会見で、貿易赤字削減を目指す方針を表明した。

貿易赤字相手国として中国、メキシコと並んで日本を名指し。

2国間通商交渉を通じて赤字削減を迫ると見られる。

米国自身が戦後、長い時間をかけて築いた自由貿易秩序を崩すだけでなく、

結果的に米国を含む関係国経済を混乱させる恐れが強い。

B:評価

・日本の過去の対米関係は、トップ同士の良好な人的関係を構築すれば何とかなるというものであった。

その延長線上にトランプが大統領選勝利した直後のトランプ詣でがある。

安倍首相は昨年11月17日NYに駆け付けトランプと会談。首相は会談後、

トランプ氏を「信頼できる指導者である、とこのように確信した」と記者団に明言していた。

この想定が全く該当しないことが判明した。

・安全保障での日本側貢献の要請もこれまでの枠組みを超えてのものである。

B:評価:

1:安全保障問題:まず:日米地位協定では基本的に、米軍経費は米軍が払うと決めてある。

日米地位協定第二十四条

日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費は、2に規定するところにより
日本国が負担すべきものを除くほか、この協定の存続期間中日本国に負担をかけないで
合衆国が負担することが合意される。

 日米の取り決めでは、日本は米軍基地への支払いはゼロを原則としている。

それにも関わらず日本は巨額のお金を米国に払い、国際水準をはるかに超えている。

トランプ次期大統領が日本の基地負担増を求めていることに関連し、

16日付読売新聞は、日本の基地負担が年間7600億円にのぼっていることを報じた。

11月16日付読売新聞報道

「日本は、在日米軍駐留経費に加え、米軍再編関係経費なども分担。

防衛省の内部試算によると、日本の負担総額は年間約7600億円規模に上り、同盟国でトップの額という。

 在日米軍にかかわる経費は、日米両政府が1960年に締結した日米地位協定24条で、

土地代をはじめ施設・区域の提供費用は日本が負担し、それ以外は米国負担と明記された。

具体的には、米軍が使う民有地の借料や漁業補償などが日本側の負担だ。

この基本部分について、防衛省は2016年度予算で1852億円を計上している。

米軍駐留の受け入れ国による関係経費負担額(試算)防衛省資料などによる

日本7612億円 韓国1012 ドイツ1876 伊440 英286 スペイン153、 サウジ64」

 米国の要求に応じていれば、妥当なラインで落ち着くということはない。

2:経済問題

 貿易問題の象徴的なものはトヨタをめぐるトランプの発言である。

 トランプは1月5日、「トヨタはメキシコ、バハで新工場を作り米国向けカローラを作るという。許されない。

米国で工場建設するか、高額国境税を払うかだ」とツイートした。

この発言には事実誤認がある。カローラ用工場の新設はメキシコのグアナファット州であるが、

この違いはさしたる意味を持たない。

米国トヨタ車は

①トヨタはこれまで219億ドルの直接投資を米国で行い、13万6千名の雇用を実現している、

②メキシコへの投資でトヨタの米国での生産や雇用を減少するものではないと反論している。
またある新聞は「トヨタ工場批判 現実を無視したトランプ発言」と題して、
①トランプ氏の言う「国境税」は国際協定違反ではないのか、②米国の立地競争力を高めたいのなら、
企業が安心できる透明な投資環境を実現する努力を着実に積み重ねるほかない、

③米国生産に変更しても、高い人件費のため販売価格は割高となり、米消費者の利益を大きく損なうと論じた。

まずトランプの発言は単なる思いつきではない。

トランプが大統領に選ばれたのは、多くの米国国民の生活環境が悪化したことに対する怒りを背景として、

その理由として米国企業が海外に流出し、職が減少していることにある。

したがってTPPに反対し、メキシコ・カナダとの北米自由貿易協定の見直しを主張している。

こうしてみれば、「米国で工場建設するか、高額国境税を払うかだ」は決して唐突な発言でもない。

 トランプは金融機関を中心とする既存勢力に挑戦することで当選した。

 しかし、トランプ政権は史上最強の富豪政権となった。

当然一般大衆の利益と異なる税制などの政策を実行する。

この中、日本などとの経済摩擦は格好の争点外しとなる。

 ここでもまた、米国の言い分を聞けば公正な処理がなされるというものではない。

 トランプ政権になって、日本は、米国と波風立てなければいいという対応でいればいいという時代でなくなった。

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