★御用組合「連合」会長「共産党と同じ政策なんてできるか」-(植草一秀氏)

安倍首相が12月22日、連合の神津里季生会長と首相官邸で約30分間会談した。

会談で安倍首相は政府が進める働き方改革への協力を求めた。

安倍首相が民進党と連合の分断を狙うものだと伝えているが、正しくない。

安倍首相は連合、民進党と他の野党勢力との分断を狙っているのだ。

日本の主権者の多くは、

「安倍政治を許さない!」

の判断を有している。

安倍自民党を支持する主権者は多くない。

2014年12月総選挙における比例代表選挙での自民党の絶対得票率(全有権者に占める得票比率)は

17.4%だった。

今年7月の参院選における比例代表選挙での自民党絶対得票率は19.6%だった。

2014年衆院選では主権者の6人に1人、本年の参院選では安倍自民に5人に1人しか投票していない。

主権者多数が安倍政権を支持している姿からは程遠い。

しかし、衆院選の小選挙区、参院選の1人区では、当選者が1人しか出ないため、

相対的に投票の多かった与党候補が多数議席を獲得して、安倍政権を生み出している。

安倍政権が政権を維持するために実行している三つの策略がある。

「謀略」と呼んでもいいだろう。


第一は、野党第一党の民進党を半与党の状態にすること。

「半与党」を「ゆ党」と呼ぶ。

第二は、創価学会と共産党を反目させておく。

第三は、人為的に「第三極」を創作し、これを「ゆ党」にする。

すでにこの第三極「ゆ党」はほとんど「与党」特別がつかない状況に移行している。

この三つの「謀略」を駆使して、安倍政権は政権を維持している。

戦に勝つには、敵を知らねばならない。

「敵を知り、己を知れば、百戦して殆からず」

である。

安倍政権にとって、あるいは、日本の既得権勢力にとって、何よりも重要なことは、

「野党第一党の民進党を「ゆ党」にしておくこと」

である。

これと密接に絡んでいるのが「連合」の存在だ。

既得権勢力にとっては、大きな教訓がある。

2009年に政権交代を実現されてしまったことだ。

政権交代を実現した主導者は、

小沢一郎氏と鳩山由紀夫氏である。

政権交代阻止を至上命題として行動したが、正面突破されて政権交代の偉業が成し遂げられてしまった。


しかし、ここで怯まないところに既得権勢力の怖さがある。

既得権勢力の核は米国である。

正確に言えば、「米国の支配者」である。

「米国の支配者」がそのまま「日本の支配者」である。

小沢氏と鳩山氏が主導して日本刷新の風が吹き抜けた。

この「小鳩の春」を破壊して、日本を暗黒時代に引き戻したのである。

小沢氏と鳩山氏が主導した当時の民主党は、本当の意味での日本政治刷新を目指した。

米官業が支配する日本を刷新しようとした。

民主党は本当の意味での革新政党であった。

これを打破するために、民主党に潜む「隠れ与党勢力」を総動員して、民主党を内部から破壊した。

クーデターによって政権を樹立した菅直人氏による政権、これを引き継いだ野田佳彦氏による政権は、

既得権勢力の「傀儡政権」であったと言ってよい。

そして現在の民進党が既得権益傀儡の存在である。

この民進党傀儡の工作活動を担っているのが「連合」という組織である。

連合と連合に引きずられる民進党執行部が野党勢力の「病巣」であり、

この「病巣」を取り除くことが日本政治刷新の原点になる。


連合は労働者を代表する組織であるとされるが、組合員数は682万人に過ぎない。

全就業者6452万人の10.6%に過ぎない。

雇用者5391万人のうち非正規雇用者が2034万人を占める。

非正規雇用者の比率は37.7%だ。

自営業主および家族従業者を含めると全就業者6452万のうち、正規雇用者は3356万人、52%に過ぎない。

就業者の約半分が非正規、自営業主および家族従業者である。

連合傘下の組合員に占める非正規労働者の比率は約15%。

約100万人しかいない。

非正規および自営業主、家族従業者の3096万人のわずか3%しか組織化されていない。

農協の組合員数は1027万人で、この勢力の方が連合よりもはるかに大きいのである。


連合を取り仕切っているのは、

電力、鉄鋼、電機、自動車

の業界である。

格差拡大が政治の最大の課題になっているが、1%の大資本と99%の労働者の対立を言われる。

連合の中枢は、その1%の大資本のおこぼれに預かる勢力が占有している。

99%の側を代表する組織にはなっていないのである。

10月16日に実施された新潟県知事選では、柏崎刈羽原発の再稼働反対を訴えた米山隆一氏が当選した。

米山氏は民進党の支部代表を務め、次期衆院選に出馬を予定していた。

米山氏は民進党に推薦を要請したが民進党はこの要請を拒絶した。

民進党最大の支持母体である連合新潟が、原発推進候補の推薦を決めていたためで、

民進党はこの県知事選で正体を表わしたのである。


連合を取り仕切っている勢力は

電力、鉄鋼、電機、自動車

であり、

原発推進、TPP推進である。

また、これらの組合は、大資本のおこぼれ頂戴組であって、格差是正ではなく、格差維持に注力している。

そして、この連合が

共産党を含む野党共闘を妨害している。

原発推進、TPP推進、格差容認

であるなら、野党共闘に参加すること自体が不自然である。

連合会長の神津里季生氏は安倍首相と喜んで会談しているのだから、

正式に自民党の支持母体になることを宣言するべきである。

連合傘下の組合は、この機会に、

自民党支持団体になるのか、それともそれを拒絶するのか、

よく検討して方針を定めるべきだ。


神津里季生氏は嬉々として安倍首相との会談に応じる一方で、

「選挙の現場で一生懸命やっている人からすると、

志位(和夫共産党委員長)さんと僕ら応援する候補者が握手するなんて耐えられない。

選挙事務所で共産党の人と一緒にやることも耐えられない。

僕はね、“共闘”という言葉に違和感をもっている。

“共闘”というのは文字通り政策も合わせていくことでしょう。

しかし、共産党と同じ政策なんてできるのか。」

と明言する。

http://news.yahoo.co.jp/feature/467


この立場は、

「安倍政治を許さない!」

と考える主権者多数の立場とまったく異なるものである。

「安倍政治を許さない!」

と考える主権者多数は、

原発稼働、憲法破壊、TPP、辺野古基地、格差拡大

に反対する。

そして、その立場は、共産党の主張と完全に重なる。

「共産党と同じ政策」を主権者多数が主張しているのである。


神津氏の発言を聞けば、連合が共産党を含む野党共闘に反対することは容易に理解できる。

連合は「野党共闘」ではなく「安倍自公」の支持母体になるべきである。

連合傘下の、「本当の意味での労働者」の立場で運動する組合は、

このような「御用組合連合」から離脱するべきである。

本来は「御用組合連合」が離脱するべきであるが、彼らが離脱しないなら、

本来の労働組合が離脱しても良いだろう。

そして、「御用組合連合」と一蓮托生の民進党勢力は、完全に野党共闘から離脱して、

自民党に合流するなり、「ゆ党」の維新に合流するなりすればよい。

「御用組合連合」とこれと癒着する「民進党」が存在することが日本政治の刷新を妨げている。

むろん、これは既得権勢力側の「策謀」である。

この「策謀」をはっきりと認識して、この「鵺(ぬえ)」勢力を排除しない限り、

日本政治の浄化は実現しないことを改めて確認しておきたい。

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