★控えめどころか、十分に伝わる、天皇陛下の誕生日記者会見-(天木直人氏)

きょう12月23日の誕生日に先駆けて、天皇陛下が記者会見され、

その発言内容がきょうの各紙で一斉に報じられた。

 そこには、退位の法整備に関する具体的言葉はなく、

8月に発表されたお言葉への次のような短い言及だけだ。

 「8月には、天皇としての自らの歩みを振り返り、

この先の在り方、務めについて、ここ数年考えてきたことを内閣とも相談しながら表明しました。

多くの人々が耳を傾け、各々の立場で親身に考えてくれていることに、深く感謝しています」

 これを、たとえばきょうの日経新聞はこう書いている。

 「退位に関する政府の有識者会議の議論が進むなか、

政治的な言動が認められていない憲法上の立場を踏まえ、抑制的に発言されたとみられる」と。

 それはその通りだ。

 しかし、それを8月のお言葉に比べて「控えめ」と単純に考えるのは間違いだ。

 ましてや、安倍政権の圧力に屈して8月のお言葉から後退したと考えるなら、

天皇陛下の今度の記者会見の言葉を見誤る。

 天皇陛下は、今度の短い言及の中で、極めて重要な事を二つ我々に伝えている。

 ひとつは、8月のお言葉は内閣と相談しながら表明したと明確に述べられたことだ。

 これは、あの言葉が決して思いつきで自分の考えを発したわけでも、

憲法を軽視したわけでもなく、安倍政権と十分協議した上での表明であったことを、

我々に伝えられたということだ。

 二つ目は、多くの人々が耳を傾け、各々の立場で親身に考えてくれていることに、深く感謝している、

と述べられたことだ。

 天皇陛下は、あの8月のお言葉を発したあと、

国民がどのような反応を見せたかを、あらゆる報道を通じて知ろうと努められたに違いない。

 「多くの人々」や、「各々の立場で」という言葉がそれを物語っている。

 手前勝手に推測すれば、新党憲法9条の設立宣言も承知されているのではないかと思うほどだ。

 この短い言及は、記者会見の全文が被災者、

弱者へのいたわりと平和の思で貫かれている事と併せ考えると、

8月のメッセージ以上に強烈なメッセージを国民に発せられたと考えるべきほどだ。

 いよいよ、安倍首相は重い宿題を負う事になる。

 そして来年早々にはその方針が明らかにされる。

 私は思う。

 たとえどのような結論を安倍首相が下そうとも、天皇陛下は一切の不満を漏らされることはないだろうと。

 それどころか、一切のコメントをされないだろうと。

 それを許すのは国民であるからだ。

 だからこそ、我々国民は、安倍首相の下す結論が天皇陛下の思いと違ったものにならないように、

安倍首相の結論から目が離せないのである。

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