★汚れた油を排し清冽な水脈連合で新政権を樹立-(植草一秀氏)

水と油の融合は可能なのだろうか。

清冽な水と汚れきったヘドロのような油。

渓流を流れてきた水と高山の地下深くに沁み渡り噴出する清冽な地下水は難もなく融合するだろう。

しかし、これと汚れた油の融合は難しい。

2009年に政権交代を実現させた原動力は

「清冽な地下水」

である。

この清らかさが人々の共感を誘い、見事な政権交代を実現させた。

しかし、新たに樹立された政権に巣食い、この新政権を内部から破壊したのは、

潜んでいた汚れた油の勢力だった。

汚れた油の勢力は、いまなお存在し続けている。

そして、この汚れた油の勢力が

清冽な渓流水と地下水の融合による

新しい政権の樹立を妨害している。

迂遠ではあっても、水と油を切り離し、

もう一度、清冽な地下水による政権樹立を目指すことが、

結局は近道になるのではないかと思う。

汚れた油勢力に、民衆の支持を広く集める求心力は働かないはずだからだ。


平野貞夫元参議院議員が自由党代表の小沢一郎衆院議員との最新の対談をも収録して

『野党協力の深層』(詩想社新書)

https://goo.gl/MunegU

を出版された。

帯には

「共産党の大転換、

自由党の再起動」

の文字が躍る。

これまで明かされなかった共産党との国会秘話とともに、

共産党大転換の過程を追い、野党協力、政権交代への道を探る書である。

2015年9月19日に、安倍政権は憲法破壊の戦争法を強行制定した。

子の暴挙を受けて、共産党は、戦争法廃止を軸に

国民連合政権樹立

を呼び掛けた。

これを契機に野党共闘への動きが活発化し、2016年7月参院選では、一定の成果も生まれている。

しかし、議会で過半数議席を占有しなければ政権交代を実現することはできない。

32ある1人区のなかの11選挙区で野党共闘が勝利を収めても、政権交代には至らない。

政治は自己満足では意味がない。


小沢一郎氏は野党4党の共闘を広く呼び掛けるが、

この運動を破壊しようとする勢力が懸命にアピールしていることが、

「国民や民進党の中にある「小沢一郎元民主党代表に対する心理的拒否反応」



「共産党に対する歴史的拒否反応」

であると平野氏は指摘する。

まさにその通りである。

しかし、このプロパガンダを懸命にまき散らしているのは、紛れもなく、

民進党内に巣食う「汚れた油」勢力

であると私は判断する。

政党区分で言えば、

民進、共産、自由、社民

が結合して、自公と真正面からぶつかれば、政権交代を再度実現できるように見えるが、

私はこの点を楽観視していない。

野党共闘の中核に

「汚れた油」勢力が巣食っている限りは、主権者国民の広範な支持、

積極的な投票行動を期待するのは困難ではないかと考えるのである。

清冽な渓流水と清冽な地下水勢力が合流して、

清冽な政治実現を国民に訴える。

これが政権交代をもう一度実現するための、

遠いように見えるが実は近い道

であると私は考える。


原発、

憲法、

TPP、

基地、

格差

という重大な問題が私たちの目の前に横たわっている。

安倍政権与党は総選挙で主権者全体の25%の得票しか得ていない。

しかし、議席の7割を占有して暴虐の限りを尽くしている。

主権者の過半数は

原発稼動に反対

戦争法に反対

TPPに反対

辺野古基地建設に反対

格差拡大に反対

である。

ところが、この主権者多数の声が現実政治に反映されていない。


安倍政権は国会議席の7割を占有していることをよいことに、

主権者多数が反対する政策を強引に推し進めている。

この歪んだ現実を変えるには、議会の議席構成を変える必要がある。

与党と野党が対立して、政策を軸に対峙するなら、野党勢力が結集して与党に立ち向かえばよい。

ところが、野党勢力の中に

「隠れ与党勢力」

が潜んでいると、話は単純ではない。

野党勢力が議会多数議席を獲得して、政権を樹立しても、主権者が求める政策が実行される保証がなくなる。

この野党勢力が与党の政策を実行すれば、主権者の支持は雲散霧消する。

菅直人政権と野田佳彦政権は、主権者に約束した

「天下り根絶なくして消費税増税なし」

の公約を踏みにじり、天下りを一切排除せずに消費税大増税に突き進んだ。

その結果、主権者の支持を完全に失い、2012年12月総選挙で惨敗。

安倍晋三氏に政権を献上した。


現在の野党体制で野党4党の選挙協力を実施すれば、仮に政権交代が実現しても同じことが起こる。

またしても主権者の信頼を裏切ることになれば、二度と政権交代は実現しなくなるだろう。

平野氏の著書

「野党協力の深層」

で小沢一郎氏は次のように述べる。

「僕は政策論的に、哲学的に。もう一歩共産党は変わらないとダメだと考えています。

中途半端には変わったけど、たとえば安保論などは凍結と言ってますが、

現時点ではそこまでよく言ったということでいいのだけれど、ずうっとそのままというわけにはいかない。

どうするんだということです。

だからもう一歩。大きな転換を共産党がしていけば、僕はほんとに国民の支持層も広がると思うよ。」


小沢一郎氏の発言は正論である。

しかし、こうして、

「共産党は。もう一歩変わらないとダメだ」

と発言することが、本当の意味の野党共闘を妨げることになるのではないかと危惧する。

むしろ、変わらないとダメなのは、

いまの民進党ではないか。

民進党が、えせ自民の政策を捨てて、本当の意味の主権者政党に脱皮する。

そうすれば、共産、自由、社民との合流は格段に容易になる。

こうして国民政党を構築して、安倍自公与党に正面から対峙する。

こうすることが、主権者の意思に沿う政権樹立への近道ではないのか。


主権者にとって大事なのは政策であって政党ではない。

どの政党が政権を樹立しようと、基本的には関係ない。

大事なのは、どのような政策が実行されるかなのだ。

現状の共産党で、連立を組むことは十分に可能である。

隠れ与党勢力=汚れた油勢力が居座る民進党を横に置いて、

政策で一致できる

共産、自由、社民、民進の一部

が合流して、ひとつのまとまりを作ることが主権者の要請に応える道であると思う。

政策を機軸に、同じ価値観を有する勢力がひとつの勢力として結集する。

こうなれば、主権者は積極的にこの勢力の政権獲得を支援することになるだろう。

本当の意味での

「野党協力」

を実現させて、日本政治を安倍政権から主権者が取り戻さなければならない。

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