★翁長雄志知事は二の矢三の矢を射る必要があるー(植草一秀氏)

沖縄県と国が対立している問題について、最高裁が国勝訴の判決を確定させることが明らかになった。

しかし、そんなことは報道される前から分かり切っている。

日本の場合、裁判所は、

「法の番人」

ではなく

「行政権力の番人」

であるから、最高裁が行政権力の側に立つ判断を示すことは当然に予想されたことである。

無論、これは正しいことではない。

しかし、これが日本の現実である。

裁判所のなかに、法の正義を追求する裁判官は存在するが、それは例外的な事象である。

例外的に存在する裁判官が、例外的に正しい判断を示すが、そのような判断を示す裁判官は左遷される。

裁判官は常に行政権力から監視されている。

監視塔からすべての囚人の様子を監視できる監獄がある。

パノプティコン

と呼ぶ。

元裁判官で現在は弁護士の森炎氏が

『司法権力の内幕』(ちくま新書)

https://goo.gl/2XO7Bp

のなかで明らかにしている。


国と沖縄県が法廷で争って沖縄県が勝つことは基本的にあり得ない。

そして、その当然の結果が明らかになっている。

しかし、元々このことは織り込み済みである。

翁長雄志氏は2014年の知事選に際して、

「あらゆる手段を駆使して辺野古に基地を造らせない」

ことを公約として示した。

「辺野古に基地を造らせない」

ためには、

あらゆる手段を駆使して、

辺野古米軍基地建設を遅らせる、

時間を稼ぐことが重要なのである。

工事を遅らせ、時間を稼ぎ、

その間に政権交代を待つ。

「辺野古に基地を造らせない」

ためには、これしか方法はない。

しかし、容易なことではない。


できることをすべてやる。

しかも、最速の取り組みをつなげる。

可能性のあるものを例外なくすべて取り組む。

これをやり抜いて、初めて主権者との約束=契約を守ることができる。

ここで鍵を握る行動が

「埋立承認の取消」、「埋立承認の撤回」

であった。

辺野古米軍基地の本体工事に着手するには、

沖縄県との事前協議が必要不可欠であった。

国としては、辺野古米軍基地建設の本体工事に着手するために、

事前協議書を沖縄県に受理してもらう必要があった。

翁長知事が埋立承認の取消に動いたのは、沖縄県が事前協議書を受理した直後である。

つまり、翁長氏が埋立承認の取消や撤回に対する拒絶姿勢を長く維持したのは、

本体工事着手のための事前協議書を受理するまでの時間を稼ぐためであったと推察されるのだ。

そして、国との裁判に入ると、

「最高裁の決定に従う」

などの言質を与えてきた。

こんな言質を沖縄県が国に与える必要などない。

最高裁が国寄りの判断を示すことは自明のことであり、

本当に「辺野古に基地を造らせない」ことを目指すなら、

こんな言質を与えてよいわけがない。

ひとつの裁判で裁判所が国寄りの判断を示したら、また別の裁判を起こす。

これを繰り返して時間を稼ぐ。

そして、時間を稼いでいる間に、政権の交代を待つのである。

この行動が正当化されるのは、この行動が沖縄県民の意思を反映する行動であるからだ。

翁長知事の行動は、

「辺野古に基地を造らせない」

という公約を、何としても実現するという気魄に欠けたものになっている。

いまからでも遅くはない。

まずは、埋立承認の撤回に進むべきである。


沖縄知事選で多くの沖縄県民が翁長雄志氏を知事に押し上げるために尽力した。

真摯に

「辺野古に基地を造らせない」

ことを求めて尽力した人々である。

私は「辺野古に基地を造らせない」ために、知事選に際して

方法論を明確にすることを強く訴えた。

それは、

埋立承認の取消、撤回に直ちに踏み切ることを公約に明記すること

であった。

私は沖縄を訪問して、公約の明確化と、その下での候補者一本化の重要性を訴えた。

しかし、翁長雄志氏は

埋立承認の取消・撤回

を公約に明記することを最後まで拒絶した。

このことがもたらす弊害を私は訴え続けた。

選挙は

「オール沖縄」

の力の結集により翁長氏が勝利を獲得した。

翁長氏は

「あらゆる手段を駆使して辺野古に基地を造らせない」

と公約した。

沖縄の主権者は翁長氏に強い期待を抱き続けている。


しかし、

「辺野古に基地を造らせない」

という公約は、次第に実現可能性を低下させている。

翁長氏は、オスプレイが配備される高江ヘリパッド建設に反対することを明言したが、

高江ヘリパッド建設が強行されている。

この高江には、すでにオスプレイが飛来している。

問題は、このような現実がありながら、翁長氏が国および自民党の幹部に対して、

正面から異議を唱えていないことである。

自民党の二階俊博幹事長、安倍政権の菅義偉官房長官と直接会談する機会が何度もあった。

しかし、これらの歓談において、翁長氏は、

オスプレイが配備される高江ヘリパッドを拒絶する意思を表明していない。

「辺野古に基地を造らせない」

ことを執拗に訴えることをしていない。


国と裁判を戦っても、裁判所は国の側に立つ。

なぜなら、裁判所は

「法の番人」

ではなく、

「行政権力の番人」

であるからだ。

しかし、裁判に訴える手法は有効である。

確実に時間を稼げるからである。

重要なことは、本格的な基地建設工事を着工させないことである。

この意味で、何よりも重要なことは、

辺野古基地の本体工事着工を阻止することだった。


この本体工事に着工するために必要不可欠な条件が

国と沖縄県との間の事前協議

であった。

翁長氏が埋立承認の取消に動くのが極めて遅かった理由は、

国による事前協議書を受理することにあったと思われる。

現在、本体工事は一時中断しているが、工事が再開されれば、

辺野古基地建設が既成事実化されてしまう可能性が高い。

基地建設が進行してしまうと、基地建設中止の決定が

「利益のない」

こととして、跳ねられてしまう可能性が高まるのである。


翁長氏の支援者の一部に、

「基地建設反対は姿勢を示すだけでいい。

最終的に基地が造られてしまっても、それは翁長氏の責任ではない」

という声がある。

この支援者にとっては、基地が建設されることに問題はなく、

国から利権支出の資金が流れてくることが重要なのである。

翁長氏の支持陣営のなかには、このようなスタンスを示す勢力が存在すると見られる。

うがった見方かも知れないが、当初から、このようなシナリオが当初から存在していた可能性がある。

仮にこれが真実だとすると、多数の沖縄県民が騙されていたことになる。


このような仮説が真実にならぬよう、

「辺野古に基地を造らせない」

ことを求める沖縄県民は、翁長雄志知事に、率直な疑問をぶつける必要がある。

そして、翁長氏が明言してきた

「あらゆる手段を駆使して辺野古に基地を造らせない」

行動の実行を強く求めるべきである。

裁判で沖縄県が負けることなど、織り込み済みの変化で会って、本当に

「辺野古に基地を造らせない」

公約を実現するためには、

二の矢、三の矢を射続けなければならない。

オール沖縄のメンバーは、翁長雄志知事に、

直ちに埋立承認の撤回に進むことを強く求めるべきである。

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