★国立公文書館は政府の「紙くず箱」だと言った元館長の勇気-(天木直人氏)

きのう12月11日の毎日新聞が、

政府の公文書管理のずさんさを追及する秀逸なスクープ記事を書いていたので紹介したい。

 私は知らなかったのだが、公文書管理法というのがあるらしい。

 年金記録問題など国のずさんな文書管理が問題化したことを受けて、

衆参の全会一致で成立し、2011年4月に施行されたという。

 その法律は5年後に見直すという規定があり、今年がちょうどその年に当たることから、

見直しを期待して報じられたスクープ記事だ。

 現行法では、公文書の管理が適切かどうか、

各省庁が年に一回点検・監査し、結果を首相(内閣府)に報告するよう求めているという。

 その報告書の2011年―14年度分を毎日新聞が情報公開法に基づいて入手し、

分析した結果、その報告書のあまりのずさんさにあきれはて、それを記事にしたのだ。

 無理もない。

 各省庁の官僚が、同じ政府内(内閣府)の官僚に対して報告するのだから、

お手盛りであり、いい加減なものであることは明らかだ。

 しかし、その毎日新聞の記事は、文書管理のずさんさを許す公文書管理法の欠陥より、

もっと深刻な文書管理法の本質的欠陥を指摘している。

 すなわち、文書管理法は、官僚たちが都合の悪い文書を隠す事を防げないという。

 公文書を作成しなかったり、ひそかに処分したり、中には「個人メモ」という形で、

職務に使っても公文書にあたらないからという理由で隠す「抜け道」まで許しているという。

 官僚たちが考えそうなことだ。

 そのような記事の数々の中で、

私が特に注目したのが前国立公文書館の館長であったという高山正也という人の次の言葉だ。

 「・・・公文書の保管期間が終わった後、国立公文書館に移管するかどうか(は)事実上、

省庁側の裁量で決められている。法的には公文書館も意見を言える事になっているが、

独立行政法人という立場で(あり)・・・ほとんど機能しない。

結果、重要な文書は捨てられ、そうでない文書ばかりが(国立公文書館に)移管されてくるように見える。

自虐的な言い方をすれば、国立公文書館はまるで政府の『紙くず箱』のようだ・・・・」

 これは、ついこの間まで国立公文書館の館長を務めていた人の言葉である。

 そして、それは正しい。

 課長を経験した元官僚の私がそういうのだから間違いない。

 米国の公文書館から次々と解禁後の重要文書が見つかり、

それがその後の政策決定に大きな影響を与える事を考えれば、米国と日本の違いは天と地の差がある。

 それにしても、日本の国立公文書館は政府の「紙くず箱」と公言した前国立公文書館の館長の勇気には

感心させられた。

 その勇気に敬意を表してこのメルマガをどうしても書きたかったのである。

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