★オバマ政権の怒りに触れ真珠湾訪問のカードを切った安倍総理-(田中良紹氏)

5日の東京新聞朝刊に「トランプ・安倍氏会談に異議」と題する記事が掲載された。

大統領選挙でトランプ氏の勝利が確実になるや、安倍総理がトランプ氏に会談を申し入れ、

先月17日にニューヨークで会うことになったことで、

米国政府は日本政府に対し「前例のないことはしないでほしい」と「異議」を伝えていたという内容である。

「異議」というより「不快感の表明」とする方が適切だとフーテンは思うが、

安倍総理の「ネギ背負った鴨がひたすら強者にすり寄る外交姿勢」は、

強者にとって都合の良いところは喜ばれるが、

しかしそれはまさに都合の良い部分だけで、

腹の中では「信頼に足る指導者ではない」と判断されていることを証明している。

それを「世界で一番先にトランプ次期大統領と会談できた」とはやし立てるメディアや識者が

この国に存在することがフーテンにとっては不思議である。

「一番先に会ってもらえた」と喜ぶのは強者の足元にひざまずくことしか知らぬ奴隷のセリフで、

それほどこの国のメディアや識者には奴隷根性がこびりついているということだ。

フーテンの見方は、ブログにも書き続けてきたように、

安倍総理がオバマ大統領の懸念する日ロ接近をTPP協定の早期批准によって

帳消しにしてもらうシナリオを描き、ヒラリー・クリントンが当選するとの前提で、

オバマ大統領によるTPP協定批准を側面支援する姿勢を見せていた。

そのシナリオがTPP撤退を選挙公約に掲げたトランプ氏の勝利によって無残にも崩れ去り、

慌ててトランプ氏に会談申し入れを行った。

おそらく藁をも掴みたい心境で「会いたい」と思ったのだろう。

まだ大統領になってもおらず、

しかもフーテンの見方では大統領になるつもりがなかった人物と会ってもほとんど意味はない。

にもかかわらず不安が先に立った。

これは5年前の東日本大震災で周囲の制止も聞かずに発生翌日に現場を訪れて顰蹙を買った

民主党の菅直人元総理を思い起こさせる。

リーダーたるものはしっかり全容を把握してから動くもので、

すぐじたばた動く小人物にリーダーの資質はない。

その意味で安倍総理と菅元総理はコインの裏表のようにフーテンには映っている。

とここまで書いてきたところで安倍総理が年末に真珠湾を訪問するとのニュースが飛び込んできた。

オバマ大統領と共に慰霊をするというのである。

なるほどこれで東京新聞の記事は事実であるか事実に近いことが証明された。

米国政府の「不快感の表明」を受け安倍総理はまたじたばた動こうとしている。

実は今日の参議院TPP特別委員会で民進党の桜井充議員が東京新聞の記事は事実かどうかを質問した。

これに対して安倍総理は「事実ではない」と断言し、「おいおいわかりますよ」と答弁した。

「おいおいわかる」とは何を意味するのか。そこにフーテンは注目した。

それより前、ニューヨークでトランプ氏と会談して「信頼に足る指導者」と持ち上げ、

ペルーのリマではオバマ大統領と会談するはずが立ち話に終わり、

その直後にトランプ氏が米国はTPPから脱退すると発表し、

ようやくメディアも安倍外交に疑問を持ち始めた頃、

やはりTPP特別委員会で民進党の蓮舫代表が「なぜトランプ氏は信頼に足るのか」と質問した。

安倍総理は「オバマ現政権を尊重する姿勢がある」と答弁した。

ここでフーテンなら

「それならオバマ政権を無視するかのようにトランプ氏との会談を急いだのはなぜか」と追及すべきと思ったが、

蓮舫氏は選挙中のトランプ氏の「暴言」に話を転じ、

米国民の選択を非難するような質問を行ってフーテンをあきれさせた。

しかしその答弁にフーテンはオバマ政権に対する「釈明」を感じた。

トランプ氏にかこつけながら安倍総理は国会という公式の場で、

自身も現政権を尊重するから認めてほしいと言っているように感じた。

だから東京新聞の記事は「やはりそうだったか」と思ったに過ぎない。

オバマ政権に対する外交的非礼をキャロライン・ケネディ駐日米国大使が怒らないはずはない。

東京新聞ではスーザン・ライス大統領補佐官が反対論の急先鋒だと書かれていたが、

オバマ大統領に直接電話ができるケネディ大使も厳しく問題にしたはずだ。

そこで考えられたのが真珠湾での献花外交である。

オバマ大統領が広島訪問を行った際に安倍総理が真珠湾を訪問する相互献花外交が話題に上ったことがある。

しかし話は立ち消えとなり、その後、総理夫人の昭恵さんが真珠湾を訪問して献花した記事を目にしたので

それで終わりだと思っていた。

しかも広島と真珠湾について日本と米国の考え方には違いがある。

日本人は日米戦争のはじめと終わりを象徴するとして二国間の関係強化に役立つと考えるが、

オバマ大統領が広島に来たのは日米関係を考えたからではなく世界の核廃絶を訴えるためである。

安倍総理はオバマ大統領の広島訪問を日米同盟が強化された証として直後の参議院選挙に利用する思惑が

ぎらついていたが、米国側は北朝鮮の核開発に刺激されて安倍政権が核を持つことを考えないように、

オバマ大統領と並んで安倍総理に核兵器反対を言わせるのが狙いだったと

ジョンズ・ホプキンス大学のケント・カルダー教授は書いている。

そしてあの時もスーザン・ライス大統領補佐官が日本側が原爆投下に対する謝罪を求めなかったことを

「興味深いこと」と皮肉った。

通常の国家ならば、それが実現するかどうかは別にして広島原爆投下に対する謝罪を求めるのに、

日本政府はまったくそれをしないと不思議がったのである。

トランプ氏は11月8日に選出された選挙人の投票によって12月19日に大統領に選ばれることになっている。

それを知ってか知らずか安倍総理は急いで会談を行おうとして米国政府の怒りを買った。

そこでまた慌てて真珠湾訪問のカードを切った。

オバマ大統領は安倍総理に対し「あなたが強いられるものであってはならない」と述べたという。

その言葉は広島訪問と真珠湾訪問はリンクしていない意味だと解説されている。

米国が要求しているわけではないという意味なのだろうか。

オバマ大統領は日米関係を考えたというより世界の将来を考えて自らの意思で広島に来た。

一方の安倍総理は広島の時も参議院選挙に利用したいにおいがプンプンしていたが、

今度も厳しい情勢の日ロ交渉では選挙のカードにならず、

この真珠湾訪問を大々的に報道させて、噂される年明け選挙に利用しようとするにおいがプンプンである。

強者にすり寄ることで支持率を上げ、選挙に勝てば何でもできると考える指導者と、

それを支えて奴隷根性を恥じないメディアと国民が織りなす政治は、

誰からも尊敬されない国家へと日本を押しやっていくのではないか。

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