★北方領土外交の失敗をだめ押しした産経新聞のスクープ記事-(天木直人氏)

安倍首相の北方領土外交は、プーチン大統領が日本の主権を全面否定したことによって、

もはや1ミリも動かないことが明らかになったが、たとえ2島返還で安倍首相が譲歩し、

そしてプーチン大統領がそれを認めたとしても、そのような合意そのものが、日本にとって不当なのだ。

 そのことを証明する一大スクープ記事を、きょう12月5日の産経新聞が一面トップで書いた。

 すなわち、ロシア側が一貫して北方領土の領有権を主張する根拠として引用するヤルタ密約について、

英国政府が疑念を有していたことが、英国国立公文書館所蔵の英国外交電報で明らかになったというのだ。

 つまり、英国外交電報では、ヤルタ密約(ヤルタ協定のうち極東密約)の有効性については、

ルーズベルト米大統領(当時)が権限を越えて署名したことや、

米国上院の批准もない状況下での有効性について米国内で論議が起こるかもしれないとし、

英国はその議論に巻き込まれないよう注意すべきだと警告しているというのだ。

 実際のところ米国では、1953年に就任した共和党のアイゼンハワ-大統領が年頭教書演説で

「あらゆる秘密協定を破棄する」と宣言し、

1956年には

「ヤルタ協定はルーズベルト個人の文書であり、米政府の公式文書ではなく無効」との国務省声明を

発表している。

 そして、米国政府の立場がそうである以上、日本政府もまたヤルタ密約については、

「領土問題の最終処理を決定したものではなく、当事者として参加していない日本は拘束されない」
(平成18年2月国会答弁)との立場である。

 そこにきて、きょうの産経新聞のスクープ報道である。

 英国外交電報が明かした、英国政府による疑義表明である。

 米英のアングロサクソン同盟がそう認め、これまでの日本政府が従って来た政策を、

安倍首相が否定してプーチン大統領に譲歩することなど、そもそもあり得ないことなのだ。

 そんなことを安倍首相がやろうとしていたのだ。

 幸いにもプーチン大統領の強硬発言で領土問題解決はなくなった。

 安倍首相は歴史的誤りを冒さないですむことになる。

 安倍首相はプーチン大統領に感謝しなければいけないのである。

 これ以上の外交大失敗があるというのか。

 それにしてもこのタイミングでこのような大スクープを書いた産経新聞は、

少なくとも北方領土問題については、安倍首相に追従しているわけではないという事である。

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