★プーチン訪日の成果は望めないと断言した佐藤優-(天木直人氏)

私は11月16日のメルマガ第842号で書いた。

 ただでさえ領土交渉に進展がないことが明らかになったのに、

最大の成果として喧伝されている経済協力についても、

ロシア側の担当責任者である経済発展相が収賄疑惑で突然失脚したことにより、大誤算になったと。

 その時私が書いたのは、日本の経済協力が収賄に使われては大問題になる、大丈夫か、という事だった。

 しかし、この事件の真の深刻さは、そこにはない。

 そんなことよりも、プーチン大統領の訪日がロシアの政争の具に使われている事があきらかになった。

とてもプーチン大統領は北方領土問題の決断は出来ない、というのだ。

 それを、きょう11月20日の産経新聞「世界の裏舞台」で、佐藤優氏が教えてくれている。

 すなわち、ロシア連邦捜査委員会が収賄容疑で拘束したウリュカエフ経済発展相は、

国営石油会社ロスネフチに有利な案件評価をした見返りに200万ドルを受け取ったとされるが、

そのロスチネフの社長であるセーチン氏もまたプーチン大統領の側近であるという。

 セーチン氏もウリュカエフ氏も、日本との経済協力関係の発展に積極的であり、

この二人の対日関係改善派の動きを封じ込めようとする勢力が、

連邦保安局を使って今回の事件を起こしたのだ、

日本への二島返還で漁業権を失うことになる漁業ロビーや、

ロシアの領土の減少に強い忌避反応を示す軍参謀本部諜報局とつながる勢力が暗躍しているというのだ。

 私がもっとも注目したのは、次のくだりだ。

 すなわちプーチン大統領は専制君主のような絶対的権力を持つ独裁者であるという見方が根強いが、

それは間違いだ、さまざまな権力グループの均衡の上に立つ存在であるという。

 これは佐藤優氏の意見ではない。

 ロシア事情に通暁した米国人ジャーナリストのチャールズ・クローバー氏の指摘(「ユーラシアニズム」NHK出版)

を引用し、日本を政争の具とする「政治劇場が始まっている」というのである。

 そして佐藤優氏は書いている。

 一般論として、この種の権力闘争に巻き込まれるのは好ましくないと。

 しかも、日本側としては、打つ手が限られていると。

 それでもプーチン大統領の訪日を意味あるものにするためには、

首相官邸を司令塔として、外務省がクレムリンの権力抗争の実態を正確に分析する作業を迅速に行い、

極秘裏にプーチン大統領府側と意思疎通を密にすることが求められると。

 そんな事が今の外務省の能力で出来るはずがない。

 それを佐藤優氏が知らないはずはない。

 プーチン大統領の訪日は残念ながら成果がない。

 そう、佐藤勝氏が断言したという事である。

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