★TPP承認より深刻な日米同盟の変質-(天木直人氏)

TPPの承認問題が連日のように国会の大問題となっている。

 たしかに現行のTPP協定案がそのまま実施されれば日本は大きな不利益を受ける。

 しかし、もはやオバマ政権が残りの任期でTPP協定案を米議会で承認させる可能性は限りなく小さい。

 トランプが次期米国大統領になったらTPP合意など吹っ飛び、クリントンになったら再交渉必至だ。

 与野党の対立は政局がらみなのだ。

 日本の国益を考えた本当の対立はやはり安保法であるべきだ。

 その安保法の下で求められた「重要影響事態」という、わけのわからない新たな概念の下で、

きのう11月7日、日米共同訓練が行われた。

 それを報じる各紙の記事を見て驚いた。

 遭難した米兵に見立てた人形を運ぶ訓練をしている。

 そう思っていたら、きょう11月8日の朝日新聞を見てもっと驚いた。

 在韓米軍は10月末から11月3日にかけ、朝鮮有事の際に避難する米国市民の輸送訓練を行ったという。

 私が注目したのはその米国市民を韓国から在日米軍基地まで運んだというところだ。

 何のための安保法だ。

 日本の防衛よりも米軍兵士や米国市民の救済を優先している。

 そこで思い出すのが、自衛隊が出来た経緯だ。

 自衛隊の前身である警察予備隊は、

1950年の朝鮮戦争の勃発で在日米兵が韓国に向かった後の留守家族を守るために

米国が命じて作らせたと言われている。

 その後発見された密約で、米国は、その指揮権を米軍が握るかぎりにおいて

日本が自衛隊を持つことを認めると合意されていることが明らかになった。

 いまも昔も日米安保条約は日本を守るより米国を守るためにある。

 それが密約で合意されていたが、今度は安保法で堂々と認められたということだ。

 それを見せつけたのが日米共同訓練だ。

 こんなことが許されて言いはずがない。

 いま野党が国会で論議すべきは日米共同訓練の憲法9条違反である。

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