★解放されたジャーナリスト常岡氏の動向から目が離せないー(天木直人氏)

想定通り、クルド自治政府に拘束されていたジャーナリスト常岡氏がはやばやと釈放された。

 無事釈放されたことは喜ばしい。

 しかし、この問題は、今後は日本の政治問題として残り続ける事になる。

 そして、この問題は、メディアに書かれないまま、つまり国民の目から届かないところで、

処理されていく事になる。

 クルド自治政府が、なぜISのメンバーと疑われた常岡氏を、かくもはやく解放したのか。

 理由は二つある。

 ひとつはISとの関係を示す決定的な証拠が見つからなかったことだ。

 ふたつは日本政府が釈放要求をしたからだ。

 もしクルド自治政府が常岡氏とISとの結びつきを示す決定的な証拠を握っていたなら、

いくら友好国の日本の要請であっても応じなかっただろう。

 クルドにとってISは目の前で戦っている最大の敵だからだ。

 逆に言えば、常岡氏の疑惑は残っている、疑惑を晴らすにはもう少し調べる日数が要る、

しかし、友好国の日本がそこまで早期釈放を求めるなら、応じよう、ということだ。

 そして、その後は日本政府の責任で調べてもらいたい、ISメンバーを放置することは、

クルドやイラクにとってはもちろん、日本にとっても、いや、世界にとっても脅威を及ぼす、

こう言って日本政府に後はまかせたという事なのだ。

 実際のところ、日本政府は常岡氏が拘束された相手がクルド自治政府であることを知った時から、

安心して早期解放に動いたに違いない。

 クルド自治政府は、むやみに邦人を殺したり、身代金を要求することはない。

 そして親日的だから安心して交渉できる。

 邦人を無事解放できれば日本政府の手柄にもなる。

 しかし、日本政府は決して人道上の理由から常岡氏の解放に熱心だったわけではない。

 日本政府が邦人の人命を尊重するなら、これまでの邦人の犠牲はなかった。

 ISに拘束されていれば見殺しだったに違いない。

 なぜ常岡氏の釈放を急いだのか。

 それは日本人の中からISメンバーが出たなら大変なことになるからだ。

 世界の信用を失うばかりか、ISのテロが国内で起きる危険性が現実のものとなる。

 万が一日本国内でISのテロが起きれば内閣総辞職必至だ。

 クルド自治政府に約束した通り、日本政府は常岡氏とその周辺の人物を徹底調査するだろう。

 そしてそれは、当然ながら国民の目には決して触れない形でおこなわれる。

 メディアもそれに協力し、決して書かない。

 常岡氏の釈放を報じる今日の各紙は一斉に書いている。

 外務省はクルド自治政府との具体的なやり取りなど詳細は明らかにしていないと。

 その秘密主義は常岡氏の帰国後も続くのである。

 常岡氏も常岡氏だ。

 きょう11月8日の東京新聞が書いている。

 解放された常岡氏が自身のツイッターでこう書いたと。

 「ご心配をおかけしました。皆さまありがとう」と。

 「(ISの通訳をしていたとする一部報道は)デマ報道。ひどいよ」と。

 ここで言うみなさまとは誰のことか。

 それは決して一般国民ではない。

 一般国民は常岡氏のことなど知らないし、関心もない。

ましてや常岡氏の解放に向けて日本政府に働きかけはしない。

 そしてそのような国民が働きかけても日本政府は動かない。

 ここでいうみなさまは常岡氏の支援者だ。

 その支援者こそ日本政府が取り調べの対象にしようとしている日本国民である。

 そしてISの通訳をしていたかどうかこそ、これから日本政府が秘密裏に調べる事である。

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