★どっちが勝っても混迷する米国の政治と対米従属しかない日本ー(天木直人氏)

いよいよ米国大統領選挙が行われる。

 この接戦は16年前を思い出させてくれる。

 私のデトロイト総領事の最後の仕事が、2000年のブッシュとゴアの一騎打ちの情勢分析と報告だった。

 私の管轄州はミシガン州とオハイオ州だった。

 いずれも接戦だった。

 ミシガン州は民主党優勢の州であったが、

オハイオは大統領選の帰趨を占う「スウィングステート」として注目された。

 最後は共和党のブッシュ候補支持にまわった。

 その時私はすでに3年余の任期を終えて帰国命令が出ていたが、

大統領選の投票結果を見極めてデトロイト離れるように、11月9日発の便で帰ろうとしていた。

 ところが私が離れる日も結果が確定しないほど接戦だった。

 結果は日本に到着して知ることになる。

 そう思って日本に帰ったら、まだ結果は出ていなかった。

 それどころか決まるまでさらに一月ほどかかった。

 フロリダの投票集計に疑義が呈せられ、最後は裁判所が大統領を決めるという前代未聞の選挙に終わった。

 今度のクリントンとトランプの争いは、それ以上に混戦になった。

 そして、あの時は、明らかに勝っていたと言われたゴアが、潔く敗北を受け入れたからあっさり終わった。

 しかし今度はそうならないだろう。

 トランプは黙って引き下がらないと公言している。

 トランプ支持者はクリントンを認めない。

 そして、クリントンが勝てば勝ったで、さらなる混迷が続く。

 クリントンのメール事件は、その内容がいまだに明らかにされていない。

 なにしろ、ウィキリークスのアサンジが、

クリントンが大統領になったら米国はさらなる戦争国家になるといって、

クリントン阻止の為に流した告発メールだ。

 アサンジは消されたといううわさが流されるほど米国にダメージを与える告発だ。

 その内容が深刻でないはずがない。

 大統領になった後に、その内容が明らかにされ、

もしそれが米国を危機にさらすような内容ならクリントンの弾劾は避けられない。

 握り潰すことができてもクリントンの信頼は回復しない。

 もちろんトランプが勝てば大混乱だ。

 そっちに転んでも米国の政治の混乱は長引くだろう。

 そんな米国に対米従属しかない日本は、ますます厳しくなるだろう。

 憲法9条新党の掲げる平和な自主外交の日本の実現が、いまこそ必要な時はない。

 日本は政局に明け暮れている余裕はない。

 いまは戦後70年の歴史の中の大きな転換期なのである。

 しかし、それを公言する政治家も有識者も出て来ない。

 メディアに至っては死んだも同然だ。

 誰が日本の政治の夜明けの口火を切るのだろうか。

Reply · Report Post