★ TPP批准阻止の不可能を可能にする方法-(植草一秀氏)

TPP承認案の衆議院特別委採決が11月2日に行われないことになった。

自民、民進両党は11月1日に、11月2日の衆院TPP特別委での総括質疑と採決、

4日の衆院本会議での採決で合意していた。

ところが、その11月1日夜に、山本農水相が東京都内での会合で

「こないだ冗談を言ったら首になりそうになった」

と発言。

さらに、

「JAの方が大勢いる。あすでも農林水産省に来てもらえれば、何か良いことがあるかもしれない」

と述べた。

山本農水相は、10月18日夜に開かれた衆議院議院運営委員会委員長の

自民党衆院議員佐藤勉氏のパーティーで、

「野党が必ず強行採決するだろうと総理に質問するが、強行採決するかどうかはこの佐藤勉さんが決める。

だから私は、はせ参じた。」

と述べて、野党から辞任を要求され、TPP特別委で陳謝し、発言を撤回したばかり。

これにさかのぼる9月29日には、衆議院TPP特別委員会理事に任命された自民党の福田照衆院議員が、

同氏が所属する二階派の会合で、

「この国会ではTPPの委員会で西川(公也)先生の思いを、強行採決という形で実現するよう頑張らせていただく」

と発言して同委員会理事ならびに委員を更迭された。

福田議員の更迭について安倍首相は、10月17日の衆院TPP特別委の答弁で、

「我が党においては(1955年の)結党以来、強行採決をしようと考えたことはない」

「円滑に議論し、議論が熟した際には採決する。民主主義のルールにのっとっていくのは当然のこと。」

「この考え方とは相いれない発言であったから(福井氏)本人が辞職した」

と述べている。

10月18日の山本農水相の発言は、

佐藤勉衆院議院運営委員長に強行採決をお願いするためにパーティーにはせ参じたと受け取れる発言で、

安倍首相の福井議員更迭に関する国会答弁を踏まえれば、山本農水相の辞任は必須だった。

ところが、安倍政権は山本農水相を更迭せず、続投させている。

その山本農水相が再び重大な問題発言を行った。


今回の山本農水相発言は、10月18日の発言について真摯な反省など微塵もないことを告白するものである。

山本農水相の今回の発言は、国会を軽視するとともに、

農業関係者への利益誘導とも受け取れるもので、TPP協定を審議する大臣としての資質に欠けるものである。

11月2日午前、民進、共産、自由、社民の野党4党の国会対策委員長は

山本大臣の辞任を求めることで一致したが、当然のことである。

11月2日のTPP特別委での採決は先送りされ、11月4日のTPP承認案の衆院通過は難しい情勢になった。

TPP批准阻止の戦術としては、

いかなることがあっても、11月1日までの衆院通過を阻止することが最低到達ラインであるとしてきた。

このラインを何とか突破することができた.

これを達成したなら、次の目標実現に向けての努力を注ぐ。

それは、あらゆる手段を用いて、衆院採決を先送りさせること。

そして、万が一、衆院を通過してしまった場合には、臨時国会の会期中の参院通過を、

あらゆる手段を用いて阻止すること、である。


民進党は11月1日までの採決阻止の目標を達成したと同時に、

やや腰砕けの様相を示したが、これではTPP批准阻止は実現しない。

極めて危ういところだったが、山本農水相のグッジョブである。

実は、山本有二農水相は昨年11月、

山本氏の選挙区である高知県須崎市で開かれたJA土佐くろしお主催のJAまつりにおいて、

イベントの一角で、農商工団体が

「消費税10%増税中止」



「TPP合意撤回」

の署名集めをした際、「増税反対」には署名せず、「TPP反対」には署名していた。

この事実が明るみに出た。

こうなると、山本農水相の度重なる不規則発言は

「失言」ではなく

「意図のある合理的行動」

なのだろう。

こうなると完全な閣内不一致である。

さすがに今回は陳謝、発言撤回での幕引きは困難だ。

野党は山本農水相辞任を実現するまで、てこでも動くべきでない。

天の時、地の利、人の和で、情勢が変化しつつある。

本日11月2日も、午後5時から議員会館内で情報共有集会、

午後6時半から議員会館前でのTPP批准阻止水曜行動が実施される。

一人でも多くの主権者の参集を望む。

情報共有会は衆議院第2議員会館多目的会議室、国会前行動は衆議院第2議員会館前で実施される。


民進党は11月2日の衆院特別委での採決、

11月4日の衆院本会議での採決で自民党と合意したと伝えられたが、対応が甘すぎる。

TPPの審議は十分でない。

10月31日付本ブログ、メルマガ記事で伝えたが、

共同通信社世論調査では、TPP審議について次の調査結果が示されている。

環太平洋連携協定(TPP)の承認案と関連法案について

今国会で成立させるべきだ        17.7%

今国会にこだわらず慎重に審議するべきだ 66・5%

今国会で成立させる必要はない      10.3%

分からない・無回答            5.5%

「成立させる必要なし」と「慎重に審議するべき」を合わせると、

76.8%

が今国会での拙速批准に反対ということになる。

これが民意である。

民主主義は主権者である国民の意思に沿う政治を実現するものである。

国民の77%が反対、賛成は18%しかいない。

しかも、TPPの巨大な問題点についての審議はほとんど行われていない。


自民党が何が何でも採決を主張するなら、野党は徹底抗戦して、

そのうえで

「強行採決」

の形態に追い込むべきである。

自公は「数」を持っているのだから、採決すれば可決されることは明白である。

本当に審議が不十分で、しかも、内容に反対するなら、

自公の採決を容認するような態度を取るべきでない。

それが、TPP慎重審議、TPP反対の78%の国民の負託に向き合う政治行動である。

自民、民進での採決日程合意は談合政治そのものである。


危うくTPP拙速批准が進行するところだったが、恵みの雨が降った。

山本農水相がTPP批准を阻止するために

「名演技」

をしているなら、アカデミー主演男優賞を与えてもいいだろう。

しかし、実態は、大臣の職責を担う資質を欠いているというだけなのだろう。

このような人物を最重要閣僚の農水相に起用するようでは、安倍政権の行く手がはっきり見えたも同然だ。

いよいよ安倍政権の瓦解が始まるときが来たようだ。


米国大統領選でも最終局面で情勢の重大な変化が進行している。

メディアがあれほどまでにヒステリックなトランプ叩きをしてきた本当の理由は、

トランプ支持があまりにも強固であるという点にあった。

メディアの情報誘導でクリントン優位を人的に創作しようとしてきたが、実はあまりうまくいっていない。

そして、最終局面でFBIによる捜査再開が伝えられ、トランプの地滑り勝利の可能性さえ浮上している。

選挙戦終盤に、わざわざクリントン候補と面会した(面会したのは替え玉だったという説もある)安倍晋三首相は、

トランプ氏が大統領に選出された場合には、一気に凋落する。

3期9年など、「夢のまた夢」の世界に転落する。


トランプ氏が選出される場合には、ほぼ確実にTPPは消滅する。

TPP阻止のために、とにかくできることから進めてゆく。

「数の力」だけを観察すると不可能に見えることも、

目の前にある、

やれることをやり抜く

ことを継続することによって、

可能になることはある。

不屈の精神、たゆまぬ努力、そして、希望を持ち続けること。

これが道を切り拓く方法である。

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