★民進・連合抜きの野党共闘&候補者一本化-(植草一秀氏)

衆議院のTPP特別委員会審議で安倍政権は11月1日の強行採決を目指している。

日本国憲法第60条、第61条の規定により、11月1日までにTPP批准案を衆議院で可決してしまえば、

参議院で可決されなくても11月30日の臨時国会会期末までにTPP批准案が可決成立することになるからだ。

しかし、日本がこの臨時国会でTPP批准案を拙速可決成立させる合理的根拠は存在しない。

野党は、最低目標として衆院採決を11月2日以降に先送りさせる責務を背負っている。

TPP特別委に委員を送り込んでいる安倍政権対峙勢力は民進党と共産党しかない。

自由党と社民党は委員を送り込めていない。

日本維新は完全な自公補完勢力になっており、

特別委でTPPに異議を唱えられる立場にあるのは民進党と共産党しかないのである。

したがって、民進党がTPP批准阻止に向けて、どこまで真剣に取り組むのかが最大の焦点である。

その民進党の姿勢を問う意味でも、

衆院採決を11月2日以降に先送りさせることができるのかどうかが重要な焦点になる。

「安倍政治を許さない!」

主権者は多数である。

この主権者がまとまると、安倍自公勢力を打ち負かすことができる。

参院1人区の11選挙区で野党共闘勢力が勝利した。

原発稼働が焦点になった滋賀、鹿児島、新潟の県知事選で、反原発派が勝利した。

情勢は大きく変化している。


しかし、10月23日に実施された東京10区および福岡6区の衆院補選では、民進党候補が惨敗した。

他の野党が候補者を取り下げて民進党候補を支援したのに、

当の民進党が野党共闘に背を向けたためである。

安倍政治の暴走を支えている最大の功労者が民進党である。

民進党が「隠れ与党」の動きを示していることが安倍政権の暴走を支える最大の要因である。

主権者はこのことをしっかりと認識して、次の衆院総選挙に向けて基本戦略を確定する必要がある。

この背後にあるのは、米国の工作だ。

CIA(米国中央情報局)の最大のミッション(使命)は、日本の野党第一党を「隠れ与党」にすることなのである。

本当の意味の野党、「たしかな野党」が日本の二大勢力の一角に育つことを阻止する。

これがCIAのミッションである。

つまり、自公と極めて類似した「第2自公勢力」を二大勢力の一方として確立することが

CIAのミッションなのである。


2009年に鳩山政権が樹立された。

この政権交代を主導したのは小沢一郎氏と鳩山由紀夫氏であったが、

小沢-鳩山両氏主導の当時の民主党が、米国にとって最大の脅威だった。

この政権が基盤を固めて、衆参ねじれを解消してしまうと、

この新政権が日本の政権として完全に定着してしまう。

それは、米国による日本支配を根底から覆す明白な危険だった。

だからこそ、米国は小沢一郎氏と鳩山由紀夫氏に対する史上空前の個人攻撃を浴びせたのである。

CIAは小沢-鳩山民主党政権を破壊して、米国傀儡の菅直人政権、野田佳彦政権を樹立して、

その後、米国直轄政権と言える安倍晋三政権を樹立した。

そして、民主党が敵対勢力にならぬよう、工作活動を続け、これが現在の民進党になっている。

その民進党を裏側からコントロールしているのが連合であり、

連合自体が労働者を代表する組織ではなく、巨大資本=ハゲタカが支配する組織になっている。

この民進党と連合の正体を認識し、「隠れ自公」勢力を排除しない限り、

日本政治の刷新を実現することはできない。

この現状で、今後の戦略構築に最大の示唆を与えたのが「新潟方式」である。

新潟県知事選では、連合新潟が原発推進の本性を表わし、

連合も会長の神津氏が原発推進候補の応援に入り、正体を表わした。

さらに民進党も原発稼働阻止候補を推薦せず、原発推進の隠れ本性を表わした。

政党として米山隆一氏を支援したのは共産、自由、社民の3党であり、

米山氏を当選させたのは新潟県の主権者である。

つまり、主権者が主導して、政策を基軸に、共産、自由、社民と連帯するならば、

自公+民進・維新連合に勝利できることが証明された。

この「新潟方式」を次の衆院選に全面採用してゆくことが必要である。

民進党所属議員、候補者の一部は米山氏支援に回った。

民進党単独で選挙に勝てる候補者はいない。

野党共闘から連合・民進党を排除することで政治刷新の道は拓けるだろう。


10月16日の新潟県知事選では、

共産、自由、社民が推薦した原発再稼働反対の米山隆一氏が見事に当選を果たした。

連合新潟は原発推進と見られる自公推薦の森民夫氏を推薦し、

民進党は米山氏推薦を拒絶して自主投票にした。

米山氏は民進党を離党して出馬して当選を果たした。

この選挙で連合の神津里季生会長は、原発推進と見られる森民夫氏の応援で現地入りした。

連合、民進党の正体がくっきりと表れた瞬間だった。

そして、米山氏の推薦拒絶を決定したのが、

蓮舫、野田佳彦

の民進党執行部である。

この民進党執行部は10月23日の衆院補選では、野党共闘路線を否定し、民進党候補の大惨敗を招いた。


どこの誰が問題であるのかは明白である。

この現状に対して、民進党内の良識派、連合内部の良識派が行動を起こすべきだ。

連合は労働組合の「連合」という建前になっているが、「連合」を仕切っているのは

電力、電機、鉄鋼、自動車

の御用組合である。

これらの組合と、旧総評系の労働組合は

「水と油」

の関係にある。

原発、憲法、TPP、基地、格差=消費税

の問題で、御用組合と本来の労働組合は

「水と油」

の関係を示す。


「御用組合」が連合を仕切っているから、新潟県知事選で連合新潟が原発推進候補を支援したのである。

こんなに分かりやすい事例はない。

自治労、日教組、JR総連などは、御用組合が仕切る現在の「連合」を分離するために活動を起こすべきである。

「御用組合連合」の主張は、日本の主権者の意思とも完全に乖離している。

連合の神津里季生会長は、

米山隆一氏が当選を果たした10月16日の新潟県知事選後の10月20日の記者会見で

次のように述べたことを産経ニュースが伝えている。

「民進党の蓮舫代表が新潟県知事選で、

党が「自主投票」と決めたにもかかわらず

米山隆一氏=共産、自由、社民推薦=の応援に駆けつけたことについて、

「(与党系候補を支援した)連合新潟にとっては、火に油を注ぐようなものだった」と述べ、対応を批判した。」


民進党は米山隆一氏の推薦を拒絶。

米山氏は民進党の次期衆院選民進党候補者だったが、民進党を離党して知事選に出馬した。

民進党支持母体の連合の地方組織である連合新潟は、原発推進候補と見られる森民夫氏の推薦を決定。

民進党は知事選自主投票を決めた。

つまり、民進党は原発推進と見られる森民夫氏を実質支援したことになる。

その民進党代表の蓮舫氏が知事選最終局面で森山氏の応援演説に現地入りしたことは、

党代表として失格行為である。

蓮舫氏が批判されるべきことは当然だ。

同時に、この選挙を通じて、民進党と連合の本性がはっきりと表れたことが重要である。


神津会長は新日鉄出身であり、1990年から3年間、タイの日本大使館に「労組外交官」で派遣されている。

当時のタイ大使は安倍外交の理論的基盤を与えてきた故・岡崎久彦氏である。

岡崎氏は外務省の対米追従路線を強行に主張し続けてきた人物で、

集団的自衛権の行使容認に向けて設置された懇談会のメンバーでもあった。

連合が現在のスタンスを維持するのなら、連合は自民党の支持母体になるべきである。

そして、そのとき、多くの本来の労働組合は訣別せざるを得ない。

連合を

「労働組合連合」

「御用組合連合」

に区分することが必要不可欠である。


「御用組合連合」は自民党応援には一定の成果を上げる可能性があるが、

日本の大多数の主権者の意思には完全に反している。

日本の主権者は、共産、自由、社民と本来の労働組合と連帯して、次の総選挙を勝ち抜かねばならない。

次の総選挙では、「隠れ与党」の民進党候補を含めての候補者一本化を行う必要はない。

「隠れ与党」の民進党候補と票を食い合うのは、自公候補になるからだ。

共産、自由、社民を軸に、主権者の意思に沿う候補者を一本化することが重要である。

民進党候補が政策公約を明確にして候補者一本化調整にエントリーしてくる場合だけ、

この候補を一本化の対象にすればよい。

この基本戦略を明確にすることが重要である。

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