★民進党が主導しなければ選挙協力はうまくいく?ー(田中良紹氏)

新潟県知事選挙は安倍政権の思惑を大きく狂わせる結果になった。

安倍政権が力を入れる原発再稼働とTPPに反対する野党候補が、

負けるはずのない自公推薦候補に6万票以上の差をつけて勝利したのである。

新潟県に立地する柏崎刈羽原子力発電所は世界最大級の発電量を持ち、

それが再稼働できるかどうかは福島原発事故で危機に陥った東京電力の経営の命運を握っている。

再稼働できなければ原発事故の収束や廃炉作業の計画にも影響し、

ひいては事故後の状況を「アンダーコントロール」と言って東京オリンピックを招致した安倍総理を

「国際的嘘つき」にする可能性もある。

またメディアは先の参議院選挙を「改憲勢力が3分の2を超えた」と大騒ぎし「与党圧勝」と報じたが、

東北や北海道ではTPPに反対の民意が1人区で野党統一候補を勝利に導き、

新潟選挙区でも統一候補となった生活の党(現自由党)の森ゆうこ氏が与党公明党の一部からも支持を得て

当選した。その森ゆうこ氏が選対本部長を務めたのが今回の新潟県知事選挙である。

「蟻の一穴」という言葉があるが、

強気一辺倒で攻めてきた安倍政権の政権運営にこの選挙は小さくとも侮れない穴を開けた。

原発再稼働とTPPで開いた穴が全国に広がれば安倍政権が築き上げた堤防から水が漏れだし、

経済産業省を後ろ盾とする安倍総理の政権戦略は見直しを迫られる。

安倍政権は全力でこの穴を塞ぎにかからなければならず、従って穴は安倍総理の解散戦略にも影響する。

また注目すべきはこれが野党第一党の民進党が主導する選挙でなかったことである。

初当選した米山隆一氏はかつて自民党と日本維新の会から国政選挙に立候補し、

旧民主党の田中真紀子氏や自民党の長島忠美氏に負け続けた。

それが民進党の次期衆院選候補者となっていたが、県知事選への立候補を巡って民進党に反対され、

共産党、自由党、社民党に担がれて選挙戦を戦った。

一方の自公推薦候補は長岡市長を5期務め、全国市長会会長でもあった森民夫氏である。

東京電力と対峙し原発再稼働に抵抗してきた泉田新潟県知事の対立候補として

原発再稼働賛成派から推され立候補を決断した。

ところが泉田知事は地元紙の報道を理由に選挙戦直前に知事選不出馬を表明、

そのため森氏の当選は確実とみられていた。

しかし泉田路線の継承を求める民の声が米山氏を動かし、

公示ぎりぎりの出馬表明からわずか半月で情勢を覆し6万票以上の差をつけて勝利した。

フーテンは政治の風が変わり始めたことを感じている。

自民党に戦いを挑んで東京都知事の座を勝ち取った小池百合子氏は、

今や豊洲新市場と東京オリンピック組織委員会に切り込んで世論の注目を集めているが、

力の源泉は圧倒的な民意の支持である。政治のダイナミズムは今や地方政治にあり、

国政にはぽっかりと口を開けた空洞が広がっているようだ。

国政で問題なのは民意を読み解くことに鈍感で、

その反面、自分たちの考える正論を主張するのが政治だと錯覚している野党の存在である。

2010年の参議院選挙以来5度の国政選挙で旧民主党と民進党が負け続けているのはそこに問題がある。

メディアはそうした状況を「一強他弱」と呼ぶようになるが、

それは国民が与党の政策を支持した結果ではなく、

選択の対象にならない旧民主党と民進党の駄目さに国民が背を向けた結果だとフーテンは言い続けてきた。

野党の仕事は選挙に勝って権力を奪い取ることである。

09年の総選挙で政権を獲得するところまでは良かったが、

旧民主党は官僚批判をするだけで官僚機構をコントロールする術を知らず、

また権力を維持するには国民の支持が絶対的に必要だという根本原理を忘れていた。

それが選挙公約にない消費増税を打ち出して参議院選挙に負け、

「ねじれ」を作って政権を絶命の危機に陥れるが、

その選挙結果を無視するように旧民主党は選挙に負けた菅直人氏を再び代表に選んだ。

政権与党ならやってはいけない民主主義原理の否定である。

55年体制下の万年野党は、選挙に負けることが常態化しているため、

選挙敗北の責任を取って党首が交代する必要はなかったかもしれない。

しかし政権与党ともなればそれは通用しない。

国民の審判を真摯に受け止め責任を明らかにし敗戦の総括を行わなければ国民は権力を持つことを認めない。

しかし旧民主党にはそうした姿勢がなかったため再び野党に転落し、

その体質は民進党にも受け継がれているようだ。

蓮舫代表は政権を転落させた野田元総理を幹事長に抜擢して復権させた。

新潟県知事選の最終盤に米山氏の優勢が明らかになると、

蓮舫代表は急きょ米山氏の応援演説を行ってアリバイ作りというか勝ち馬に乗るパフォーマンスを見せた。

そのパフォーマンスがなければ民進党は東京10区、福岡6区の補選と合わせ政局に影響を与える

重要な選挙ですべて敗者になる可能性があった。

しかし野田幹事長は蓮舫氏の新潟県知事選応援を「体を張ってでも阻止する」と語っていたという報道がある。

原発に賛成の連合を意識した発言ならば「なんと民意を無視した幹事長か」という気がする。

これではとても自民党の二階幹事長と比較できる器ではない。

16日、衆議院の補選で唯一の日曜日、

東京10区では小池都知事と安倍総理がそろい踏みで若狭候補を応援する姿がニュースに流れた。

ところが蓮舫代表はその日の選挙応援を見送り熊本地震の被害状況の視察だという。

テレビのインタビューで「蟻が象に挑む選挙だ」と敗北が必至の情勢を見越して責任回避の布石を打っている。

そんなことを言う前にコツコツ「蟻の一穴」を掘る努力をなぜやらないのかとフーテンは思う。

とにかく民進党の蓮舫ー野田体制は選挙に勝たないために生み出されたとしか思えない。

しかし民進党が主導的役割を果たさなかったから新潟で米山氏は勝つことができたと見ることもできる。

とにかく政治の風は変わり始めた。共産党を含めた本格的な野党の選挙協力ができれば、

自公の選挙協力に対抗できることは間違いない。

その時に民進党に主導的な役割を負わせなくするのが最善の策だというのが

今回の新潟県知事選挙の教訓かもしれない。

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