★北方領土問題は日米安保問題だと喝破した佐藤優-(天木直人氏)

プーチン大統領の来日と北方領土問題の解決で引っ張りだこの佐藤優であるが、

その佐藤優が10月7日の東京新聞「本音のコラム」で、さりげなく、しかし極めて重要な事を教えてくれた。

 すなわち、歯舞、色丹の返還が実現した場合、

米軍の活動が歯舞、色丹に及ばないことをプーチン大統領は引き渡しの条件にするであろうと。

安倍首相がこの条件を飲めばプーチン大統領の外交の大勝利だと。

 これには若干の説明が要る。

 日米安保条約では、日本の施政が及ぶすべての領域で米軍が活動できることになっている。

 しかしいまの米ロ関係を考えたら、歯舞、色丹で米軍が活動することをプーチン大統領が許すはずがない。

 だから、たとえプーチンが二島返還に合意しても、

米軍の活動が歯舞、色丹に及ばないことをプーチン大統領は引き渡し条件にするだろう。

 二島返還を達成したければ安倍首相はそれを飲むしかない。

 しかし、そんな事をすれば日米同盟に風穴をあけることになる。

 プーチン大統領の外交的大勝利だ、というわけである。

 そこで思い出すのが「ダレスの恫喝」だ。

 鳩山首相が二島返還で合意しようとした時、

そんな事をすれば米国は沖縄を返さない、と言って合意を潰した、あの歴史的介入事件のことだ。

 いまもむかしも、北方領土の帰属は米国とロシアの安全保障政策にとって一大関心事だ。

 ましてやオバマの米国とプーチンのロシアは、冷戦後の米ロ関係の中で最悪だ。

 クリミア、シリアについで、ついに米国はロシアの米国に対する国家的サイバーテロを批判し始めた。

 ますます悪化する米ロ関係の中で行われるプーチン大統領の訪日で、

果たして安倍首相は北方領土問題を決着できるのか。

 出来るはずがない。

 二島返還といい、全面返還といい、その帰属や主権を曖昧にしたまま、

経済協力の大盤振る舞いでごまかすしかないということだ。

 それを佐藤優がさりげなく教えてくれたということである。

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