「『IWGガイドライン』を無思慮に援用することの疑似CPへの影響に関する個人的考察」に対する問いへの回答

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AVAN川奈さん 〉「実在の成人により想像上の児童を描写した影像の製造・頒布・提供は、児童ポルノ罪として【処罰できる】」というのは乱暴ではありませんか？【審議の対象となる】程度でしょう。そして疑似CPを取り締まるために一部の成人女性の人権を侵害すべきとするのは、やはり不当。
https://twitter.com/MarikoKawana/status/784245708618539008

その文の前提に「実在の成人により非実在の児童を描写した影像が侵害しうる法益は、その他の児童ポルノよりも、程度が【高い】」があります。ここが実際にどう判断されるかはまだまだ議論の余地があり、定かでありません。要は法益同士のバランスの問題でしょう。

乱暴な考察なのは承知です。何しろスウェーデン高裁の判決はCPの「個人所有についての問題」であり、これに相対する法益となるのは「表現の自由と情報の自由」であり、「職業選択の自由」等ではないのですから。そこは頭を柔らかくもって、あくまで判例を当てはめた例と捉えてください。

スウェーデン最高裁の判決は、問題の影像が「想像上の、非実在の児童を描写したマンガイラスト」であり、「侵害しうる法益は、その他の児童ポルノよりも、程度が低」いからこそ無罪となったものです。これが「実在成人が児童を模したポルノ」である場合はどうなるか、というラフな考察です。

「実在の児童を撮影又は描写したポルノよりも侵害の程度やおそれは、相当に低い。」というスウェーデン最高裁の判決理由も、それが「想像上の、非実在の児童を描写したマンガイラスト」であるこそ適用されるロジックでした。ではそれが疑似CPだったらどうなるか、ということです。

「児童の尊厳の保護」vs. 「職業選択の自由の保障」という法益同士の衝突結果がどのような判例を導くかはわかりません。しかし、少なくともこの国では、疑似CPをめぐるこの観点の議論はなされてきていないように思います。あくまで記事にあるように漫画等非実在児童を扱ったものについてのみです。

だから先ほどの個人的考察で私は、「改めて広く社会的議論を喚起すべてきではないか」と提言しました。すでに日本では、疑似CPで摘発された事件があったあったそうですが、ならば尚更です。その議論を先導すべき存在こそAV業界団体なのではないでしょうか。
http://blogos.com/article/23348/

この件で、過去様々な人権団体や児童擁護団体がどのような主張をしてきたのかは私は関知しません。問題はこれまで論じられなかった不足していた議論が今年、『IWGガイドライン』で明確に論じられ、整理され、国際的なコンセンサスを得たことです。

しかし、「訳者あとがき②」でも述べた通り、その国際コンセンサスを経た『ガイドライン』すら、その「質」には問題があり、鵜呑みにできないところが多々あります。にもかかわらず、CPを単にCSEMと呼んでよいのか、というのが私の問題意識です。

【訳者あとがき】 IWG『用語ガイドライン』関連の抄訳作業を終えて
①http://www.twitlonger.com/show/n_1sp4pe7
②http://www.twitlonger.com/show/n_1sp4sc0

『ガイドライン』の中の用語・定義は、これから様々な国際的な場面で使われていくことでしょう。すでに国際労働機関ILO、ユニセフ、国連人権高等弁務官事務所等で正式に公開・推奨されています。とくにILOでの採用は、AVANの関心事ではないでしょうか？

AVANが職業選択の自由を論点に疑似CP問題について主張するのならば、なぜ国際労働機関であるILOが『ガイドライン』を採用したのか、その背景を調査すべきだと思います。その上でCSAM/CSEM等の表現を正しく使い分けする方針を立てるべきでしょう。長々と失礼しました。

以上です。

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