★女性初の首相を目指すと述べてきた稲田朋美の限界、
稲田朋美という政治家は注目を集め、政治的利益を得る時には、他に突出して過激な発言を行う、
②しかし、ポストに就けば、慣習的にポストが求める行動をとるという政治家であることを露呈ー(孫崎享氏)

2015年6月17日、ロイター通信の主催する講演会後の質疑で

「女性初の首相を目指すのか」と問われ「政治家であるなら、誰でも首相を目指している」と答えた。

 2016年2月17日朝日新聞は、「安倍首相、森氏・稲田氏を“きわめて有力な総理候補”」と題し、

企業の女性幹部らが集まるシンポジウムの歓迎会で

「今日は我が党からは森雅子・元少子化担当大臣、稲田朋美政調会長にも来ていただいた。

第2次安倍政権で2人は閣僚を務め、立派に大きな仕事を成し遂げた。

2人とも将来、自民党の指導者、あるいは総理大臣候補としてもがんばっていただきたい」と述べたと報じた。

 稲田氏は自民党の重要ポストである政調会長につき、

本年8月3日に成立した第3次安倍内閣で防衛大臣についた。確かに首相候補になりうる経歴である。

 稲田朋美氏の特徴は、日本政治のタブーともいえるような分野で、激しい発言を行い、注目を浴び、

そして「日本会議」のような極右のようなグループから強い支持を得るとのパターンである。

 これらには下記の表明がある。

A級戦犯と戦争責任について「、東京裁判は「占領政策」「戦後体制」の中心であり、

東京裁判史観の克服なしに戦後体制の歪みを是正することはできない」と

 靖国神社について、「首相の靖国参拝を阻止しようとする忘恩の輩に道徳・教育等を語る資格はない」と発言。

同年発行の『WiLL』では、「靖国神社というのは不戦の誓いをするところではなくて、

『祖国に何かあれば後に続きます』と誓うところでないといけないんです」と述べている。

 稲田氏の政治家としての特徴は、過激に見える発言を政治理念として最後まで貫くというのではなくて、

あくまで政治的道具であり、政治環境が変われば、発言内容も行動も変えるという政治家であった。

例えばTPPに関しては自民党の野党時代、ISD条項は国家主権を犯すものと激しく攻撃していたが、

自民党が政権をとると態度を変え、こうした発言は行っていない。

 つまり、稲田朋美という政治家は

1. 注目を集め、政治的利益を得る時には、他に突出して過激な発言を行う。

2. しかし、過激な発言は自分の信条として貫くまではしない。

3. ポストに就けば、慣習的にポストが求める行動をとるという政治家である。

この矛盾を察知したのが、辻本清美議員であった。

そして、9.30 産経ニュースは「稲田朋美防衛相が涙目…

民進・辻元清美氏「戦没者追悼式欠席は言行不一致」と追及され言葉詰まる」との表題で報じられた。

ここはまさに言行不一致が浮き彫りに出る場所である。

靖国神社参拝は、首相、官房長官、外務大臣、防衛大臣が公式参拝を

特に8月15日には行わないとする歴代内閣の方針がある。

稲田氏は首相など8月15日公式参拝すべきと主唱してきた。

この矛盾を解決するため、8月15日ジブチに海外出張することで切り抜けた。

そこを辻本清美につかれた。

(2016転載)

 辻元氏「稲田大臣、こういうことをおっしゃっている。

『自国のために命をささげた方に感謝の心を表すことのできない国家であっては防衛は成り立ちません。

これは日本という国家の存亡にまで関わる』と」

 「ところで、そうおっしゃっている大臣が、国防の責任者になられて、今年の8月15日です。

これは防衛大臣になられて初めての8月15日。全国戦没者追悼式があった。

これは閣議決定までして天皇皇后両陛下、総理大臣、両院議長はじめ政府の公式の追悼式。

今年は5800人の遺族の方、ご高齢の方が多いですが、全国から出てこられているんです。

先ほど天皇陛下のご公務の話があったが、最重要のご公務だといわれている」

「これを欠席されたんですよ。

あなたはいつも『命をささげた方に感謝の心を表すことのできない国家ではなりません』と

言っているにもかかわらず、欠席するのは言行不一致ではないかと思いますよ。そう思いませんか。

いつもおっしゃっていることと違いますか。政府の公式ですよ。そして調べました。

閣議決定されてから防衛大臣で欠席されたのはあなただけなんですよ。

言行不一致じゃないですか。いかがですか」

 稲田氏

 「その中で今回、戦没者追悼式に出席しなかったという指摘ですけれども、

それは誠にその通りでございます。その理由については就任後、

国内外の部隊について一日も早く自らの目で確認して、その実情を把握して、

また激励もしたいという思いから、部隊の日程調整をしてきた結果、

残念ながら出席をしなかったということでございます」

 辻元氏「反省していますか」

稲田氏「大変残念だったと思います」

 辻元氏「急にジブチの出張が入ったといわれているが、

8月13日に出発して15日を挟んで16日に帰国されている。

12日に持ち回り閣議でバタバタと出発しているわけです。

確かに世界各国、日本国内の自衛隊を防衛大臣が視察されること、激励されることは大事ですよ」

 「しかし、あなた、日ごろいっていることと違うのではないですか。

こうもおっしゃっていますよ。『いかなる歴史観に立とうとも国のために命をささげた人々に

感謝と敬意を示さなければならない』。毎年、靖国神社に行ってこられましたね。これ公式行事ですよ。

あなたの、戦争でなくなった方々への心をささげるというのは、その程度だったのかと思われかねないですよ。

そんなに緊急だったんですか」

 稲田氏「今までの私の発言… 読み上げられた通りです。その気持ちに今も変わりはありません。

今回、本当に残念なことに出席できなかったということですが、ご指摘はご指摘として受け止めたいと思います」

 辻元氏「国会議員は地元で式典があったり、集会があったりします。でも防衛大臣ですよ。

ジブチに行きたくなかったんじゃないですか。

稲田大臣が防衛大臣として靖国に行くと問題になるから、

回避させるためではないかと報道されているんですよ。

あなたは防衛大臣だったら信念を貫かれた方がいいと思いますよ」

 そして同様のやり取りは核兵器保有問題を持っても行われた。

 稲田氏は2011年雑誌での対談で「核保有を国家戦略として検討すべき」と発言しているが

「今核兵器を保有すべきでないと考えている」と逃げの発言をした。

 今の日本の風潮に従い、突出した右派的発言をする、それを政治的に利用する、

しかし重要ポストに就いたら、これまでの発言と関係なく、

従来の慣行に従う言動をする、それを如実に示した。

 救いは、その矛盾に耐えられないという知的認識を持っていたということである。

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