★対ロ外交に前のめりになる安倍首相の危うさー(天木直人氏)

どうやら安倍首相の対ロ外交の前のめりは本物のようだ。

 歴史に名を残したい安倍首相は、本気でプーチン大統領のロシアと外交関係を強化しようとしている。

 4島返還の大原則を捨て、北方領土問題を自民の手で片づけようとしている。

 たとえ二島でも返ってくるのあれば、それは歴史的大偉業だ。

 文句はない。

 しかし絶対にそうはならないだろう。

 主権問題を曖昧にしたまま、経済協力強化だけが先行して終わる。

 安倍首相としてはそれでいいのだろう。

 日ロ関係を前進させたというウソで押し通し、解散・総選挙に打って出る。

 最近の報道を見ていると、そういうシナリオがすでに出来上がっているかのごとくだ。

 私がそう思ったのは、安倍首相がバイデン副大統領と会って、

プーチンの訪日について理解を求めたと報道されたことを知ったからだ。

 かねてから安倍首相と側近は話しているらしい。

 オバマの言いなりにはならないぞ、と。

 その典型例が今度のプーチン大統領の訪日の強行だ。

 オバマが文句を言っても安倍独自外交は貫くというわけだ。

 しかし私が危ういと思ったのはバイデンの返答だ。

 「賢明な対応を確信している」と応じた。

 これは、気をつけろ、ゆめゆめ欧米の対ロ外交の足を引っ張るようなまねはするな、という警鐘である。

 果たして安倍首相は、日米同盟最優先の外交と、対ロシア独自外交の二つを、

どこまでうまく両立させられるのか。

 ながながと私が前置きした理由をこれから書く。

 週間現代の先週号(9月24日・10月1日号)の「霞が関24時」に、こういう記事があった。

 6月に杉山次官と交代した斉木昭隆前次官は、現在は外務省顧問となって、

米国の新大統領の下で駐米大使となることに備えている。

 そう当然視されていた。

 私もそう思っていた。

 ところが対米重視一辺倒の斉木氏は安倍首相の対ロ外交に慎重な姿勢を見せたので疎んじられた。

いまでは佐々江大使が1月以降も続投するという見方が有力になりつつある、と書かれていたのだ。

 本人も周囲に、「駐米大使にはなりたくない。民間に再就職する」と漏らしているという。

 外務官僚として内部で人事を見てきた私にとっては、斉木次官が駐米大使にならない選択肢はない。

 外務次官が駐米大使にならない場合は、健康上の理由などによる本人の固辞か、

鈴木宗男事件のような不測の政治的事件が起きた時のほかはありえない。

 ましてや斉木次官は谷内正太郎元次官と並んで安倍首相に評価されたミスター外務省と呼ばれた男だ。

 そんな斉木次官が、対ロ外交で慎重な意見を述べたからと言って、

駐米次官になれないなどということは考えられないからだ。

 もし、斉木次官が駐米大使になれないとすれば、安倍首相の対ロ外交の前のめりは本物であるということだ。

 米国との関係を損なってもプーチンのロシアとの関係を優先するということだ。

 それが、安倍外交の対米自主外交として評価されるのか、

それとも米国にもロシアにも馬鹿にされる、支離滅裂な失敗外交となるのか。

 それは12月にわかる。

 安倍首相の対ロ外交から目が離せない。

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