★民進党代表戦と日本政治刷新の戦術ー(植草一秀氏)

9月15日、民進党が代表選を実施して蓮舫氏を新代表に選出した。

開票結果は以下のとおり。

【党員・サポーター票(231ポイント)】

蓮舫氏=167ポイント
前原氏=52ポイント
玉木氏=12ポイント

【地方議員票(206ポイント)】

蓮舫氏=126ポイント
前原氏=50ポイント
玉木氏30ポイント。

【国会議員・国政選挙公認内定者票(412ポイント)】

蓮舫氏=210ポイント
前原氏=128ポイント
玉木氏=74ポイント

【合計(849ポイント)】

蓮舫氏=503ポイント
前原氏=230ポイント
玉木氏=116ポイント

蓮舫氏が【党員・サポーター票】、【地方議員票】、【国会議員・国政選挙公認内定者票】のすべてのカテゴリーで

単独過半数を獲得し、合計ポイントでも単独過半数425ポイントを大幅に上回る503ポイントを獲得して

新代表に選出された。

今回の選挙は任期満了に伴うもので、新たな任期は2019年9月までになる。

現在の衆院任期は2018年12月であるから、この任期中に衆院総選挙が実施される可能性が極めて高い。


民進党の前身である民主党は2010年6月に菅直人氏が代表に就任した瞬間から絶望の渕に転落した。

小沢-鳩山ラインが敷いた日本政治刷新の方針を根底から覆したためである。

米国が支配する日本
官僚が支配する日本
大資本が支配する日本

を刷新しようとしたのが小沢-鳩山ラインの新政権だった。

普天間基地の県外・国外移設
天下りの根絶=消費税増税の封印
企業団体献金の全面禁止

の方針が明示された。

この

「日本政治刷新の基本路線」

を明示したがために、鳩山政権は既得権勢力の総攻撃を受けた。

その結果として、8ヵ月半の時間で政権が破壊されてしまったのである。

このとき、権力を強奪したのが菅直人氏だった。

菅直人氏は「日本政治刷新の基本路線」を全面的に覆した。

辺野古米軍基地建設推進
官僚天下り根絶の封印=消費税増税の推進
企業団体献金全面禁止の封印

と基本政策路線を全面的に転覆したのである。

この路線を野田佳彦氏が踏襲し、民主党は自滅したのである。


民主党が崩落し、新たに結成された民進党はこの流れを明確に断ち切っていない。

そのために、安倍政権に代わる新政権を担う存在として民進党が認知されていないのである。

主権者の多数は安倍政権に批判的である。

原発推進、戦争推進、TPP推進、辺野古基地建設推進、格差拡大推進

の安倍政権基本路線に反対している。

ところが、選挙において、この政策を明示する議員の数が伸び悩んでいる。

逆に、安倍政権与党および補完勢力が衆参両院で3分の2以上の議席を占有する危険な状況が生じている。

重要なことは安倍政権に対峙する勢力が選挙に際して連帯して対応することである。

その重要な手がかりを成立させたのが、7月10日に実施された参院選だった。

議席数では安倍政権与党および補完勢力の参院3分の2議席占有を阻止できなかったが、

1人区における野党共闘によって大きな成果を上げることができた。

焦点は次の衆院総選挙である。

野党共闘の骨組みを維持したうえで、

政策を基軸に

反安倍陣営候補の一本化

を実現しなければならない。

蓮舫氏は代表選立候補者のなかでは、野党共闘に対して肯定的な姿勢を示していた人物である。

この意味で、日本政治刷新に向けての戦略、戦術を構築する上で、

この選挙結果は最悪のものではないと認定するべきだろう。

だが、大きな問題は残存する。

現在の民進党の基本政策はあいまいであり、今後は衆院選立候補予定者の政策公約を個別精査する必要がある。

そのうえで、民進党候補者をも排除しないかたちで、

政策を基軸に、各選挙区での候補者一本化を進めてゆかなくてはならない。

共産党候補者をも含めた各選挙区での候補者一本化が実現するかどうかが、

次の総選挙で日本政治刷新の新たな方向を得られるかどうかのカギを握る。

この意味での主権者が主導する政治活動が極めて重要な意味を有することになる。


民進党は基本政策課題について、内部での議論を深める必要がある。

原発、憲法、TPP、基地、格差

についての基本路線が明確でなければ、主権者の負託を受けることは不可能だ。

代表選では、原発について、2030年代の原発ゼロの方針が、3人の候補者から示されたが、

これは、「現時点での原発稼働容認」を意味する。

主権者の多数が原発の再稼働に反対している。

原発稼働ゼロでも、日本の電力需要は十分に賄われることが現実によって証明された。

危険な原発が鹿児島県や愛媛県だ稼働され、さらに全国に広がる様相を示している。

福島の事故が収束もせず、いまだに多数の市民が避難生活を余儀なく強いられているなかで、

避難経路も確保しないまま、原発再稼働が強硬に推進されているのだ。

原発再稼働容認の民進党を容認するのか。

主権者はこの点を吟味しなければならない。


安倍政権は憲法解釈を勝手に変更し、その解釈に基づく安保法制=戦争法制を強行制定した。

米国が創作する戦争に、日本が全面加担する態勢が整えられた。

この現実に対してどう対峙するのか。

政権交代を実現して、現在の安保法制を廃止することを明示することが求められている。

そして、秋の臨時国会での最重要議案であるTPP批准問題。

民進党は「現在のTPP合意案に反対」の姿勢を示しているが、

内容が修正されればTPPに賛成するということなのか。

あいまいな点が多すぎる。


辺野古米軍基地建設を推進したのは菅直人政権と野田佳彦政権である。

民進党は辺野古米軍基地建設を容認するのか。

沖縄県民が総意として米軍基地建設反対を示しているなかで、

民進党は沖縄県民の意思を踏みにじる姿勢を明示するのか。

消費税増税にしても、岡田克也氏は消費税増税の反対ではなく、

消費税増税の2017年度実施に反対しただけである。

官僚天下り根絶が完全に封印されているなかで、民進党は消費税増税の路線を容認するのか。

安倍政権は「働き方の改革」と銘打って、外国人労働力の活用促進の方針を示しているが、

企業が外国人労働力活用を求める最大の理由は、労働コストの削減にある。

外国人労働力が活用されると、日本人労働者の賃金に強い下方圧力がかかる。

これが格差拡大を推進することは明白だ。

格差拡大を推進する新自由主義経済政策を民進党は容認するのか。


つまり、

「安倍政治を許さない!」

と考える主権者が新しい政権を委ねる受け皿に、現在の民進党はなり得ないのである。

したがって、主権者は民進党とは一定の距離を保ちつつ、次の衆議院総選挙に向けて、

各選挙区での候補者一本化に向けての取り組みを進めてゆかねばならないのである。

民進党候補者が統一候補になり得るのかどうかは、その候補者の政策公約にかかる。

原発、憲法、TPP、基地、格差

の各問題について、主権者の意思を正面から受け止める人物を衆院選の統一候補者にしなければならない。

民進党候補者は排除されないが、自動的に統一候補者には選任されない。

民進党候補者が主権者の意思に沿う公約を明示せず、

共産党候補者が主権者の意思に沿う公約を明示するなら、

共産党候補者を主権者が推す統一候補者に押し立てることになる。

信頼できる野党第一党が存在しないことが、この国の政治刷新を妨げる最大の原因になっているが、

私たちは現実のなかからしか活路を見いだせない。

現実の問題点を認知したうえで、この問題点を克服する手法、戦術を駆使して進んでゆかねばならない。

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