★ベンゼンが浸み出す?放射能が漏れだす?2020東京五輪の呪いー(田中良紹氏)

豊洲新市場の土壌汚染問題で東京都は、汚染対策として敷地全体に盛り土をしたと思わせながら、

建物の地下は盛り土をせず空洞を作っていたことが明らかになった。

空洞の床には地下水と思われる水がある。

このニュースを聞いた時、頭をよぎったのは福島第一原子力発電所の汚染水問題である。

そこでは原子炉建屋に流入する地下水が炉心から溶け出した燃料と混ざり合い

高濃度の汚染水を作り出しているが、タンクに保管された汚染水はすでに置き場がなくなり、

いずれ海に放出するしかないところまできている。

豊洲では発がん性のベンゼンが地中から浸みだしてくる危険性を抑えるため

盛り土をするしかないといわれながら、東京都は空洞でも安全性は保たれると独自に判断し、

納税者に気づかれないうちに豊洲移転を急ごうとした。

何のために急いだのか。2020年東京オリンピックのためにである。

2013年、日本が東京オリンピック招致を勝ち取ったとき、

安倍総理は「放射能はアンダーコントロールされている」と発言した。

しかし現実はアンダーコントロールどころではない。

今年3月には国が400億円の税金を投入して原子炉建屋の周囲に凍土壁を作り、

増え続ける地下水の流入を防ごうとした。

ところが東京電力は今年7月、完全に凍らせることは難しいと発表した。

つまり何をやってもアンダーコントロールはできないのである。

この現実に国際社会が注目すれば、日本の「安部マリオ」は嘘つきだったことになる。

すると9月7日、外国特派員協会で会見した小泉純一郎元総理が

「安倍総理のアンダーコントロール発言はウソだ」と公式の場で安倍総理を嘘つき呼ばわりした。

この発言を聞いてフーテンには2007年の夏が甦る。

その夏の参議院選挙で惨敗した安倍総理は選挙結果を無視して続投しようとした。

そこに立ちふさがったのが二階国対委員長と小池防衛大臣の二人である。

二階氏は安倍総理の意向を無視して国会を開かせず、

小池氏は急きょ訪米して米政府首脳と会談を重ね、自分がポスト安部の本命と売り込んだ。

訪米の背後には小泉元総理の後押しがあったとフーテンは見ていた。

以来、第二次安倍政権で安倍総理は小池氏を徹底的に冷遇し、

逆に二階氏に対しては政治術を恐れるあまり厚遇した。

そして二階氏は政界ナンバー2の幹事長の座を手にする。

その二階氏はフーテンの見るところ「政界のドン」と呼ばれた金丸幹事長を意識している。

いずれ安倍総理と二階幹事長の力は逆転する可能性がある。

いずれにしても冷遇され続けた小池氏は都知事選立候補という大バクチを打って

「氷の牢獄」から外に出るきっかけを掴んだ。

しかし彼女には自民党東京都連とその背後にいる森喜朗東京五輪組織委会長との戦いがある。

現在は選挙の余韻もあり小池都知事の一挙手一投足に関心が集まり、好意的に報道されるだろうが、

都議会が始まれば様相は変わる。小池知事の前途は容易でない。

フーテンはそう思っていたが、しかしこの土壌汚染問題で自民党東京都連も反撃の狼煙を上げにくくなった。

これは石原慎太郎知事時代から猪瀬直樹、舛添要一と続く都政のゆがみを象徴する事件である。

都議会はこの時代の都知事と都庁幹部を証人喚問するぐらいの検証を行う必要がある。

その間は自民党東京都連も小池知事と足並みをそろえなければならなくなった。

しかし小池知事は同時に国際公約している2020年東京オリンピックの成功を保証しなければならない。

豊洲問題を解決しながら東京オリンピックの不透明さを明るみに出し、

経費の見直しなどで都民の支持を得てオリンピックを成功させる。並みの政治力ではできない仕事である。

しかしそれをやり切れれば小池氏には「ガラスの天井を突き破る」資格が得られるというものだ。

そのせいかどうかキャロライン・ケネディ駐日米国大使が小池都知事を表敬訪問して

東京オリンピックへの協力を申し出た。

政治力学的には多勢に無勢で劣勢の小池知事にとってアメリカの協力申し出は心強いことだろう。

それにしても前にも書いたが「東京オリンピックは呪われている」としか思えない。

当初は財政的に豊かな東京に4800億円の余剰資金があったことから

二度目のオリンピック誘致が計画され、

7000億円と言われた総予算が森東京五輪組織委会長に言わせると2兆円規模にまで膨れる見通しになった。

そうなれば利権を求めて様々な人間が様々に動き出す。

利権のためとなれば足の引っ張り合いが始まりスキャンダル合戦が頻発する。

そのためか都知事は次々に首を挿げ替えられ、国民の見えないところですべてが決まっていく。

国立競技場の建て替えも、エンブレムも不透明感があるから国民から文句が出た。

そして2020年を意識するあまり問題にじっくり取り組む姿勢がなくなる。

安倍マリオが「アンダーコントロール」と言ったから2020年まで放射能汚染をごまかしてやり過ごす案が

通ってしまう。それに税金が使われても仕方がないとあきらめる。

築地の移転も「東京の胃袋」を新たに作るという発想より、

ほとんどがオリンピックに間に合せるためにすべての作業が仕組まれ、

誰もが聞かされていない話が今頃になって浮上する。

何度も言うが日本にとって喫緊の課題は東日本大震災からの復興と

少子高齢化社会を生き抜くための制度設計に知恵を働かせることである。

それがアベノミクスや東京オリンピックというこの国の本質とは無縁の事柄に目を奪われて

本質を見失っている。東京オリンピック招致が決まってからの不祥事の連続は、

本質を見失った日本人に天が「呪い」をかけ警告を発しているのだとフーテンは考える。

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