★2009年政権交代原点に立ち返る重要性ー(植草一秀氏)

一向に盛り上がらない民進党代表選。

小選挙区制度の下での野党第一党の代表選である。

本来の姿では、次の総選挙で政権交代が生じれば首相に就任する可能性が高い人物を選出するのであるから、

盛り上がり、広く主権者の関心を集める選挙であるべきものだ。

ところが、そのような盛り上がりはまったくない。

蓮舫氏などは代表になること、首相になること自体を目指していると受け取れる発言を示す。

ここに根本的な本末転倒がある。

代表に就くこと、首相になることは、手段であって目的でない。

単に高い地位に就きたいだけ、というのが、現在の民進党議員の多くの人の基本姿勢なのではないか。

この盛り上がらない民進党代表選について、時事通信社が以下のような記事を示している。

「共産との距離に苦慮=「民進主導」訴え-代表選3候補」

http://www.jiji.com/jc/article?k=2016090600627&g=pol

「民進党代表選(15日投開票)の3候補が10月の衆院2補選や次期衆院選への対応をめぐり、

共産党との間合いをどう取るかで苦慮している。

与党に対抗していくには、野党の候補者一本化が課題となるが、

代表選の論戦では、「野合」批判を浴びるのを警戒して共産党と距離を置く姿勢を示し、

「民進党主導」を盛んにアピールしている。」

「3候補は6日夕、高松市で討論会を実施。7月の参院選香川選挙区では、

全国で唯一、共産党公認候補が野党統一候補となり、民進党は当初予定していた候補を取り下げた。

岡田克也代表が進めた共闘路線を継続するかどうかは、代表選で大きな焦点となっている。」


7月10日の参院選で民進党は香川選挙区で立候補予定者の擁立を取り下げた。

野党共闘の一環で共産党候補者が野党候補になった。

しかし、民進党は共産党候補の当選に向けてまったく力を注がなかった。

民進党は野党共闘によって、共闘がなければ落選した候補者のうち、7名を当選させることができた。

野党共闘の恩恵を最大に享受したのが民進党である。

それにもかかわらず民進党は野党共闘を批判し、

野党共闘に全面的に協力した共産党の候補が野党候補となった香川で、

この候補者の当選に力を尽くさなかった。

人間としてのあるべき姿から離れてしまっているというのがいまの民進党の実情である。

香川選挙区では桜井充参議院議員の元秘書で現在は県議の女性が立候補を予定していたが、

出馬を取り下げた。

スキャンダル情報も飛び交った選挙区である。

「蓮舫代表代行は6日の同市での記者会見で、共産党との関係について

「次の選挙は政権選択を懸けての戦いになる。政策が違うところと連立政権を目指すことはあり得ない」と

述べた。」

と時事通信社が伝えているが、

「政策が違うところと連立政権を目指すことはあり得ない」

という部分が極めて重要である。


主権者の多数は、現在の自公政権の政策と異なる政策を求めている。

主権者にとっての最重要政策テーマは、

原発

憲法=平和主義=集団的自衛権

TPP

基地

格差=消費税

である。

この五つの基本政策課題について、自公と明確に対峙する政策を主権者の多数が求めている。

したがって、

「政策が違うところ」

などと言う前に、民進党自身が自らの政策を明示するのが先決ではないか。

民進党の基本政策があいまいなことが問題なのだ。

原発稼働阻止、集団的自衛権阻止、TPP阻止、辺野古基地阻止、消費税増税阻止

を明示するべきだろう。

これを明示するなら、共産党と「政策が違う」という問題は生じない。

共産党は自衛隊の存在も天皇制も容認しているのだから、基本的に重大な問題はない。

主権者の大多数は現在の民進党に政権を委ねる考えをまったく持っていない。

問題はその民進党が野党第一党の位置にいることだ。

つまり、主権者の側の課題は、民進党ではない、別の野党第一党を生み出すことだ。

自公政権に正面から対峙する政策を明示する政治勢力が野党第一党の地位を占め、

総選挙で現在の自公と正々堂々の戦いを演じる。

建設的な野党第一党構築に向けての戦略、戦術を深化させることが最重要である。


2009年に政権交代が実現した。

この政権交代を主導した民主党と現在の民進党はまったく別物である。

政権交代を牽引したのは小沢一郎氏と鳩山友紀夫氏である。

「菅直人氏とのトロイカ」と言われたが、菅直人氏は、自分が首相になることを優先して転向した。

菅直人氏が政権交代の偉業を粉々に粉砕したA級戦犯の筆頭である。

菅直人氏は2010年6月に実質上の「クーデター」によって権力を強奪した。

ここから日本政治の転落が一気に進展したのである。


鳩山政権と菅政権は何が違ったのか。

最大の相違は、

鳩山政権が「主権者のための政治」を目指した

のに対し、

菅政権は「既得権者のための政治」に回帰した

点にある。

「主権者のための政治」

とは

「既得権者のための政治」

を打破することだ。

米国が支配する日本

官僚が支配する日本

大資本が支配する日本

を本当に打破しようとした。


具体的には、

辺野古米軍基地建設NOの姿勢を示した。

官僚天下りの根絶の方針を明示した。

消費税増税については、「シロアリ退治なくして消費税増税なし」を明言した。

大資本が政治を支配する根幹の「企業献金」について「企業団体献金の全面禁止」

を明示した。

そして、

「弱肉強食奨励の政治」



「共生重視の政治」=「友愛の政治」

に転換する方針を明示したのである。


「米国が支配する政治」から脱却する政策とは、

「米国に対しても言うべきことを言う」

ということであるが、同時に

「アジアの近隣諸国との真に友好的な関係構築」

を推進することでもある。

鳩山政権はこの路線を明示したのである。


この鳩山政権が、既得権者の強烈な総攻撃を受けることは自明だった。

米・官・業が支配し続けてきた日本。

これらの勢力が絶対的な危機に対応して

小沢-鳩山政権に対して猛烈な総攻撃を仕掛けてきた。

その実働部隊として、米官業トライアングルの支配下にある、

その手先と言えるマスメディアが小沢氏と鳩山氏に対して集中攻撃を浴びせたのである。

同時に敵は、この小沢氏と鳩山氏が十分に連携することをも妨害した。

つまり、両者の連携を可能な限り断ち切るための工作活動を展開したのである。


小沢氏に対しては西松・陸山会という、二つの冤罪事案を強硬に捏造し、

これをマスメディアによって誇大宣伝させた。

鳩山氏に対しては政治献金問題を過大に取り上げ、

対米隷属政治打破の象徴となった辺野古移設問題において、

政権内部にまで手を回してその撤回を誘導したのである。

鳩山政権を破壊した「敵の手先」が鳩山政権内部に巣食っていた。

この「敵の手先」こそ、いまの民進党中枢なのである。

小沢氏と鳩山氏が既得権勢力によって集中攻撃を受ける姿を間近で観察していた菅直人氏は、

これを見て「転向」したのである。

「シロアリを退治せぬ消費税増税」を突然提案した。

「辺野古米軍基地建設」を熱烈推進する方向に転じた。

「企業献金全面禁止」を完全に握りつぶした。

「転向」した民主党が主権者の支持を失うのは当然の帰結であった。

その主権者に見放された政治勢力のなれの果てがいまの民進党なのだ。

したがって、この政党に世直しを期待できるわけがない。

主権者は、自公政治に対峙する、本当の意味の野党第一党を創設することを明確な目標に位置付け、

これに向けて戦略、戦術を構築し、直ちに行動に移してゆくべきである。

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