★クルド問題の表面化が中東の平和をさらに絶望にさせるー(天木直人氏)

いつか書こうと思っていたが、

エルドアン率いるトルコ軍がクルドの抵抗組織と戦い始めたという

きょう8月30日の朝日の記事を読んで、その時は今だと思って書くことにした。

 ブッシュのイラク戦争によってイラクが混乱し、イラク国内のクルド人の独立機運が高まった。

 そして、それは周辺国に広がった。

 このクルドの独立の動きこそ、イラク戦争以降に新たに登場した、

「中東の平和」の実現のカギを握る大問題である。

 国を持たないユダヤ人がイスラエルという国をつくり、

イスラエル国家の安全保障の為にあらゆる手段を講じるように、

いまや独立の悲願を手にしようとしているクルド人は、ユダヤ人以上に大きな「国亡き民」であり、

だからこそ、その悲願達成は今をおいてないと、どこでも、誰とでも、勇猛果敢に戦ってきた。

 イラクでもシリアでも、最前線に立ってイスラム国と戦ってきたのはクルド人だ。

 そのクルド人が、いまエルドアン率いるトルコ軍と闘いはじめた。

 そしてエルドアン大統領は国内のクルドの分離・独立を決して認めない。

 いまやエルドアン大統領にとって、クルド武装組織はイスラム国と並んで最大の敵である。

 いうまでもなくトルコはイラン、エジプトとならんで中東の戦争と平和の帰趨を左右する主要国だ。

 そのトルコのエルドアン大統領が国内のクルド人分離・独立阻止を最優先して

クルドと戦うようになれば中東はどうなるか。

 終わりのないあらたな戦いが始まる。

 中東は、パレスチナ問題、イラク問題、シリア問題、イスラム国問題、イラン問題に加え、

ついにクルド問題も抱え込む事になった。

 そして、このすべてはお互いに密接に関連している。

 もはや中東の和平は限りなく遠くなった。

 中東に和平をもたらす事のできる国は皆無である。

 その行き着く先が中東発の世界戦争とならない事を願うばかりだ。

 中東から、地理的に歴史的にも、遠く離れた日本は、中東のあらゆる戦争に関与してはいけないのである。

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