★安倍首相のアフリカ開発会議出席は本来の外交ではないー(天木直人氏)

安倍首相のアフリカ開発会議出席が終わった。

 メディアはあたかもこの外遊が日本のアフリカ外交の新展開のごとく報じているが、

これは外交でもなんでもない。

 日本の、日本による、日本のための一人芝居外交もどきだ。

 このアフリカ開発会議の前身である南アフリカ開発会議をてがけたアフリカ課長の私がそういうのだから

間違いない。

 その昔、まだ南アフリカが悪名高いアパルトヘイト(人種隔離)政策を国是としていた1980年代の半ば、

南アフリカ周辺国は南アフリカの弱体化政策の被害を受けて脆弱の極みであった。

 そこで彼らが結束して経済開発を進めようという機運が高まり、

それを日本が経済協力で後押しようとして南アフリカ開発会議が発足した。

 それから10年余りたち、南アフリカのアパルトヘイトはなくなったが、

アフリカ諸国に対する日本の経済協力はアフリカ全土で広く行われていたから、

南アフリカ開発会議がアフリカ開発会議と発展していった。

 その時は私は既にアフリカ担当を離れて久しかったが、

いつしかアフリカ開発会議は当初の純粋な援助会議から離れ、

援助国である日本と援助をもらうアフリカ諸国との主従のごとき不均衡な会議になっていったごとくだ。

 口は悪いが、アフリカ開発会議とは、国連などの経済開発機関も参加するような体をとってはいるが、

国際政治でいう対等国家間の国際会議ではなく、

金をばら撒く日本が、経済に困窮しているアフリカ諸国の元首を日本に呼びつけて

好き放題のシナリオで事を運ぶ一人芝居の舞台と化したのだ。

 さすがに、毎度毎度日本に呼びつけるのは馬鹿にしていると、

文句を言い出す元首が出て来たらしく、今回初めてアフリカで開催する事になった。

 そんなアフリカ開発会議でも、日本とアフリカの双方にとって利益をもたらすものであればまだ意義はある。

 しかし、アフリカの現状はどうか。

 8月28日の読売新聞と29日の日経がいみじくも書いた。

 多くの国が政情不安で、おまけに経済状況は最悪下にあると。

 日本の援助だけではどうにもならないのだ。

 そしてまた大企業を引き連れて訪問したところで、日本のアフリカ投資はリスクが大きすぎるのだ。

 そんなアフリカ諸国を前にして、

安倍首相は冒頭演説で「アジアからアフリカに及ぶ一帯を成長と繁栄の大動脈にしよう」と呼びかけたらしい。

 これは中国をにらんだアフリカ大陸の主導権あらそいだ。

 いわばアフリカをめぐる新植民地主義宣言である。

 そこにはアフリカ国民に対する配慮は微塵もない。

 アフリカ開発会議は日本のアフリカ外交の底の浅さを見事にあらわしている。

 それを、安倍首相の「あらたな外交戦略」(8月28日読売)だと持ち上げるメディアもまた

アフリカことなど何も分かっていない。

 こんなアフリカ外交を日本は一体いつまで続けるつもりだろうか。

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