★「汚染水は完全にブロックされている」ウソ八百ー(植草一秀氏)

「状況はコントロールできている。

汚染水の影響は福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされている」

これは、安倍晋三氏が2013年9月の五輪招致最終プレゼンで発した言葉だ。

この発言に対して、

「もし完全にブロックして外に出ないのならば、港湾内の水位は上昇していくはず。

コップに水を入れ続けると一杯になるのと同じことです。

しかし、現状はそうなっていない。

港湾内と外の水位が同じなのです。

つまり、港湾内の汚染された水は外に流れ出ているということになります」

とする環境水理学に詳しい平田健正・和歌山大学理事の反論もネット上で紹介されている。

港湾の内外を隔てる遮断壁が設けられているわけではない。

港湾内に流入した汚染水は、港湾外の外界に流出している。

誰にでも分かる「ウソ」をついて五輪を招致しようとした。

犯罪級の悪行と言わざるを得ない。

また、本年5月には、当時IOC委員であった国際陸上競技連盟前会長の親族側に

多額の賄賂を贈った疑惑が発覚。

電通の関与も疑われているが、現時点で全容はまだ明らかにされていない。

五輪招致費用には血税が注がれている。

日本の主権者は特定個人に賄賂を贈呈して日本で五輪を開催したいとの意向を有していない。

五輪招致に不正な手段を用いたことが明らかになるなら、日本は五輪開催を返上するべきである。


8月23日付ブログ記事

「国威発揚五輪とあべさまのNHKはどちらもいらない」

http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-e19c.html

にも記述したが、

『人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会を奨励する』というオリンピック憲章の精神は、

戦争や独裁政治、国威発揚とは相いれないのであり、

オリンピック憲章第1章には、

「オリンピック競技大会は、個人種目または団体種目での選手間の競争であり、国家間の競争ではない」

と明記されている。

安倍首相はリオ五輪の閉会式に登場し、民間業者との癒着の疑いがあるぶざまな見世物を演じたが、

五輪の政治利用以外の何者でもなかった。

NHKは五輪開催のメリットの第一番目に

「国威発揚」

を挙げたが、安倍首相と「あべさまのNHK」の不見識はあきれるばかりである。

秋の臨時国会ではオリンピック憲章の確認を含めて

これらの見識なき行動に対する責任が問われなければならない。

安倍政権は原発再稼働に突き進んでいるが、日本の主権者の過半数は原発再稼働に反対であると推察される。

鹿児島県の九州電力川内(せんだい)原発は九州の活火山に近く、

4月に熊本で発生した大地震の震源と推察される巨大断層帯である中央構造線が

川内原発直下を走っている疑いも強い。

熊本県益城町では1580ガルの地震動が観測されたが、

川内原発の耐震性能基準はこれよりはるかに低い。

鹿児島県知事に就任したの三反園訓氏は8月26日に、

九州電力の瓜生道明社長に川内原発の一時停止と再点検を求める要請書を直接手渡した。

前任の知事は川内原発再稼働を容認し、地震発生後も川内原発の稼働継続を放置したが、

ようやく適正な行動が示されたと言える。

他方、同じ中央構造線が直下に存在する疑いが濃厚の愛媛県所在の四国電力伊方原発の再稼働が

強行された。

伊方原発は狭隘な半島の付け根に位置し、事故が発生すれば原発より西側の半島居住者は逃げ道を失う。

原発事故が発生する局面では半島部からの脱出は極めて困難になることが予想される。

人権無視、人命無視の蛮行と言うほかない。

そして、福島の汚染水。

東京電力は8月22日に福島県を通過した台風9号による降雨の影響で、

福島第1原発構内の「K排水路」を流れる水から、

暫定の警報設定値(1リットル当たり1500ベクレル)を超す

2300ベクレルの放射性物質を検出したと発表した。

さらに、汚染水を遮断するとして350億円の国費が投入されて建設された「凍土壁」が

原発敷地内に流れ込む地下水を遮断する効果を持たないことが明らかにされた。

この福島原発を台風10号が直撃する可能性が浮上している。

自称「晴れ男」の安倍晋三氏を迎えたリオの五輪会場の天候は大雨だった。

「ウソは泥棒の始まり」

と言われるが

「ウソが政権転落の始まり」

になる様相が強まり始めている。


北海道新聞は8月20日付社説でフクシマ原発の凍土壁について次のように指摘している。

「凍土壁は、1~4号機の周囲1・5キロにわたって地中に凍結管を打ち込み、

冷却材を循環させて土壌を凍らせる工法だ。

ところが、東京電力は18日の規制委の検討会で、

山側の一部が凍っていないため地下水の流入が続いていると報告した。

しかも、凍結による効果などの質問には明確に答えず、

委員から「はぐらかしている。失礼だ」と憤りの声すら出た。

一部の外部専門家が、凍土壁の遮水能力が高いとしてきた東京電力の説明が「破綻している」と

指摘したのもうなずける。

遮水の工法を巡っては、計画段階からさまざまな議論があったことを思い返したい。

凍土壁はトンネル工事などで用いられるが、長期間使われた例はない。

総延長1・5キロという規模の大きさも初めてだ。

廃炉に必要とされる30~40年にわたる耐久性があるかどうかや、

凍結にかかる多額の電気代も問題視されてきた。

東京電力は、主に3カ所ある未凍結の場所への薬剤注入を進めているというが、

こうした対応で目標の100%凍結を達成し、その状態を維持できるのか。

本来、原発事故の責任は電力会社にあるが、早急な汚染水対策を目指す政府の意向で、

凍土壁の工事には国費約350億円が投じられた。

それなのに、事故の収束のめどどころか、汚染水問題も滞るようでは、避難者の不安解消は遠のくばかりだ。」


福島原発事故が発生した時点で存在した2011年3月11日時点において、

原子力事故が発生した場合の損害賠償について定めを置いていた唯一の法律は

「原子力損害賠償法」(原賠法)に以下の条文がある。
 
第二章 原子力損害賠償責任
 
(無過失責任、責任の集中等)
第三条  原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、
当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。
ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。
(一部略)
 
第四条  前条の場合においては、同条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき原子力事業者以外の者は、その損害を賠償する責めに任じない。

原賠法は、原子力事故が発生し、損害をもたらした場合、その損害を賠償する責めは、事故を発生させた当事者である原子力事業者が負うことを定めている。
 
この責任を負わせない場合があり得る、例外のケースとして、
 
「異常に巨大な天災地変」による場合、
 
「社会的動乱」による場合
 
が定められているが、東日本大震災は歴史上繰り返し発生してきた地震規模の範疇に入り、

「異常に巨大な天災地変」にはあたらない。
 

また、独立行政法人産業技術総合研究所は、2009年段階で、

過去の津波に関する綿密な調査結果を踏まえて、

とりわけ、福島原発の津波対策が不十分であることについて、

再三にわたり、警告を発していた事実も明らかになっている。

フクシマ事故は想定される地震による津波に対する対策を怠ったことによって発生した「人災」であり、

損害賠償責任は東京電力が負っている。

その損害賠償債務は東京電力の純資産をはるかに超えており、

東京電力は事業会社として実質破綻したのである。

したがって、東京電力は「破綻処理」して再生させることが当然の対応方法であった。


ところが、現実には東京電力の法的整理は行われず、株主は国民負担によって株主責任を回避した。

東電株主に対して、日本の主権者が、株価がゼロになることによって生じる損失を穴埋めしたのである。

日本の主権者が東電株主に資金を贈与したことになる。

こうした責任処理の不正がフクシマ事故につきまとう。

企業としての責任を問わず、必要資金を主権者=納税者に押し付ける。

フクシマ処理に巨大な国費が投入されるが、いわゆる「親方日の丸」で、

その処理は無責任=放漫の跳梁跋扈する荒れ地になるのである。


当初から効果が疑わしかった凍土壁に350億円もの国費が投入された。

この事業を請け負った民間事業者にとっては、まさに「原発事故特需」であり、

価格設定も不透明であるから、その資金がどのように不正利用されてしまうのか、疑う余地は計り知れない。

がれき処理を含めて、「震災復興」、「原発事故処理」の名目で国費が際限なく投入されているが、

これらがすべて「巨大利権」になっている現実を見落としてはならないのだ。


フクシマではいまも大量の汚染水が発生し続けている。

「汚染水の影響は福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされている」

という言葉は、明白な「ウソ」である。

台風10号の影響で、どのような事態が生じるのか。

東京電力、国、メディアは事実を包み隠さず、正確に主権者に知らせる責務を負っている。

フクシマ事故の収束もまったくできていない安倍政権が全国の原発再稼働を強行し、

ウソをついて五輪を招致するというのは、完全に正道を外れる、邪道、けものみちの対応である。

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