(重要記事)★悪魔の緊急事態条項に公明党が積極姿勢ー(植草一秀氏)

自民党は2012年4月27日に憲法改定案を発表した。

安倍政権は4月28日を「主権回復の日」として、新しい記念日として位置付けようとした。

1952年4月28日、サンフランシスコ講和条約が発効し、日本は主権を回復した。

そして、この4月28日は安倍晋三氏の祖父にあたる岸信介氏の公職追放が解かれた日でもある。

安倍氏は、この日を憲法記念日に代わる新たな記念日にしようと考えたのだと思われる。

しかし、この「主権回復」は「見かけ上の」主権回復であり、

実態は、日本が名実ともに米国の植民地になった日と言うべきである。

この点を衝撃をもって明らかにしているのが矢部宏治氏の

『日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか』

https://goo.gl/wGzVpQ

である。

都合の悪い取り決め(過去の条文)



見せかけの取り決め(新しい条文)



密約

という、「密約の方程式」が活用され、国民の「知る権利」を奪うかたち、

そして「法治国家を崩壊」させるかたちで、

「国を売り渡す」

「実態上の取り決め」

が形成されていった。

日本は見かけ上の独立を回復したが、米軍は日米安全保障条約に基づいて日本に駐留し続けた。

そして、米軍は「日米地位協定」により、完全な「治外法権」を獲得したが、その状態がいまも維持されている。

「終わらない占領」

が実態である。


そして、1952年4月28日の「独立回復」は、沖縄を米国に献上するかたちでもたらされたものである。

サンフランシスコ平和条約には、

沖縄を含む南西諸島を国連憲章第77条「敵国条項」を用いて日本から分離した

「信託統治制度」のなかに位置づけ、さらに国連憲章第82条の「戦略地域」に指定し、

沖縄を軍事利用して支配する条項が盛り込まれた。

このなかで、沖縄については、

「日本は、アメリカが国連に対して、沖縄を信託統治制度のもとに置くという提案をした場合に、

無条件でそれに同意する」

という表現を盛り込んだにもかかわらず、アメリカは結局、1972年の沖縄返還まで、

一度もその提案をせず、沖縄を完全な軍事占領状態に「合法的に」置き続けたのである。

沖縄を米国に献上し、米軍の日本駐留を引き続き認めることと引き換えに、

日本が「見かけ上の独立」を回復したのが1952年4月28日である。

沖縄は日本の「見かけ上の主権回復」のために切り捨てられたのである。

4月28日は沖縄にとって「屈辱の日」である。


吉田茂首相は、1950年5月3日付の極秘メッセージにおいて、

「日本政府はできるだけ早い時期の平和条約締結を目指している。

その場合、その場合、米軍を日本に駐留させる必要があるだろうが、

もしその希望をアメリカから言い出しにくければ、日本側からオファーすることを考えてもいい」

と記している。

日本側から米国に米軍駐留を求めることを示したのである。

平和条約締結に関する1951年2月3日に日米交渉において、

「再軍備密約」

が交わされ、同時に、

「共同委員会(のちの日米合同委員会)」の大いなる活用」

が吉田茂によって強調された。

沖縄を含む南西諸島は日本から切り離され、米国施政下に移された。

サンフランシスコ講和条約は次の条文を含む。

第6条(a)連合国のすべての占領軍は、この条約の効力発生の後なるべくすみやかに、

且つ、いかなる場合にもその後九十日以内に、日本国から撤退しなければならない。

日本の主権回復とは日本からの占領軍撤退と同義であったが、

これを否定する但し書きが付され、日米安保条約により米軍の日本駐留が永続されて現在に至っている。

そして、吉田茂が

「大いに活用するべき」

とした

「日米合同委員会」



「米軍による日本支配」

を実行している

「闇の奥」=「ウラの最高決定機関」

の役割を果たし続けている。

日本は独立国家でなく、米国に支配される属国、あるいは植民地なのである。

安倍首相が米国には何ひとつものを言えないのは、安倍首相の実態が首相ではなく、

植民地総督に過ぎないからである。


この安倍政権サイドに位置する改憲勢力が衆参両院で3分の2以上の議席を占有した。

安倍政権がこの機会を利用しない可能性はゼロである。

公明党は改憲に慎重な言い回しをしてきたが、ついに正体を表わした。

メディアは次の事実を伝えている。

「公明党の北側一雄憲法調査会長(副代表)は13日までに共同通信のインタビューに応じ、

憲法改正を巡り、大規模災害が国政選挙と重なった場合などに

国会議員の任期延長を認める規定の新設が優先課題になるとの考えを明らかにした。」

つまり、憲法9条の改定ではなく、憲法に緊急事態条項を加憲することが、

憲法改定の第一歩になるとの見解を示したのだ。

私は、改憲勢力が衆参両院で憲法改定の発議要件を獲得したら、

緊急事態条項の加憲に突き進む可能性が高いと指摘してきた。

自民党憲法改定案では第98条、第99条がこれにあたる。

憲法改定の第一弾としてこれを手掛ける可能性が高いと指摘してきた。

公明党の意思表示は、この予測が正しかったことを示している。


自民党憲法改定案の第98条、第99条は以下のものである。

第九章 緊急事態

(緊急事態の宣言)
第九十八条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、
地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、
特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、
閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。

2 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。

3 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、
国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、
又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、
法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。
また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、
事前に国会の承認を得なければならない。

4 第二項及び前項後段の国会の承認については、第六十条第二項の規定を準用する。
この場合において、同項中「三十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。


(緊急事態の宣言の効果)
第九十九条 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、
内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、
内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、
地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。

2 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、
事後に国会の承認を得なければならない。

3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、
当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる
国その他公の機関の指示に従わなければならない。
この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、
最大限に尊重されなければならない。

4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、
その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、
両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。


少し長い条文だが、極めて重大な内容を含んでいる。

安倍氏の狙いはズバリこの点にある。

「緊急事態条項」の加憲こそすべて、と言って過言でない。

これさえ通してしまえば、あとは何も要らない。

極端に言えばそういうことだ。

なぜか。

それは、この98条、99条が、

「オールマイティ」

の効力を付与するものであるからだ。

トランプの「ジョーカー」である。


要約するとこうなる。

1.内閣総理大臣は、特に必要があると認めるときは、緊急事態の宣言を発することができる。

2.緊急事態の宣言は、事後に国会の承認を得ればよい。

3.緊急事態を宣言すると、
 内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができ、
 内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行うことができ、
 地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。

4.緊急事態を宣言すると、何人も国その他公の機関の指示に従わなければならない。
 この場合、日本国憲法第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、
「尊重」するだけでよい。

5.緊急事態を宣言すると、
 宣言が効力を有する期間は衆議院は解散されず、
 両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。


つまり、内閣総理大臣が緊急事態を宣言すると、

内閣が勝手に法律を制定でき、

財政を勝手に運営でき、

基本的人権を制限でき、

議会選挙を行わずに内閣を永遠に存続できる

ということになる。

つまり、完全に憲法を停止した状態に移行し、内閣が全権を掌握するという事態が生じるのである。

安倍首相は、

「自民党改憲案どおりに改憲が行われるとは限らない」

と言うが、国民投票は投票総数の過半数で改憲承認と解釈されることになる。

投票率が5割なら、主権者全体の4分の1以上の賛成で憲法改定が決定されてしまう。

ナチスドイツの暴走を生んだ契機と言われる「全権委任法」が再現されることになる。


改憲勢力3分の2確保といえども、公明党が動かなければ改憲は前に進まない。

しかし、その公明党が、悪魔の「緊急事態条項」に積極姿勢を明示したことで、

事態は重大な新局面を迎えたと言ってよい。

改憲問題の核心は緊急事態条項にある。

この点を明確にしたうえで、緊急事態条項加憲絶対阻止を明確に確認しなければならない。

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