★国民の9割が、天皇の生前退位を支持。
では安倍首相は首相在任中実施するか。多分しないと思う。
有識者会会議に反対・慎重者入れて決定を先送り。何故?
安倍氏は支持基盤の日本会議や読売グループに対峙すること出来ないのでないか。ー(孫崎享氏)

天皇の意向を尊重し、生前退位を実施しようとすれば、むつかしいことではない。

様々な法律でも、多くの問題を抱えている際には合意できる部分で法改正をする、

それは歴代内閣がおこなってきたことである。

皇室典範だけそのようなことが出来ないという論は通らない。

例えば、法体系で上位にある憲法でも、安倍政権は、出来るところから改憲したいとしている。

何故、皇室典範になると包括的な改正をしなければならないとなるのか。

政策の方向性が定まらない時に、有識者懇談会を持つのはいい。

しかし、天皇の意向を尊重するという大方針のもと、出来るだけ早く実現するため、

条文を修正するということであれば、有識者懇談会なぞ不要で、官僚たちは簡単に法改正を準備できる。

何故安倍氏はそれを行わないか。

多分できない。

それは安倍氏を支えてきた基盤が生前退位に反対の姿勢を表明している。

1. 日本会議グループ

2. 読売新聞グループ

現在の安倍政権では自民党右派の影響力が強い。

それらは、なんらかの形で日本会議とつながっている。

さらに大きいのは、理由は不明であるが、読売新聞が生前退位に反対の社説を掲載した。

読売社説で、「(反対の)こうした点を国民に周知する必要がある」と指摘した。実はそれを実施している。

読売系の『中央公論』2016年9月号は表表紙で「天皇と皇室の将来」を掲げたが、

ここに掲載された原武史放送大学教授、河西秀哉神戸女学院准教授の対談、

さらに「天皇陛下は生前退位できるのか」のタイトルで慶応大学笠原英彦教授が、

生前退位に反対ないし慎重論を展開している。

有識者会議で、

(1) 日本会議グループ

(2) 読売新聞グループが参加しないということはありえない。

有識者会議というのは客観的な真実を探る機関ではない。

政権がもつ結論をもっともらしく見せるために人選して作るものである。

安倍首相は「慎重に検討する」、「有識者会議の見解を尊重したい」とすることで、

実質、生前退位をストップさせるとみられる。

それは多くの国民の望むことと逆であるが、今後、様々の詭弁、結論延期の策に出てくるとみられる。

1:経緯についての注目点

 今回、天皇の生前退位への動きは、政府側がこれを必死に抑える動きが見られた。

 振り返ってみよう。

・山本信一郎宮内庁次長は7月13日夜、報道各社の取材に応じ、

「そうした事実は一切ない。陛下は憲法上のお立場から、

皇室典範や皇室の制度に関する発言は差し控えてこられた」と否定した(7月14日時事)。

・深夜に取材に応じた同庁の風岡典之長官も、同様に報道内容を否定。

「(皇室の)制度については国会の判断にゆだねられている。

陛下がどうすべきだとおっしゃったことは一度もなく、あり得ない話だ」と述べた。(7月14日時事)。

天皇は結局NHKでビデオメッセージを発したが、上記の宮内庁長官、次長の対応はどういうことか。

まったく天皇の意向に逆らった発言を行っている。

安倍首相周辺の意向がなければ、天皇の意志に反することを官僚が出来るわけがない。

天皇と異なる発言をしたことに対して、山本信一郎宮内庁次長や風岡典之長官の責任を追及する動きもない。

不思議と思わないか。

この7月13日報道において、宮内庁管轄の社会部と、官邸の意向を踏まえて、

報道を止めようとする政治部の間でバトルがあったと伝えられた。

2:7月13日以降、産経新聞、朝日新聞に、生前退位に消極的コメントが掲載された。

日本会議副会長の小堀桂一郎氏は産経新聞で

「生前退位は国体の破壊に繋がる」との激烈な批判の言葉を発している。

「何よりも、天皇の生前御退位を可とする如き前例を今敢えて作る事は、

事実上の国体の破壊に繋がるのではないかとの危惧は深刻である。

全てを考慮した結果、この事態は摂政の冊立(さくりつ)を以て切り抜けるのが最善だ、との結論になる」
(産経新聞7月16日付)

 本会議理事でもある百地章・日本大学教授も朝日新聞にこう語っていた。

「明治の皇室典範をつくるときにこれまでの皇室のことを詳しく調べ、

生前退位のメリット、デメリットを熟考したうえで最終的に生前譲位の否定となった。

その判断は重い。生前譲位を否定した代わりに摂政の制度をより重要なものに位置づけた。

そうした明治以降の伝統を尊重すれば譲位ではなくて摂政をおくことが、

陛下のお気持ちも大切にするし、今考えられる一番いい方法ではないか」(朝日新聞7月14日付)

3:そして天皇のビデオメッセージが出された後、読売新聞は天皇発言と真逆なコメントをだした。

1:9日読売新聞社説抜粋

・今後、精力的な活動が困難になった場合、象徴天皇たり得なくなるのだろうか。

各種行事は、皇太子さまをはじめとする皇族方に委ねるなど、

陛下のご負担を今より軽減する方策も考えられよう。

天皇の健康状態が深刻化した際の過度な自粛による社会の停滞も懸念されたが、

国民がそれを控えることなどで対処できないか。

・生前退位には、様々な難問があることも否定できない。

自発的退位は、「国民の総意に基づく」という象徴天皇の位置付けと矛盾するとの意見がある。

高齢を理由とすると、一代限りの話では済まなくなることも考えられる。

・政治的思惑により、強制退位させられる恐れもあるとして、

生前退位を否定してきた政府の国会答弁との整合性の問題もある。

・こうした点を国民に周知する必要がある。安倍首相は「どのようなことが出来るのか、

しっかりと考えていかなければならない」とのコメントを発表した。

有識者会議などで議論を尽くしたい。

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