市村 悦延 · @hellotomhanks
9th Aug 2016 from TwitLonger
★巨大リスク背負わされる安倍政権私物化日銀ー(植草一秀氏)
財政法第5条の条文は以下のものである。
第五条 すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、
又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。
但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。
国債の日銀引受けは財政法によって禁止されている。
国債の日銀引受けが認められると、政府は無制限に財政を拡張できる。
財政の放漫化を招き、最終的に財政の破綻がもたらされ、国債の償還も不能になる。
中央銀行が過大な信用を供与すれば、激しいインフレを引き起こし、通貨価値が暴落する。
第2次大戦に際して政府は日銀引受けで国債を大量発行して軍費を調達し、
戦後、激しいインフレを引き起こして通貨価値を暴落させた。
この教訓から戦後に定められた財政法において、国債の日銀引受けが法律によって禁止された。
中央銀行による財政ファイナンスは禁止されている。
しかし、いま、日本では実質的な財政ファイナンスが実行されている。
2014年10月31日に日銀は、
1.マネタリーベースの年間増加額が年間約80兆円に拡大する
2.そのための長期国債買入ペースを国債の保有残高が年間約80兆円増加するようにする
3.ETFとREITの保有残高が、それぞ年間約3兆円、約900億円増加するペースで購入する
ことを決めた。
国の財政赤字、すなわち、国が発行する新規国債の発行額が40兆円を下回っているなかで、
日本銀行が年間80兆円を上回るペースで国債保有残高を増やしている。
財政赤字の2倍の資金供給を日本銀行が行っているのである。
日銀が保有する国債残高は2015年末で288兆円に達し、総資産は400兆円を突破している。
そのGDP比は80%を超えて、
大規模な量的緩和政策を実施してきたFRBの資産残高GDP比の3倍に達している。
このことは、二つの大きなリスクを内在している。
ひとつは、長期金利が何らかの要因で上昇する場合に、日銀資産の時価が暴落し、
巨大損失を計上することである。
いまひとつは、こうした過大な資金供給が将来の激しいインフレをもたらす
潜在的な原因になり得ることである。
2013年3月に黒田東彦氏が日銀総裁に起用されて以降、日銀は「異次元」の超金融緩和に突進してきた。
その背後には、この超金融緩和を推進する安倍政権が存在する。
1998年4月に施行された新・日本銀行法は、日銀の独立性を高める者であると期待されたものだが、
日銀総裁、副総裁、および審議委員の人事権を握る政府が恣意的な人事を強行すると、
日銀は完全に政治権力の支配下に置かれることになる。
米国の場合、FRB理事の任期は14年であり、大統領の2期8年でも、
FRB理事をすべて恣意的に揃えることはできない。
日本の場合、総裁、副総裁、審議委員の任期が5年であるため、
長期政権が登場し、その政権が恣意的な人事を強行すると、日本銀行は政治権力の
「機関銀行」
と化してしまう。
日本の中央銀行は、いま、歴史的な危機的局面に立たされている。
長く日本銀行金融研究所長を務め、日本銀行理事、衆議院議員の経歴を有する、
日本の金融経済論研究の第一線に立ち続けてきた鈴木淑夫氏が
『試練と挑戦の戦後金融経済史』(岩波書店)
https://goo.gl/B5Phne
を公刊された。
第Ⅰ部 発展期の日本経済と金融政策
第Ⅱ部 日本経済の挫折
第Ⅲ部 金融政策の新たな挑戦
の構成で、時系列で金融政策、金融経済史を総括的に記述、検証されている。
とりわけ、第Ⅲ部では、1999年以降の内外のゼロ金利政策、量的金融緩和政策、
マイナス金利政策を詳細に分析、検証している。
そして、今後の政策運営の方向についても提言を示されている。
夏休みは、こうした「硬派」の本格的な専門書をじっくりと読み解く恰好のチャンスでもある。
詳細について、ある程度の専門性を要求する箇所もあるかも知れないが、
現実の経済金融の歩みを正確なデータと正確な分析をちりばめて分かりやすく解説されている。
現実の金融経済変動を正確に読み抜いてゆくには、
こうした骨太の研究書をベースに置くことが必要不可欠である。
経済金融を深く洞察したい人にとっての必読の書であると思う。
第2次安倍政権が発足したのは2012年12月のことだ。
あれよあれよという間に、4年の年月が流れてしまう情勢だ。
前任の野田佳彦政権が悪すぎたことが、この政権を支える第一の要因になった。
野田政権は民主党の公約の柱の一つだった
「シロアリを退治しないで消費税を上げるのはおかしい」
を根本から踏みにじった。
そもそも、この公約を誰よりも大声で叫んでいたのが野田佳彦氏自身だったことが大きい。
2012年1月15日に野田佳彦氏の「シロアリ演説」を、『知られざる真実』ブログで紹介した。
「総理方針を全面批判する民主議員の極秘映像公開」
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/post-2540.html
ある方が教えてくれた、この貴重な映像をブログで紹介したところ、
あっという間に日本全土にこの情報が伝わった。
1月24日に召集された通常国会では、この野田シロアリ演説が繰り返し引用されるに至った。
その「シロアリ増税」を野田佳彦氏が強行した。
そのために、民主党政権は自己崩壊したのである。
野田佳彦氏は「自爆解散」を断行。
安倍晋三氏に、自ら進んで大政奉還したものと言える。
この野田佳彦政権は財務省の「財政再建最優先政策」を実行した。
主要国の株価が大暴騰するなかで、日本株価だけが超低迷を続けた。
東日本大震災があり、経済復興こそ最優先課題であるときに、
野田政権は「増税まっしぐら」路線を突き進んだ。
その順当な結果として、日本株価が下方にバブルを生み出した。
ここに登場したのが第2次安倍政権だった。
最悪の政権のあとに登場したことが安倍政権が浮上してしまう第一の要因になったのである。
安倍政権の発足と同時に、円安=株高が進行した。
円安進行の最大の要因は米国金利の上昇だった。
米国長期金利は2012年7月に最低値を記録。
これを転換点にして上昇に転じた。
これがドル高=円安の基本背景だった。
日本の金融市場では、2004年4月以降、円安=株高、円高=株安の連動関係が続いていた。
円安が進行して、これに連動するかたちで日本株高が進行した。
同時に、安倍政権は超緊縮路線を突き進んでいた野田政権の財政政策運営を抜本修正した。
13兆円の補正予算を編成して財政政策を超緊縮から積極に転換した。
安倍政権の経済政策で正しかったと言えるのがこの部分である。
この影響で円安=株高が急激に進行して、安倍政権が大きく浮上してしまったのである。
もうひとつ、見落とせない要因がある。
それは、日本のマスメディアが安倍政権を全面的に支援し続けていることである。
日本の支配者、米・官・業・政・電にとって、
小沢一郎氏と鳩山由紀夫氏が主導した政権交代実現は、文字通りの「悪夢」であった。
この、本当の意味での「改革政権」を破壊するために、
米官業政電の利権複合体は、
文字通り「目的のためには手段を選ばない」卑劣な対応を展開し続けた。
その重要な中核を担ったのが、日本の腐敗したマスメディアである。
決定打になったのが、2013年7月の参院選である。
この参院選で安倍政権与党が参議院過半数を占有して「衆参ねじれ」が破壊された。
安倍暴政を防ぐ、最後の砦が「衆参ねじれ」であったが、
「衆参ねじれ」が破壊されて以降、安倍暴政がいよいよ加速したのである。
安倍首相は、
NHK
日銀
裁判所
を総理大臣の人事権によって、次々に「私物化」し続けてきた。
その「私物化」を促進しているのが「衆参ねじれの破壊」なのだ。
安倍政権はいま、日銀をも完全に私物化しつつある。
日銀幹部人事は国会同意人事であるが、衆参ねじれが破壊されていると、
国会同意人事は無風となり、「私物化」人事を阻止する抑止力が消滅する。
現在の日銀総裁、副総裁は、2年間でインフレ率2%を公約に掲げ、
公約を実現しない場合には、辞職して責任を明らかにすることを示したが、
実際にはインフレ誘導は実現しなかった。
その一方で、日銀資産を巨大リスクに晒す、リスク満載の金融政策運営を強行して、
これを誰も止められない状況が生まれている。
中期的に日銀の無責任政策が大きな混乱をもたらすリスクは極めて大きい。
これらの諸リスクを改めて再整理しなければならない。