★民進党は「隠れ自公」と「反自公」に分離すべしー(植草一秀氏)

2016年の最大の政治決戦となった参院選では野党共闘の効果が強く発揮されたが、

安倍自公政権を大幅に後退させることができなかった。

7月31日に実施された東京都知事選では、与党サイドが候補者を2名擁立し、

都政奪還の千載一遇のチャンスを得たが、このチャンスを生かし切れなかった。

安倍政権はメディアに対する統制を一段と強め、

権力に迎合するメディアが大多数を占める現状の下で、

既得権勢力と対峙して権力を奪還することは容易でない。

しかし、下を向いては未来は開けない。

市民の力を糾合して、必ず日本政治刷新を実現しなければならない。

大きな敵に立ち向かうには

大同団結

が必要である。

「小異を残して大同につく」

対応がなければ、大きな敵を打ち倒すことはできない。

そして、その「大同団結」を生み出すには、

「正当なプロセス」

が必要である。

そして、「大同団結」の

「正当な理念」

が必要だ。


さまざまな人々、さまざまなグループが、さまざまな活動を展開している。

それぞれに、思いは強い。

しかし、多数のグループがばらばらに行動したのでは大きな力にはなり得ない。

政治を変えるには選挙に勝つことが必要である。

そして、その選挙に勝つには「戦術」が必要だ。

参議院の1人区、衆議院の小選挙区、東京都知事などの首長選に共通するのは、当選者が1人であることだ。

既得権勢力が候補者を1人に絞るなら、

対峙する勢力も候補者を1人に絞り込まなければ当選させることは難しい。

このときに大事なことは

「小異を残して大同につく」

ことだが、その「大同団結」を実現するには

「正当なプロセス」

が必要だ。

みんなが一つにまとまれるような「プロセス」が重要になる。

このために考えなければならないのは「時間」だ。

選挙が目の前に迫って、どたばたで候補者を決定しようとすれば、

「正当なプロセス」

を踏む時間を確保できない。

あらかじめ、時間的な余裕を持って対応する必要がある。


もうひとつ見落としてならないことは

「正当な理念」

である。

何を目指しての「大同団結」なのか。

「正当な理念」がなければ「単なる野合」に堕してしまう。

私たちは、いま、安倍政治の暴走に異を唱えている。

「安倍政治を許さない!」

という旗の下に集結している。

その「安倍政治」とは、

「戦争と弱肉強食」の追求であり、これに対するアンチテーゼとして

「平和と共生」

の旗を掲げている。

戦争推進、原発推進、TPP推進、米軍基地建設推進、消費税増税推進

の「安倍政治」にNO!を突き付ける。

平和主義堅持、原発稼働ゼロ、TPP不参加、米軍基地建設NO!、消費税増税中止

の政策路線を明示する。

この政策路線の下に「統一戦線」を構築する。

最大の焦点は衆議院総選挙だ。

衆議院の小選挙区の候補者一本化をいまから始動させる。

野党共闘の効果は、参議院選挙の12激戦区で立証済みである。

これをすべての小選挙区に広げれば、日本政治の一新は不可能ではない。

主権者が日本政治を取り戻すために、連帯して行動しなければならない。


安倍首相は年初来、衆参ダブル選を狙ってきたが、これを断念した。

4月に熊本地震が発生したことが大きな要因になった。

5月末の伊勢志摩サミットがあり、

6月1日の通常国会閉会後の記者会見で消費税再増税の再延期を発表した。

「再び延期することはない。はっきりとそう断言する」

とした消費税再増税を延期した。

政策失敗は明白なのだが、メディアが適正な論評をしない。

NHKなどは、消費税再増税再延期を評価する国民が多いという世論調査結果を発表して、安倍政権を支援する。

国民は消費税再増税の再延期をは当然だと考えているが、安倍首相の公約違反を評価しているわけではない。

二つのことを一つの質問にまとめるから、安倍首相の政策を評価しているかのような調査結果になるが、

別々に質問すれば、

公約違反は評価しないが、

消費税増税延期は当然だ

という回答になる。

権力迎合のNHKはこのような偏向報道を展開している。


ダブル選は、衆議院での議席減のリスクを重視した菅義偉官房長官の進言に安倍首相が従ったものだが、

安倍首相はラストチャンスを失ったと考えられる。

参院選で改憲勢力は参議院3分の2を確保したが、メディアの事前予想よりは獲得議席数は少なかった。

とりわけ重要なのが12の激戦区での野党共闘の勝利である。

この方式が衆議院小選挙区に拡張されると、次期衆議院総選挙情勢が激変する。

だから、安倍政権は7月10日の参院選結果に強い衝撃を受けている。

さらに、7月31日の都知事選で都政を喪失すれば、安倍政権の後退が一気に鮮明になるところであった。

都知事選では自公が推薦した増田寛也氏が惨敗した。

安倍政権は「敵対候補」だったはずの小池百合子氏に迎合する道を選択するだろう。

これで都知事選惨敗の現実を隠蔽することになるだろう。


安倍政権は都知事選直後の8月2日に経済対策を閣議決定し、8月3日に内閣改造を行う日程を設定した。

都知事選での敗北の影響を遮断するための方策である。

経済対策は見かけは大きいが、よく内容を見ると、上げ底満載のもので、経済を押し上げる力は限定的である。

自民党役員人事では谷垣禎一氏が自転車事故のために続投を固辞したため、

重鎮の二階俊博氏が就任することになった。

安倍首相は「ポスト安倍」の空気が醸成されないことを最重視していると見られる。

二階氏は安倍氏を脅かす可能性がないとの判断で起用されたが、

対中国政策などでは安倍氏のスタンスの対極に位置する人物である。

安倍氏としては、自民党総裁任期の延長を二階氏に託すということになる。

自民党総裁任期は2018年9月でこれまでの間に2期6年の制約を外さないと続投は不可能になる。

安倍氏が二階氏起用に踏み切ったのは、総裁任期延長を最優先するためであると見られる。


このことから、衆院解散総選挙の日程が大幅に先送りされる可能性が高まった。

景気対策が最終的に大型にならなかったことも、

16年末ないし17年初の総選挙の可能性を後退させるものである。

衆院任期は2018年12月であり、衆院解散総選挙の日程は2017年末または、2018年初まで、

大幅に先送りされる可能性が高まりつつある。

安倍首相は2020年の五輪を自分の手で行うとの野望を有していると見られるが、

そのためには、再度、衆院総選挙で勝利しなければならない。

2016年の衆参ダブルが消えたことで、政治決戦は小休止の状況に移行するが、

ここで手を休めてならないのは野党の側である。


民進党代表選が9月2日告示、15日投開票の日程で実施される。

参院選で民進党は獲得議席数25になるところ、野党共闘のおかげで33議席を確保した。

野党共闘なくして、この議席確保はあり得なかった。

しかし、その民進党で共産党を含む野党共闘に対する慎重論が唱えられている。

民進党は「水と油の混合物」で、「汚れた油」勢力は、自民党の別動隊である。

この自民党別働隊が、野党共闘の強化、反安倍政権大同団結の阻止を目的に行動している。


民進党が「汚れた油」勢力と「清冽な地下水」勢力に分離することが望ましいが、

これを実現するには、民進党代表選で自民別働隊が代表に選出されることが望ましいのかも知れない。

そのうえで、自公別働隊とは共に行動できない「清冽地下水」勢力が民進党から分離する。

この勢力と共生社が連携して、

共生社民連合を形成する。

民進の自民別働隊勢力は「とうきょう維新」などと名称を変えて、安倍自公サイドに移籍するべきだろう。

「安倍政治を許さない!」=反自公サイドの

「大同団結」

「大同団結の理念」

を確保し、

適正なプロセスを踏んで次の衆議院総選挙に備えるには、民進党の分離が必要不可欠である。

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