★都知事候補者で面白いのはやはり小池百合子と山口敏夫であるー(田中良紹氏)

東京都知事選挙が告示された。過去最多の21人が立候補することになったが、

焦点は自民、公明が推す元総務大臣の増田寛也氏と民進、共産、社民、生活の野党4党が推す

ジャーナリストの鳥越俊太郎氏との戦いで、

それに自民党衆議院議員を辞職し不退転の決意で挑むただ一人の女性候補小池百合子氏が

どこまで食い込めるかが注目である。

舛添要一前都知事が急に辞めたため突然の選挙であるから候補者たちはみな一様に準備不足である。

ただ一人出馬を断念した宇都宮健児氏だけはこれまで2度も立候補した経験から、

最も東京都の問題を勉強し政策を練り上げていたと言える。

ところが宇都宮氏は野党共闘のために不出馬を迫られ、

自らの政策を鳥越氏に託すことを条件に立候補を断念した。

しかし宇都宮氏の政策を鳥越氏がどこまで自分のものにするかはまだ分からない。

一方の増田氏は官僚出身で岩手県知事をやった経験があり地方自治の専門家だと言うが、

それと東京都知事の仕事とはレベルが違う。

国政との絡みは東京オリンピックがあることからも特別に密接なものとなる。

自公の支援で当選した猪瀬、舛添の両知事が短期間で失脚した例を考えれば

そこには密接以上のドロドロが待ち受けているかもしれないのだ。

そのことを小池氏は告示前日に日本記者クラブ主催の共同記者会見で増田氏とやりあった。

増田氏から「知事に就任したら都議会の冒頭解散となぜ乱暴なことを言うのか」と問われ、

小池氏は「猪瀬、舛添両氏がなぜ短期間で辞めざるを得なかったのか、

わかりにくいかもしれないがそういう問題がある」と答えた。

これをフーテンが解説すれば、自公から支援を受けて当選した都知事には実は何の権力もない。

自民党東京都連や公明党都議団、あるいは安倍政権や森喜朗東京五輪組織委会長によって

簡単に首を挿げ替えられる可能性がある。

従って都知事が自分の考えを貫くためには、都議会をいったん解散して自分を支える都議を多数選出し、

権力基盤を強化する必要があると小池氏は考えているのである。

ただ総理大臣と違って都知事には議会を解散する権限がなく、都議会から不信任されなければ解散はできない。

それでも小池氏は今のままの都議会がある限り東京都政は刷新されないと考えている。

そして自民党に後ろ足で砂をかけた舛添氏を自民党は除名したにもかかわらず、

東京都連と公明党は人気があるという理由だけで猪瀬氏の後任に担ぎ出した。

自民党所属議員である自分がなぜ自民党東京都連から推薦を貰えないか。

それを小池氏は増田氏に問い返した。

言外には、増田氏が自公の固い組織票に守られ東京都知事に当選しても、

それは操り人形になるだけの話で、

何かをやろうとすれば猪瀬、舛添両氏と同じ運命が待ち受けると言っているのである。

これは自民党東京都連と公明党都議団に対する強烈な挑戦状である。

一方で小池氏は「アベノミクス」を評価し、森喜朗東京五輪組織委会長に何も言及していないが、

しかし安倍政権にも森喜朗氏にも喧嘩を売っていることになる。

まるで「自民党をぶっ潰す!」と叫んで総理になった小泉純一郎元総理の再来を演じているのである。

これに対し自民党東京都連は自民党が決定した候補以外を応援した自民党議員は

除名処分の対象にするという文書を配布した。

しかも議員本人だけでなく親族が応援した場合も含まれることから、

メディアでは「自民党東京都連はまるで北朝鮮だ」との批判が上がっている。

すると金銭スキャンダルで失脚した猪瀬元東京都知事が「東京都のガン」として

内田茂東京都連幹事長を名指しで批判、

そのいじめによって2011年に現職の都議が自殺しているとの告発をツイッターで行った。

フーテンはかつて「猪瀬氏に作家やジャーナリストの精神があるならば、

都知事の職にしがみつかずに潔く辞任して、国民に政治の裏舞台を知らしめる役割を果たすべきだ」と

書いたことがある。

しかしその時、猪瀬氏は安倍政権や森喜朗氏らから失脚させられたにもかかわらず、

彼らを守る哀れなピエロの役を演じていた。

それがようやくここにきて「小池の乱」に呼応し東京都という「伏魔殿」の一端を明らかにし始めたのである。

これは小池氏の当選につながるかどうかを別にして誰かがやらなければならなかった都政刷新の動きであり、

東京オリンピックを利権のドロドロから救う行為でもある。

そして忘れてならないのがかつて「政界の牛若丸」と呼ばれた山口敏夫元労働大臣も

「利権のドロドロ」を告発するためにこの選挙に立候補していることだ。

そこでフーテンの願いは、小池氏と山口氏がタッグを組み自公に支配された東京都という「伏魔殿」、

さらには買収疑惑がささやかれる東京五輪組織委の「闇」を徹底追及してもらいたい。

自公対野党4党が表の戦いなら、「利権のドロドロ追及」は裏の戦いになるかもしれないが、

日本の将来にとってはそちらの方が間違いなく重要である。

フーテンにとって面白い候補者はやはり小池百合子氏と山口敏夫氏しかいない。

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