★GPIF3年分利益額が今年前半だけで吹き飛んだー(植草一秀氏)

参院選まで選挙活動を行えるのは今日と明日の2日間である。

主要メディアが選挙結果予想を流布しているが、前提に置かれているのは低投票率である。

また、電話調査を行って判明するのは固定電話を受ける偏った層の人々であるため、

有権者全体の調査になっていない。

偏った母集団を調査して、それを全有権者に当てはめて情報を流布するのは、

明らかな情報誘導、情報操作であり、選挙不正の一種である。

テレビの報道番組では選挙争点を掘り下げない。

選挙争点を語る出演者は偏っており、

政治権力のための情報誘導を生業としている「選挙ゴロ」のような者ばかりである。

選挙に対する関心をできるだけ高めないようにする。

野党連合を分裂させるための情報誘導を行う。

本当の選挙争点を主権者に伝えないようにする。

実体のない「アベノミクス」という架空の存在をはやし立てて、人々を幻惑に陥れる。

こうした「不正選挙」が繰り返されて、この国は危機に突入している。

この「危機」を打破するには、主権者が立ち上がり、行動するしかない。

「すべてを疑うこと」

そして、

「自分の目で見て、自分の頭で考えること」

これが必要だ。


メディアが流布している情報には落とし穴がある。

投票率が高まり、主権者が

「自分の目でものを見て、自分の頭で考える」

行動を取ることが想定されていない。

この行動が急激に広がると、事前の予想は根底から覆されることになる。

有権者の4分の1は安倍政権与党に投票する。

この固定データが推計の基礎に置かれている。

投票率が下がれば下がるほど、与党の獲得議席数は増える。

投票率が上がれば上がるほど、与党の獲得議席数が減る。

だから、1人でも多くの主権者に、真剣な行動を取ってもらうことが重要なのだ。

政治に無関心ではいられても、政治に無関係ではいられない。

その無関係でない政治が、私たちのいのちや暮らしを直撃してくる可能性が猛烈に高まっている。

そのことをすべての主権者に伝えて、

「自分たちのいのちと暮らしは自分たちで守る」

大切さを知らせなければならない。

戦争法を推進する人々は、

「自分たちの国は自分たちで守らなければならない」

と強調するが、まったく同じことで、

「自分たちのいのちと暮らしは自分たちで守らなければならない」のだ。


私たちの暮らしに直結するのはまずは経済だ。

その経済が、安倍政権でズタズタになっていることを私たちは知る必要があるし、

すべての人に伝える必要がある。

安倍政権下の経済成長率は、あまりパッとしなかった、あの民主党政権時代の3分の1程度なのだ。

あのパッとしない時代の3分の1に留まっているのだ。

2015年度の労働者の実質賃金指数は2012年度に比べて4.3%の低い。

年収が200万円だったら、8万6000円も所得が減っていることになる。

アベノミクスで良くなったのは大企業の利益だけだ。

株価が上がったと言うが、東証1部の上場企業数など、全企業数の0.05%にも届かない。

この0.05%の大企業の利益は史上最高に拡大する一方、

経済全体伸びは民主党時代の3分の1に縮小しているのだから、普通の労働者の取り分は大幅に減っている。

失業率が下がったとか、有効求人倍率が上がったと言うが、

大きく減った労働者の取り分を分け合う人数が増えただけで、生活はますます困窮化しているのだ。


おまけに安倍政権は、国民の老後の生活を支える年金資金を株と外貨に注ぎ込んで、いま大損している。

年金資金の株価の損失と、外貨建て資産の為替損失だけで、

2016年前半に16兆円の損を生み出した可能性がある。

政府は参院選があるから、発表を選挙の後に先送りした。

隠蔽以外の何者でもない。

これだけではない。

政府は日銀から借金して米国国債を買いまくってきた。

いま、1兆2500億ドルの外貨準備を持っている。

ドル高になったのだから全部売り払えばいいのに、

1ドルも売らずに、そうこうしているうちに円高に戻ってしまい、

2016年前半だけで21兆円の為替損失が生まれている。

両方合わせて37兆円だ。

株価上昇と金利低下で年金資金の時価総額が2012年度から2014年度に37兆円増えたと

安倍政権は強調するが、そのプラスを、わずか半年で全部吹き飛ばした計算になる。

こんなアベノミクスを加速したら、一億総心中になる。

だから、必ず選挙に行ってよく考えて投票しなければならない。


安倍首相は2016年になって実質所得の前年比がプラスになったと自画自賛している。

しかし、その理由はどこにあるのか。

答えは明白だ。

インフレ率がマイナスに回帰したから実質賃金の伸びがプラスになっただけなのだ。

インフレ率は消費者物価指数の上昇率で測る。

4月の全国消費者物価上昇率は前年同月比-0.3%。

5月の全国消費者物価上昇率は前年同月比-0・4%。

堂々の

「デフレへの回帰」

である。

物価が下落に転じた。

その結果、賃金は増えていないが、実質伸び率で見ると小幅プラスになった。

それだけのことだ。

今日、7月8日に発表された5月の毎月勤労統計データを見ると、

5月の実質賃金指数は前年同月比+0.2%だ。

5月のインフレ率が-0.4%で、実質賃金の伸び率が+0.2%ということは、

名目賃金は-0.2%だったが、物価がー0.4%だったから、実質+0.2%になったということだ。


ここで、アベノミクスの看板をよく思い出して欲しい。

安倍政権は3本の矢と言っていた。

そのうち、2本目の矢が「財政出動」だったが、これは2014年度の消費税増税から真逆に飛んで行った。

放った矢が、私たちの方を目がけて飛んできて、私たちの暮らしが撃ち殺されてしまった。

その後の2015年度も、2016年度も、超緊縮の財政運営が続いている。

「財政出動」は大ウソだった。


安倍政権は3本目の矢を「成長戦略」と呼んだが、その内容は、

「弱肉強食の推進」

そのものだった。

派遣労働法を改定して、生涯派遣労働の道を一気に拡大した。

企業は労働コストを節約できるから大歓迎だが、

労働者には所得の低迷と身分の不安定化だけがもたらされる。

安倍政権は「自助、共助、公助」などと言うが、

突き詰めれば、「自助、共助」で「公助」を減らすというだけのことだ。

これらがみんな、「成長戦略」と呼ばれるものなのだ。

「弱者切り捨て」を聞こえが良いように表現したものが「成長戦略」である。

「成長戦略」が庶民の暮らしを傷つけることは間違いのない現実だ。


そして、第1の矢として掲げられた「金融緩和」は何を目指したものだったのか。

そう、「インフレ誘導」だ。

インフレ率を2年間で2%まで引き上げることが公約された。

2013年春に日銀幹部が入れ替えられたが、この人事の目玉が

「インフレ誘導」

だった。

副総裁に就任した岩田規久男氏は、

「2年間で公約を実現できない場合には、辞任するのが正しい責任の取り方」

堕と国会答弁で明言した。

しかし、「インフレ誘導」はできなかった。


この結果、2016年になって、ようやく実質賃金の伸びがプラスに転じたのである。

インフレ率が小幅上昇していたときは、実質賃金が大幅マイナスを続けていた。

それが、インフレがデフレに回帰して、いま、実質賃金が小幅プラスに転じたのだ。

そのことを安倍首相が自慢している。

明らかにおかしい。

「インフレ誘導は失敗した」

「インフレ誘導は間違った政策だった」

「インフレ誘導に失敗してデフレに回帰した」

「そのおかげで実質賃金の伸び率がプラスに転じた」

「国民のみなさま、政策失敗でご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」

と謝罪するのが正しい政治行動であろう。


円安・株高の宴は昨年6月で終わった。

それにもかかわらず、国民の年金を株と外国証券に65%も注ぎ込んでいる。

だから、2016年前半だけで、株価下落と為替損失だけで16兆円もの損失が発生しているのだ。

メディアはまったく報じないが、GPIF全体とほぼ同じ規模の外国証券を政府は保有している。

その資金は全額、日銀から借り入れたものだ。

ドル高のときに、ドル資産は全部売り払うべきだ。

何度も提言してきた。

しかし、1ドルも売らず、そのために、2016年前半だけで21兆円の損失を生み出している。

この問題を取り上げないメディアは腐り切っている。


とにかく、安倍政権の経済政策運営はマイナス100点なのだ。

そのツケはすべて国民に回される。

政府が損失を出せば、そのすべてが国民に押し付けられる。

GPIFと政府保有外貨資産は、国民のいのちと暮らしに直結する爆弾、火薬庫そのものだ。

こんな杜撰の運用をされたのでは本当に一億総心中になってしまう。

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