★「利権のドロドロ追及」が選挙のテーマになれば東京都政は刷新されるー(田中良紹氏)

山口敏夫元労働大臣が東京都知事選挙に参戦を表明した。

森喜朗東京五輪組織委会長を辞めさせるための立候補である。

かつて「政界の牛若丸」と呼ばれ、田中角栄、中曽根康弘、金丸信など稀代の政治家を相手に

変幻自在の動きを見せた人物の参入にフーテンはいささかの感慨を覚える。

一方で小池百合子元防衛大臣は自民党の推薦なしで立候補することを表明し、

都議会の解散、オリンピックを含む利権の追及、舛添問題の徹底検証などを公約に掲げた。

両者に共通するのはオリンピック利権の追及である。

ターゲットは森喜朗東京五輪組織委会長ということになる。

東京都知事選挙は自公推薦候補が二代続けて「政治とカネ」で辞任に追い込まれたことから、

当初は野党が誰を候補者にするかに注目が集まった。

ところが小池氏が突然立候補を表明したことで様相は一変する。

自民党が分裂選挙になれば自公対野党の構図は崩れ、

そこに山口敏夫氏が参戦して選挙活動を行えば「利権の追及」がキーワードに浮上する可能性がある。

そうなれば森喜朗氏が推す候補には「利権派」のレッテルが貼られるかもしれない。

山口敏夫氏は1967年に26歳に若さで衆議院議員に当選し、自民党三木派に所属していたが、

76年のロッキード事件を契機に自民党を離党し河野洋平氏らと新自由クラブを結成した。

新自由クラブは一時は国民の人気を集めたがその後は党勢が低迷し、

83年に中曽根政権と連立を組み翌年山口氏は労働大臣に就任する。

その後新自由クラブは解散して山口氏は河野氏ともども自民党に復党した。

フーテンの印象に残っているのは85年1月2日、田中角栄邸の新年会での出来事である。

山口氏は当時労働大臣で竹下登大蔵大臣と連れ立って角栄邸に現れた。

当時の角栄氏はロッキード事件の無罪を勝ち取るまで派閥を誰にも譲る気はなく、

後継を狙う竹下氏との間には微妙な空気が流れていた。

一方、新自由クラブ所属でありなが自民党の実力者と物おじせずに交流し、

直言することで知られていた山口氏は、安倍晋太郎氏を総理にすると公言していた。

大広間が満員になったところで田中角栄氏が新年の挨拶をするとすぐに山口氏が

「宮中の新年祝賀の儀に竹下さんと安倍さんが並んでいるのを見て私が詠んだ歌。

<次狙う大臣(おとど)二人の揃い踏み>」と発言する。

すると間髪を入れずに竹下氏が「言った途端に後回し」と声をあげ、

満員の大広間が一瞬凍りついた。

これが後に角栄氏を激怒させることになる創政会結成直前の出来事である。

当時「闇将軍」と恐れられていた角栄氏の前でこれほどはっきりものを言う政治家は

山口氏をおいて他にはいなかった。

90年にフーテンがアメリカの政治専門チャンネルの放映権を取得して

ワシントンDCに事務所を構えたと同時期に山口氏もワシントンDCに事務所を作り

ワシントン情報を収集していた。

官僚の情報だけで動く政治家が多い中、山口氏は稀有な存在であった。

93年には宮沢内閣不信任案に賛成票を投じて自民党を離党し無所属となるが、

細川護熙氏が政権を投げ出した後は小沢一郎氏に協力して渡辺美智雄氏を担ごうとした。

自民党が村山総理を担いで復権した後は新進党に入党したが、

95年に信用組合の不正融資に絡んで逮捕され実刑判決を受けて政界を引退していた。

その山口氏は昨年末、「2020年オリンピック、パラリンピックが危ない!」と題する文書を

全議員に配布し、森喜朗氏の組織委員会会長辞任を要求している。

森氏にはオリンピックを開催し運営する能力がないというのがその理由である。

今回の都知事選出馬はその延長線上にある。

一方、6日の会見で小池氏が問題にしたのは「なぜ2代続けて知事が短期間で替わってきたか」

ということである。猪瀬氏も舛添氏も無能ではなかったはずなのに辞任に追い込まれた。

「それは誰かにとって都合が悪い、もしくは不都合なときに捨てられるということが続いてきたように思う」

と小池氏は指摘した。

その見方はこれまでフーテンがブログで書いてきたことと同じである。

オリンピック招致を勝ち取った時点で猪瀬氏は「邪魔」になった。

誰にとってかと言えば森氏と安倍総理にとってである。

森氏は自分がオリンピック組織委会長になるために招致の手柄を猪瀬氏に取られてはならなかった。

安倍総理も同様でオリンピックを自分が招致したと思い込んでいるから、

そしてオリンピックまでの総理続投を望んでいるがゆえに、

二人とも言い出しっぺの石原慎太郎氏とそのあとを受けた猪瀬直樹氏の抹殺を共通の利害としたのである。

二人に共通する弱点が徳洲会マネーであることから事件が仕組まれ、

東京地検特捜部によって猪瀬氏は失脚させられ、石原氏もオリンピックに口出しできる立場ではなくなった。

また舛添氏に関してもあれだけテレビが騒いだ背景には仕組んだ勢力がいる。

そういうあたりがフランス司法省が捜査に入ったオリンピック買収疑惑の背景になっている。

フランス司法省の捜査がどうなるかは知らないが、

その買収疑惑の中心人物と言われる広告代理店関係の人物は、山口氏が親交を深め、

逮捕されるきっかけとなった故高橋治則イ・アイ・イ・インターナショナル社長の実兄である。

そしてこの兄弟は安倍総理とも親しかったという。

そういうドロドロが「2020オリンピック」の背景にはあるが、

それが都知事選挙の中でどこまであぶりだされるか、フーテンはそこに関心がある。

学者や評論家はすぐに「都政のための政策」というが、

16万人の官僚に支えられた東京都の行政は誰がやってもどうということはない。

むしろ小池氏のいうようになぜ短期間に二人の知事が辞めなければならなくなったのか

その真相があぶりだされる方がよほど都政の刷新になる。

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