★参院選 全員参加で アベグジットー(植草一秀氏)

参院選まで残すところ1週間。

安倍政権の基本戦略は

1.投票率をできるだけ引き下げる

2.与党勝利予想を流布する

3.アベノミクスを宣伝する

4.共産党を含む野党共闘を攻撃する

5.重要争点を隠す

である。

予想どおり、今回も権力は麻薬事件を表面化させた。

ワイドショージャックが目的である。

政府とつながるメディアは、暗黙の了解どおり、麻薬事件に多くの時間を割く。

こうしたなかで、バングラディシュのダッカでテロが発生。

邦人7名が犠牲になった。

首相官邸近くには首相か官房長官が常駐することが危機管理の鉄則だが、

選挙遊説のために両名とも不在だった。

菅義偉官房長官に至っては、問題が発生しているにもかかわらず、

新潟に遊説に出かけ、現地警察部隊が現場への突入をしたことが伝えられても官邸に戻ろうとせず、

そのまま遊説に出かけた。

2001年2月に、愛媛県立宇和島水産高等学校の練習船だった

えひめ丸に浮上してきたアメリカ海軍の原子力潜水艦グリーンビルが衝突して沈没させた事故が

伝えられたとき、ゴルフのプレー中だった森喜朗首相(当時)が、そのままゴルフ場に留まり、

その後引責辞任に追い込まれた。


菅氏の行動はこれに匹敵するものである。

2014年8月に邦人である湯川遥菜さんがイスラム国によって拘束された直後、

安倍首相は9月下旬、ニューヨークで有志国連合によるイスラム国空爆と、

空爆によるイスラム国壊滅を支持する発言を示した。

安倍首相はイラクのマスーム大統領と会談において次のように発言した。

「日本は,イラク政府も含む国際社会のISILに対する闘いを支持しており,

ISILが弱体化され壊滅されることにつながることを期待する」

また、9月24日にはエジプトのシシ大統領と会談した際に、

米軍による過激派「イスラム国」掃討を目的としたシリア領内での空爆について

「国際秩序全体の脅威であるイスラム国が弱体化し、壊滅につながることを期待する」

と述べた。

その後、2014年10月25日ごろに、邦人ジャーナリストの後藤健二さんがイスラム国に拘束された。

2014年12月14日には衆議院総選挙が実施されたが、安倍政権は人質事件の表面化を避けて選挙を戦った。

選挙後は、人質事件が継続し、邦人が生命の危険に晒されているなかで、

安倍首相は年末年始の休暇を、高級ホテルでの会食、コンサート鑑賞、ゴルフ三昧で過ごしたのである。

そして、1月にフランスで大規模なテロが発生するなかで安倍首相は中東を訪問して、

1月17日、エジプトでの「日エジプト経済合同委員会」で次のように述べた。

「地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します」

この直後にイスラム国が邦人2名の人質に対する身代金要求などの声明を発表したのである。


湯川遥菜さんと後藤健二さんはイスラム国によって殺害されたとされているが、

イスラム国は日本政府に対して、宣戦布告とも言えるメッセージを発した。

「日本政府よ。

邪悪な有志連合を構成する愚かな同盟諸国のように、お前たちはまだ、我々がアラーの加護により、

権威と力を持ったカリフ国家であることを理解していない。軍すべてがお前たちの血に飢えている。

安倍よ、勝ち目のない戦争に参加するという無謀な決断によって、

このナイフは健二だけを殺害するのではなく、お前の国民はどこにいたとしても、殺されることになる」

日本が集団的自衛権行使を容認したことから、

イスラム国はイスラム国に対する空爆を主導する米国と日本を同一視するようになった。

日本は明らかにテロの標的にされ始めている。

今回のダッカのテロ事件で犠牲になった邦人はJICA(独立行政法人国際協力機構)の関係者である。

実は、後藤健二さんの妻が東大卒のエリートでJICAの職員であると伝えられている。

今回のテロの被害者に、たまたまJICAの関係者が含まれていたのではなく、

今回のテロがJICA関係者を狙い撃ちにした事案であるとの可能性も浮上する。

集団的自衛権行使容認の論議のなかで、日本の集団的事件行使容認が

イスラム国などのテロへの抑止力にならず、逆に日本がテロの標的にされるリスクを高めるとの指摘があった。

軍事大国のアメリカがテロの標的になっている。

日本もテロの標的になるリスクを高めるのが集団的自衛権行使容認であるとの指摘は

正鵠を射ている面がある。

今回の事案における菅義偉官房長官の対応を見ても、安倍政権が選挙優先で、

国民の生命や安全を軽視していると言われても反論できないだろう。


安倍政権はメディアを総動員して参院選に向けての卑劣な情報操作を展開していると見られる。

典型事例がNHKによる消費税増税延期の表明に関する世論調査だ。

NHKは6月に実施した世論調査結果として、

安倍総理が、来年4月の消費税率10%への引き上げを2年半、再び延期する考えを表明したことについて、

「評価する」が  58% 
「評価しない」が 36%

と報道した。

ロイター社のウェブ上のオンライン調査では、

「増税延期、首相の理由説明は」

に対する回答として

まったく納得できない が 46.6%

あまり納得できない が  20.41%

両者合計は67.01%(7月3日現在)である。

また、同じロイター調査は、

「アベノミクス、あなたの採点は」

という設問への回答として、

30点未満が   46.02%

30-40点台が 17.97%

両者合計63.99%(7月3日現在)を公表している。

http://jp.reuters.com/news/politics


増税延期は当然だが、安倍首相が2014年に「再延期はしないと断言」したのに、

今回、謝罪もなく「新しい判断」だと強弁して増税再延期を打ち出したことを主権者は批判している。

NHK報道は「安倍首相の増税延期提案」を主権者が支持しているとの、

事実ではない情報を流布するものである。

「アベノミクス」

を争点にするなら、

「アベノミクス」

の実績を正確に表示することが不可欠だ。

最重要の指標は実質経済成長率で、

安倍政権平均値 +0.7%

民主党政権平均値 +2.0%

が正真正銘の事実である。

アベノミクス失敗は明白である。


「失業率が低下した」

「有効求人倍率が上昇した」

ことを安倍政権は「成果」だと主張するが、

非正規労働が増えただけで、正規労働は減っている。

労働者の実質賃金は減少し続けている。

大企業の利益だけが膨らんだのであり、

一般国民は小さくなったパイをより多くの人数で分け合う窮乏生活を強いられている。


JICA=独立行政法人国際協力機構

は外務省所管の独立行政法人である。

外務省は米国の命令に従い、辺野古米軍基地建設、日本の集団的自衛権行使容認を推進してきた。

外務省出身の岡本行夫氏、元東大教授の北岡伸一氏が安保法制強行制定の陰の主役である。

イスラム国がJICAを標的にしてテロを実行した疑いは十分に考えられる。

日本は戦争ではない方法による紛争解決、紛争処理を目指す憲法を持つ、世界唯一の国家である。

その日本が憲法を改定せず、平和憲法を有したまま、米国が創作する戦争に積極加担する国になる。

その結果として、日本は本来無縁のテロ=戦争に巻き込まれることになるのである。

参院選を目前に控えて、安倍政権はメディアに対して、

ダッカ事件での政権批判を封殺する圧力を強めていると思われる。

しかし、少なくとも、菅官房長官の行動は厳しく指弾される必要がある。

アベノミクスによって庶民の生活が破壊されぬよう、

そして、戦争推進の安倍政権政策によって、日本国民が無用の戦争被害者にされぬよう、

安倍政権を参院選で何としても後退させなければならない。

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