★アベノミクス 破綻は明白 アベグジットー(植草一秀氏)

安倍政権は老後の生活を支える国民の財産である

公的年金資金=GPIFの資金運用配分比率を変更する運用方針を2014年10月31日に大きく変更した。

年金資産の資金運用の資産別配分比率を大幅に変更したのである。

従来の資金配分比率である

国内債券60%、国内株式12%、外国債券11%、外国株式12%



国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%

の新しい資金配分比率に変更した。

国内株式の運用比率が12%から25%へと2倍強に引き上げられた。

外国証券の運用比率も23%から40%へと大幅に引き上げられた。

2015年12月末のGPIF運用資産残高は139兆8249億円、

この時点での日本配分比率23.35%を基準にすると、

日本株式残高は2015年12月末で32兆6491億円だった。

民進党の玉木雄一郎議員が仮定計算しているように、

昨年12月末の株価水準はTOPIXで1547.3。

6月27日のTOPIXは1225.76で、

日本株式が20.8%下落した。

この下落率を当てはめると、日本株式残高は25兆8664億円に減少していることになり、

日本株式だけで、年初来、6兆7847億円の損失が生じたことになる。


日経平均株価は2012年11月14日に8664円の水準だった。

2014年10月31日の終値は16413円だった。

つまり、安倍政権は政権発足直前の水準から2年で、

株価が約2倍の水準に暴騰した局面で、日本株式での運用比率を2倍に引き上げたのである。

8664円の水準だった2012年11月に日本株式の運用比率を2倍に引き上げて、

株価が2倍になった2014年10月末に元の比率に戻したと言うなら適正だが、その逆をやった。

ところが、株価は2015年6月をピークに下落トレンドに転換した。

円安・株高の流れが円高・株安の流れに転じたのだ。

その結果、年金資産の損失が急拡大している。

また、外国証券の比率が40%に引き上げられているから、

円安の局面では利益が生まれるが、円高の局面では損失が拡大する。

円高・株安のトレンドが生じるなかで、日本株式、外国証券偏重の資産配分は、

国民に甚大な損害を与えており、その責任が問われるのは当然のことだ。

安倍政権は年金資金運用で巨大な損失を発生させているから、

そのデータを参院選前に公表することを避けて、参院選後に公表期日を先送りした。

目的のためにはいかなる卑劣な手段でも用いるという、おぞましい姿だ。

野党関係者の発言については、マスメディアを総動員して総攻撃するくせに、

自分の不正については一切の報道、論評を許さない。

文字通り、日本は暗黒国家への道を転げ落ちている。


しかし、政府が隠している巨大損失は年金資産の日本株投資での損失だけでない。

140兆円の資産残高のうち、外国証券での運用比率が40%だとすると、その残高は56兆円である。

年初の1ドル=120円が1ドル=100円になれば、為替変動で17%の損失が生じる。

仮にこの変動率で計算すれば、ドル安で9.5兆円の損失が生まれたことになる。

株式と合わせれば、何と16兆円の損失になる。

そして、さらに驚くべきことがある。

日本政府は日銀から借金をして1兆2540億ドルの外貨資産等を保有している。外貨準備というものだ。

このうち、1兆693億ドルが外貨証券である。

圧倒的に多いのが米国国債だ。

これを1ドル=120円から1ドル=100円へのレート変化で換算すると、

円評価額は128兆円から107兆円への減少していることになる。

半年足らずで、21兆円もの損失が生まれていることになる。

この損失は、すべて、日本の国民が負担することになる。

年金の損失と合わせると、なんと半年で37兆円もの巨大損失が生まれていることになる。

私は、昨年4月21日付のブログ記事

「安倍政権は政府保有米国債売却を決断せよ」

http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/post-c62c.html

で、政府保有の米国国債売却を強く提唱した。

早晩、為替レート変動が円高に回帰する可能性が高く、

為替損失を全額回収できるチャンスを放棄するべきでないことを強く訴えた。

しかし、安倍政権は無為無策で、いまの円高で20兆円を超える損失を計上している。

半年で37兆円もの巨額損失を生み出していると見られる安倍政権には、

直ちに退場してもらわないと、国民の老後の生活は破綻し、若い人に明るい未来は絶対に来ない。


安倍政権の経済政策をアベノミクスと呼ぶなら、アベノミクスは完全に破綻している。

経済政策を評価する第一の基準は経済成長率だ。

安倍政権下の経済成長率の平均値は0.7%。

あの、あまりパッとしなかった民主党政権の時代の成長率平均値が2.0%だ。

これが基本の基本。

この数字を出さずに、こまごまとした数字を出しても駄目だ。

日本経済は、安倍政権の下で、著しく停滞しているというのが客観的事実なのだ。


「成長と分配」

という尺度で言うと、

「成長」はいま述べたように「最悪」である。

「分配」はどうかというと、

大資本の分配だけが突出して拡大し、労働の分配が著しく低下した。

労働者の実質賃金は3年連続で減少。

正社員は2012年から2015年10-12月期までに23万人も減少した。

安倍政権は

大企業の企業収益が増えて、株価が上がり、有効求人倍率が上がった

ことを

アベノミクス成功の具体的成果

だとするが、

雇用が改善したと言っても、増えたのは非正規労働者ばかりである。

「成長」が最悪で、経済のパイは大きくならなかった。

しかし、大企業収益という「分配」だけが突出して拡大したから、

労働者の「分配」は減少し、その減少した「分配」を分け合う人数だけが増えた。

これが「アベノミクス」がもたらしたもので、

結局、「格差」と「貧困」を広げただけである。


その一方で、株価が2倍に上昇してから、年金資産の運用において、

株式への資金配分を2倍に拡大し、外国証券への資金配分を23%から40%に引き上げた。

円安・株高は循環変動の一局面だから、これが円高・株安に転じることは当然のことである。

その局面で、日本株式と外国証券に過大にシフトした資産運用を行えば、損失が拡大することは確実だ。

民間の運用会社が運用で損失を出したら、巨大な大事件になるのに、

政府が半年で37兆円もの損失を出して、メディアが騒がないのは、

この国に情報民主主義が存在しないことの証左である。

アベノミクスは

経済の没落

労働者の没落

雇用の不安定化

貧困の深刻化



国民資産の巨大損失



1%の大資本の利益拡大

だけをもたらしている。


「アベノミクス」を選挙争点にするのは構わないが、

国民が正しく「アベノミクス」を評価できるよう、

「アベノミクス」の実績を中立、公正の立場から提示する必要がある。

経済データの核心部分は隠して、政権に都合の良い部分だけを見せるというのは、詐欺としか言いようがない。

「アベノミクス」を正しく評価すれば、

「アベノミクス」が破綻していることは、誰の目にも明らかである。

その安倍政権が存続すれば、国民は不幸になるばかりだ。

安倍政権の退場

Abe Exit

「アベノミクス 破綻は明白 アベグジット」

を正しく伝播してゆく必要がある。

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