★英国EU離脱決定で安倍政権経済環境急変ー(植草一秀氏)

英国の主権者がEU離脱を決断した。

僅差での決定であるが、民主主義のルールは討論の末に多数決で決定するというものである。

僅差でも決定は決定である。

参院選でも、僅差になる選挙区が多数出現する。

このときの一票の重みは計り知れない。

必ず選挙に行って投票しなければならない。

英国のEU離脱は、

「グローバリズムの退潮の始まり」

を意味する。

「グローバリズム」

とは、

強欲巨大資本が世界市場から収奪し尽くすためのスローガン

である。

「グローバリズム」

によって利益を得るのは強欲巨大資本であって、

市民は被害者になる。

「商品を安価に入手できる」

ことで市民は騙されてしまいやすいが、

「商品を安く入手できる」

背後に、資本による市民=労働者からの収奪=搾取がある。

「商品を安く入手できる」市民自身が搾取の対象になることを忘れてはならない。


英国のEU離脱を決定したのは英国の主権者である。

この問題の論議に際して、残留を主張していた中心は

資本家

である。

資本の利益を追求する者がEU残留を求めた。

しかし、英国の主権者はEUからの離脱を求めた。

EU離脱を求める理由として

「移民の増加」

が例示され、

「移民の増加を嫌うEU離脱派は外国人排斥派である」

とのレッテル貼りが横行した。

これは、グローバリズムを推進する強欲巨大資本による情報操作である。

EU離脱の根本精神には、

「自国のことは自国の主権者が決める」

という民族自決の原則の尊重がある。

第2次大戦後に世界中で広がった国家の独立は、

「自国のことは自国の主権者が決める」

というものだった。

この考え方が、正当に、そして当然の主張として、表面化しているに過ぎない。

EU離脱派が「他国人排斥者」であると決めつけるのはあまりにも短絡的である。


安倍政権が国民を欺いて参加しようとしているTPPは、

「日本のことを日本の主権者が決められなくなる条約」

である。

TPPがもたらすものは、

「日本のことを強欲巨大資本=多国籍企業が決める」

という多国籍企業主権体制

である。

日本の主権者が賢明であるなら、

こんな国家主権、国民主権を放棄する条約に加入するなどという選択はあり得ない。

欧州ではこれから、ギリシャのユーロ離脱、南欧諸国のユーロ離脱などの動きが活発化するだろう。

デンマークやオランダでも、自国の独立を重視する主張が勢いを増すことになる。

英国のEU離脱は、多国籍企業=強欲巨大資本による政界制覇戦略に対する、

主権者の反攻の開始を意味する極めて意義深い決定である。


世界は大資本のために存在しているのではない。

世界は、世界に生きる、それぞれの地域の、それぞれの人々のために存在する。

それぞれの地域の人々が、それぞれの地域のことを、自分たちで決めようとするのは当然のことだ。

多国籍企業が世界を支配する正当性など、どこにも存在しない。

独立国同士が話し合って、契約、条約を決めることはあるだろうし、肯定もされる。

しかし、独立国が主権を放棄して巨大資本の支配下に入ることほど、馬鹿げたことはない。

しかし、馬鹿げた政府が存在すると、それぞれの国の主権者に害を与える、

馬鹿げた条約に加盟してしまうことが起こり得る。


安倍政権は2012年12月の選挙で、

「TPP断固反対」

のポスターを貼り巡らせて戦った。

それにもかかわらず、選挙から3ヵ月も経たない2013年3月15日に

TPP交渉参加を勝手に決めて、2016年2月には最終文書に署名してしまった。

このような売国行為を主権者は許してはならないのである。


6月16日付ブログ記事

「日本だけはリーマンショック時に似た危機にある」

http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2016/06/post-f8a2.html

に記述したように、

日本だけは、リーマンショック時と類似した状況にある。

サミット参加の主要国はリーマンショック時と類似した状況にないが、

日本だけはリーマンショック時に似ているのだ。

円高=株安の流れのさなかに置かれている。

安倍政権は

「インフレ誘導」

の看板を掲げて、2年間でインフレ誘導の公約を実現すると言ったが、

3年半たったいまの状況は、

「完全なるデフレへの逆戻り」

である。


その日銀が、ついに6月16日の金融政策決定会合で何も決められなかった。

日銀の投降、白旗の掲揚である。

この失態を映して円が103円/ドルに急伸、株価が15434円に急落した。

安倍政権の経済政策=アベノミクスの破綻が明白になった瞬間だ。

安倍政権はアベノミクス破綻を隠蔽するため、

「英国のEU離脱問題での株価下落」

という情報統制を敷いた。

マスメディアは

「アベノミクス破綻」

の事実を一切報道していない。

そんな、戦前と変わらないいかがわしい国であるというのが、いまの日本の実情だ。


英国のEU離脱決定で、円高・株安の流れを止めることが難しくなった。

このことが7月10日の参院選に大きな影響を与えるはずである。

詳細は

『金利・為替・株価特報』

http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html

の6月27日号

「英国EU離脱決定で安倍政権経済環境急変」

に記述したので、関心がある方はご高覧賜りたい。

1%の資本主義対99%の民主主義の戦い

は新しい局面を迎えることになる。

1%の資本がすべてを支配する時代に反旗が翻された。

日本の参院選でも、1%の資本主義に対して

99%の民主主義の力をはっきりと見せつけてやらねばならない。

51対49で勝つか、49対51で負けるかが、大きな違いをもたらす。

51対49で勝つには、最後の一瞬まで力を抜いてはならない。

念には念を入れて、絶対に投票所に足を運ばねばならない。

この意思と執念が強い方が勝利を収める。

参院選勝利に向けて、市民が大同団結しなければならない。

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