★自民党の公約を酷評した産経新聞の社説をどう読むかー(天木直人氏)

きょう6月11日の産経新聞の社説(主張)に私は驚いた。

 なにしろ、今度の参院選で自民党が掲げた公約を徹底的に酷評しているからだ。

 「無責任な公約は見直せ」と題するその主張が野党の公約を批判するのならわかる。
 
 しかし、自民党の公約を批判しているのだ。

 「自民党の公約はそのまとめ方、内容ともに、

政権与党としての責任や緊張感に欠けていると思わざるを得ない」

 そういう書き出しで始まるこの「主張」の要旨は次の通りだ。

 消費税増税か再延期かによって、その前提はまったく違ってくるのに、

安倍首相が再延期を表明した翌日に1億総活躍プランなど4方針を閣議決定し、

更にその翌日に公約を発表した。どれだけ真剣な議論をしたというのか。

 公約に掲げられている介護、子育て、とりわけ社会保障の充実について、

消費税増税を再延期してその財源確保はどうするのか。

 民進党の岡田代表が赤字国債発行に言及した事を批判し、

自民党は赤字国債に依存しないというが、無責任極まりない。

 さすがに稲田朋美政調会長も財源不足を念頭に、

「すべてのメニューをやるのはむつかしい」と予防線を張ったが、

有権者に聞こえの言い政策を羅列するのではなく優先順位を明示せよ。

 そして最後にこう書いている。

 「安倍政権が増税に耐えうる強い経済を実現できなかったことは隠しようがない」と。

 これ以上の安倍経済失政批判はない。

 アベノミクスは失敗だったと言っているのだ。

 何が起きても、すべて安倍首相のせいにする日刊ゲンダイならまだわかる。

 しかし、読売と並んで安倍政権を支える産経がこのような社説を掲げる事は異例だ。

 その理由はどこにあるのか。

 それはもちろん、産経新聞までもが認めざるを得ないほど安倍政権の経済政策が破綻しているからだ。

 しかし、もう一つの大きな理由がある。

 それは今の野党の下では、安倍政権は逆立ちしても倒れない事を知っているからだ。

 今度の参院選でも自公政権が勝つのは自明であり、安倍政権はさらに続く事を知っているからだ。

 そうである以上、安倍政権をいくら叩いても、安倍首相は怒らない、と高をくくっているからだ。

 野党不在であるからこそメディアが批判しなければこの国の経済は危ないと考えているからだ。

 野党も舐められたものである。

 このような記事を書けるのは元日経新聞の編集委員で

現産経新聞特別記者・編集委員兼論説委員である田村秀男記者に違いない。

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