★安倍政治の格差推進是非を問うのが参院選ー(植草一秀氏)

6月2日に浦和で開かれた「九条の会・さいたま」主催講演会で、

『オールジャパン平和と共生-私達に出来ることは何か-』

の演題で話をさせていただいた。

その発言要旨を高橋清隆氏がブログ記事として掲載下さっている。

「自公勝てば、緊急事態条項が」、植草一秀氏が警告

http://blog.livedoor.jp/donnjinngannbohnn/archives/1902989.html

また、高橋氏が「九条の会・さいたま」

に報告記事を提供下さったので、その内容を紹介させていただく。


「植草一秀さん講演会」報告
「オールジャパン・平和と共生——私たちに出来ることは何か——」

当会では、「オールジャパン・平和と共生」運動を提唱する傍ら、

自らの冤罪(えんざい)事件と闘う経済学者の植草一秀さんを招いた講演会を開催しました
(6月2日(木)、浦和コミセン)。

参院選を前に市民135人が、

わが国の支配構造の仕組みと「戦争と弱肉強食」政治からの脱却方法について、貴重な解説を頂きました。



「米官業政電」による日本支配

わが国の支配者は、米・官・業・政・電と表現できます。

米国を支配している少数の巨大資本が日本も支配し、その下に官僚機構と大企業が位置します。

この手先が政治家とマスコミ16社であります。

GHQは日本を民主化して現在に至るとされていますが、実態は違います。

「逆コース」をトルーマン大統領が唱え、ソ連封じ込めへと動きました。

日本を反共の防波堤にするために非民主化路線にかじを切りますが、

それを担ったのが、公職追放リストに載っていた吉田茂です。

安倍首相のおじいさんの岸信介や児玉誉士夫、笹川良一、正力松太郎の戦犯容疑者を釈放し、

支配に活用します。


官僚による支配の淵源は、律令時代にさかのぼります。

明治の「太政官制」は、これを持ち込んだものです。

第二次大戦後もGHQが利用し、現在に至ります。

そのため、自分たちを支配者と勘違いしている官僚も少なくありません。


一人一票の参政権は、憲法第15条で保障されています。

企業献金を認めると、企業・金の力に政治が流されますが、

1970年の八幡製鉄献金事件の最高裁「合憲」判決の体制が今も続いています。

「電」について言えば、CIAのコードネーム「ポダム」を持たされていた正力松太郎は、

米国との取引に応じたと見ていいと思います。

NHKの籾井会長は秘書から出されたメモを読みますが、日本のリーダーは「読む人」の意ではないでしょうか。

経営委員を選ぶ権限は内閣が持ち、事実上、首相が会長を決めることになります。

選ばれた会長は、理事を選べるので、わが国最大の放送局を政権の配下に置くことができます。


戦争の推進と憲法破壊

日本の領土問題は尖閣諸島、竹島、北方領土の3つがありますが、いずれも米国が埋め込んだものです。

ポツダム宣言もサンフランシスコ講和条約も占領軍の速やかな撤退を定めていますが、

後者には日米安保条約のような協定を結べば米軍が駐留できるただし書きがあります。


現代の戦争は、必要に応じて創作されます。

米国の軍産複合体を維持するのに必要な予算は、年間60兆円に上ります。

そのため、冷戦終結後に作り出されたのが、「テロとの戦い」です。


安倍政権は、これに呼応して憲法を破壊しようとしています。

日本国憲法の三大原理は「人権の尊重」「平和主義」「国民主権」ですが、

2012年に出された自民党憲法改正草案はこの3つを作り変える面が強いものです。

具体的には、
①基本的人権を保障する現憲法97条を丸ごと削除し、同21条が保障する表現の自由を制限
②個人より国家を優越させる=民主主義の否定
③戦争遂行を可能にする、というものです。


改正草案98、99条が定める緊急事態条項は、

内閣にオールマイティーの独裁権を付与するものになる危険が大きく、

当然のことながら③の危険を増大させる要因になります。

「外部からの武力攻撃や内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害」

があれば、政府の腹一つで、

「法律と同一の効力を有する政令」

を決められます。

さらに、選挙もやらなくていい。安倍内閣が永続できます。

1933年にナチスドイツが「全権委任法」を成立させてドイツの独裁政治が始まりました。

この参院選で改憲勢力が3分の2以上取ると、最初にやるのはこれ。

非常に危険で、絶対に取らせてはいけません。



アベノミクス失政と格差拡大

アベノミクス「三本の矢」の結果を見ると、1本目の金融緩和はインフレ率が少し上がりましたが、落ちて失敗。

2本目の財政出動は消費大増税のあべこべの政策で失敗。

3本目の成長戦略は弱肉強食の社会にしようとするもので、日本を破滅に導く。アベノミクスの真髄です。


メッキがはがれ、露わになったのは、一握りの大資本すなわち1%の利益を追求する政策。

成長戦略の柱は、医療・農業・解雇の自由化、大資本に減税というもので、これをまず経済特区でやっていく。


「トリクルダウン」はうそ八百。

注いでいると、上のグラスが大きくなり、下には落ちません。

安倍政権になって、失業率は下がり、有効求人倍率と株価が上がり、

企業収益が最高になったと言っていますが、経済全体の評価は、経済成長率(GDP)で見なければなりません。


民主党政権時代の平均成長率が2・0%、安倍政権のそれは0・7%。

全体のパイが小さくなっているときに、大企業の利益だけ史上最高。

1%の大企業の取り分が大きくなり、残りが減っています。

しかも、失業率が下がるとか、求人倍率が上がるとかは、

この減った取り分を分ける人が増えたことを意味し、一人当たりの取り分がどっと落ちています。



「新三本の矢」は

「GDP600兆円」
「出生率引き上げ」
「介護離職ゼロ」

という「的」ですが、どう増えるのか、道筋が示されていません。

今の日本は中間層を壊していますから、消費が伸びません。

ずっと景気が停滞しているので、人数を増やすしかないのです。

介護離職ゼロというのは、「休むな、ずっと働け」と言う意味で、

一億総活躍というのは、全員低賃金強制労働に動員することを指します。

日本はこれだけ豊かになったといいながら、一人親家庭の子供の貧困率はOECD加盟国中最悪。

日本の格差の大きさはすでに世界有数で、余りある財源を社会保障に充てるべきです。



弱肉強食推進最終兵器TPP

2012年総選挙の選挙ポスターは「ウソつかない、TPP断固反対 日本を耕す自民党」。

これでTPP推進と思う人がいたら、その人の方を疑います。

大きな問題は、TPPが一部の大企業の利益を追求する為の仕組みであり、

ISDS条項で日本の国民が日本のことを決められなくなることです。


公約には

「国の主権を損なうようなISD条項は合意しない」

とありますが、国の主権を損なわないようなISDがあるのでしょうか。

「聖域」も守られず、7年後に再協議することが決まっています。


医療は破壊され、今後は2本立てになるでしょう。

つまり、公的医療保険は守られますが、薬や医療機器、医療行為の値段が上げられ、

政府が持ちこたえられなくなったとき、米国の保険会社が販売する民間保険が導入されます。

医者はもうかる方へ走り、お金持ちはこれを利用できますが、

一般の人はけがや病気になっても、医者にかかれなくなります。



「平和と共生」政治の確立

2014年12月の総選挙で与党は議席の7割を獲得しましたが、

自公に投票した人は全有権者の24・7%にすぎません。

しかも、自民単独では17・4%。

一方、野党に入れた人は28・0%で、こちらの方が多いのです。

小選挙区制のため、野党候補者が複数立つと、票が割れるのです。

国民が「戦争と弱肉強食」の政治を望まないなら、

参院選では32の一人区で野党統一候補を勝たせる必要があります。


「平和と共生」では、32の1人区以外も候補者に公開質問状を出し、

原発・戦争法・TPP・基地・消費税の5つの問題について公約を示してもらいます。

99%の側が手を組めば、25%プラスアルファで、日本の政治は絶対に変えられます。



講演内容を正確にコンパクトにまとめて下さった高橋清隆氏にこの場を借りて深く感謝を申し上げたい。

7月10日の参院選投開票日まで1ヵ月となった。

安倍政権はメディアを活用して

「アベノミクスの是非を問う」

と3年前の参院選と同じことを繰り返して主張するが、

さすがに、多くの主権者が、安倍政権の説明が眉唾であることに気付き始めている。

「アベノミクス」



金融緩和、財政出動、格差推進

を内容とするものだが、

財政出動は2014~2016まで財政超緊縮に転じた。

金融緩和と格差推進は継続されている。

財政超緊縮を財政中立、財政積極に転換することは間違ってはいないが、その実施時期が明確でない。

アベノミクスの「真髄」は「格差推進」で、主権者は、

格差推進を是とするのか、非とするのかを基準にして、

7月10日の参院選で判断を示すべきである。

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