★情報統制・公金バラマキ安倍政権との死闘を制すー(植草一秀氏)

参議院通常選挙まで40日である。

目前に迫っている。

安倍政権は

「再延期はしないと断言」

した消費税再増税の再延期を決めた。

「アベノミクスの三本の矢を全力でふかす」

と言っている。

衆参ダブルは見送り、これから2018年までの2年半の間の解散総選挙のチャンスを探る。

消費税増税の再延期はアベノミクス失敗を証明する事象だが、

増税を望む国民がいないため、失点が失点としてカウントされないという状況が生じる。

2014年12月総選挙で、消費税再増税の延期を決めたことも、

アベノミクスの失敗を証明する事象だったが、増税を望む国民がいないため、

失点が失点としてカウントされなかった。

世界経済がリーマンショック時とはまったく違う状況にあることもはっきりしている。

IMFの2016年世界経済見通しは、

米国   +2.4%

ユーロ圏 +1.5%

日本   +0.5%

中国   +6.5%

となっており、世界のなかでもっとも景気が悪いのが日本である。


アベノミクスが始動して3年半の時間が経過したが、日本経済はまったく浮上していない。

メディアは株価上昇を強調して「アベノミクス成功」を印象付けようとするが、

実態は、ほんの一握りの大企業収益が拡大しただけで、

圧倒的多数の中小零細企業と労働者の分配所得は大幅に減ったというものである。

この「アベノミクスの失敗」を、安倍首相はサミットを利用して、

「世界経済の危機」

にすり替えた。

サミット出席の各国首脳は「世界経済の危機」にまったく賛同しなかったが、

「世界経済の危機を回避すること」という表現なら応じてもよいという温情を示したのである。

安倍首相の側は、サミットを利用して、消費税再増税再延期の口実を獲得する一方で、

財政政策の軌道修正に動き始めている。

私は、円高傾向の下で、

日本経済を立て直すには財政政策を活用する以外に方策がないことを指摘し続けた。

もちろん、2017年4月の消費税再増税など論外であるとしてきた。

為替と株価の関係は、2004年4月以降は、

円高=株安

円安=株高

であるが、
1996年6月~2004年4月の期間では逆転していることを、

『日本経済復活の条件』(ビジネス社)

http://goo.gl/BT6iD7

のなかで明らかにしてきた。


その上で、円高傾向の下で、日本経済を支えるには、

超緊縮に振れている財政政策を中立ないし積極に修正することが必要であることを説いてきた。

安倍政権は熊本地震対策で8770億円の補正予算を編成したが、

これでは積極財政になっていないことを指摘してきた。

ところが、いま伝えられている報道情報によると、

安倍政権が10兆円規模の補正予算編成を検討しているということなのである。

この情報が正しいとすると、経済状況が大きく変化する可能性がある。

私が提示する経済政策の処方箋を安倍政権が利用して、

安倍政権が失脚しないことは、私の本意ではない。

しかし、私が提示する経済政策に関する提言が、どうしても安倍政権に伝わってしまい、

結果として、その政策提言と同じ施策が実行に移される面が多い。

2015年10月の消費税再増税見送り、2017年4月消費税再増税再延期、

そして、大型補正予算編成などである。

日本の株式市場が反転の傾向を示し始めている背景に財政政策の軌道修正可能性の浮上がある。

参院選に向けて株価が上昇し、その影響が選挙結果に反映されることは望ましいことでない。

安倍政権が推進する

原発稼働、戦争法推進、TPP参加、辺野古基地建設、格差拡大

の各問題について、主権者がその是非を判定して投票行動に臨むべきである。

反自公勢力が結集し、大同団結を強めなければ、安倍政権の暴走が続いてしまう。

「安倍政治を許さない!」陣営の結束強化を再度確認して全力を注ぐ必要がある。


2013年7月参院選、2014年12月衆院選、2016年4月衆院補選では、

いずれも、選挙前に一度株価が下落し、

選挙直前に向けて株価が急騰するという相場変動が観察されている。

安倍政権による、広い意味での「相場操縦」が実行されている可能性が高いと見られる。

株価を吊り上げるには、その前に、一度株価が下落しているのが望ましい。

高い株価を吊り上げるのは困難だが、低い株価を吊り上げるのは容易だからだ。

『金利・為替・株価特報』

http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html

では、2月末のG20会合を転換点に、

世界の金融市場の方向感に変化の兆候が生じていることを指摘してきた。

現実に原油価格は2月に1バレル=26ドルの安値を記録したのち、

5月には1バレル=50ドル台を記録している。

日経平均株価も2月には15000円を割り込んだが、直近では17000円台を回復している。


昨年8月以降、世界の金融市場は中国市場の動揺を軸に変動を示してきた。

そのなかで、中国経済メルトダウン説が一世を風靡してきたのだが、

『金利・為替・株価特報』

ならびに

『日本経済復活の条件』

は、中国経済の緩やかな底入れの可能性を指摘し続けてきた。

そして、2月末に中国で開かれたG20会合において、

世界経済の下方リスクが認識され、各国の政策総動員の方向が確認された。

そして、世界金融経済の同様の中心であった中国が政策発動の姿勢を明確に表示し始めたのである。

これに連動して、世界の金融市場が重要な変化の兆候を示している。


日本では財政政策発動の論議が浮上すると、常に、日本の財政危機が取り上げられる。

しかし、日本の財政危機こそ、最大のフィクションなのである。

日本政府は1000兆円の債務を抱えているが、日本政府は同時に1000兆円の資産をも抱えている。

負債から資産を差し引いた「実質債務残高」はほぼゼロである。

実質債務残高がゼロの日本が財政危機に直面しているというのは、悪い冗談以外の何者でもない。

このような初歩的な間違いすら、日本の主要メディアはまったく指摘できない。

経済分析能力が皆無なのである。


財務省は財務省の省益を拡大するために消費税増税の方向に突き進んでいる。

国民経済の視点、国民を幸福にする視点は皆無である。

財務省の利権、財務省の天下り利権を確保するために、

庶民課税である消費税依存体質を構築しようとしているだけに過ぎない。

その消費税増税を推進するためには応援団が必要であり、

そのために、必要のない法人税減税が推進されている。

甘利明経済相事務所の汚職事案について、検察は無罪放免の取扱いを決めた模様である。

この国は、本当に根幹から腐り切っているのである。


この暗黒の日本政治を刷新することが求められている。

米国が支配する日本、

そして、官僚機構と大資本の利権だけを維持拡大しようとする日本、

この構造に利権政治勢力と御用メディアが群がる構造が構築されている日本。

この日本政治を刷新しなければならない。


そのためには、既得権益に対峙する主権者と政治勢力が手をつなぎ、連帯して統一戦線を構築するしかない。

バラバラに対応していたのでは、敵の思うつぼだ。

とりわけ安倍政権は、選挙が近づくと、株価吊り上げを誘導し、利益誘導の予算バラマキを実行する。

このような目くらまし攻勢でぐらついてはならないのだ。

大事なことは、国家百年の計に該当する主要政策課題で、誤りのない選択をすることだ。

その主要政策課題は、

原発、憲法、TPP、基地、格差

である。

安倍政治を打倒するには、絶対に二つの条件を整えることが必要だ。

ひとつは、投票率を引き上げること。

選挙に行かないことが少数による支配をもたらしてしまう。

いまひとつは、安倍政治に対峙する勢力がひとつにまとまることだ。

バラバラな、自己本位の対応は、敵を利するだけである。

大同団結、連帯強化が絶対に必要である。

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