★オバマ広島訪問の隠された狙いは安倍総理の調教にあるー(田中良紹氏)

オバマ大統領の歴史的な広島訪問から一夜が明けて、

新聞各紙はこのニュースを一面に写真入りで報じたが、

そこに使われた写真は二種類あった。

読売、毎日、日経、東京の各紙は演説するオバマ大統領の姿を、

朝日と産経は被爆者を優しく抱きかかえる大統領の写真を掲載した。

テレビ中継を見ていて、涙を流す被爆者が大統領の胸に顔をうずめ大統領が

肩に手をまわす光景が放送されたとき、

フーテンはそれがオバマ広島訪問の象徴として世界に発信されるだろうと思った。

一見「和解」の光景に見える。

しかしそれは世界で唯一被爆を経験した国が

世界で唯一原爆を投下した国に抱きかかえられる光景として映る。

まさに戦後の日米関係を象徴するかのようだ。その写真をフーテンはあまり見たくなかった。

新聞の一面が全紙そうならなくてよかったと思う。

そう思うのはフーテンが米国外交のダブルスタンダードを散々見せつけられてきたからである。

フーテンはオバマの広島訪問の歴史的意義を高く評価するが、

しかしオバマの主張する核廃絶を全面的に支持している訳ではない。

オバマの言う「核なき世界」はテロリストや新興国に核を入手させないようにするのが第一の目的で、

あくまでも米国を含む核保有国の優位を保ちながら、段階的に核を減らしていこうとする。

そのため核の数は減らすが核兵器の精度を向上させる核兵器近代化計画に力を入れ、

オバマは30年間で110兆円の予算を投ずることを決めている。

その一方で核兵器の全廃を求める核兵器禁止条約が100を超える国々から国連に提出されても、

米国を含む核保有国はすべてそれに反対する。

そして唯一の被爆国である日本も中国と北朝鮮の核の脅威を理由に核兵器禁止条約に賛成しない。

しかし中国、インド、パキスタン、北朝鮮というアジアの核保有国は

いずれも核兵器禁止条約に賛成しているのである。

唯一の被爆国である日本が賛成できないところに、

フーテンは原爆を投下した国の胸に抱かれて涙を流す国の姿を見る。

米国の考える「日米同盟の深化」とは日本が完全に米国に隷属することを意味する。

日本が対等にものを言おうとすれば米国は「もう一度原爆を落として目を覚まさせろ」と言う。

それが前回のブログで紹介した米国議会の「本音」である。

そしてオバマは「日米同盟の深化」をこの広島訪問でも演出して見せた。

米国にとって「同盟の深化」が「隷属の深化」を意味するとすれば、

以前のブログで指摘したようにこれはオバマ大統領の安倍総理に対する最終的な調教でもある。

オバマ広島訪問の隠された狙いは、

安倍政権が核武装を考える可能性を根絶するところにあるとフーテンは考えるのである。

そもそもオバマに「核廃絶」を考えさせたのはキッシンジャー元国務長官ら「四賢人」の

「核なき世界」アピールである。

そのキッシンジャーは「日本は必ず核武装する」と警鐘を鳴らしてきた人物である。

彼は日本の周辺国による核攻撃の可能性が現実になれば、

唯一の被爆国であるにしても日本の世論は一気に核保有に転換すると主張し続けてきた。

つまりキッシンジャーの主張はテロリストや新興国だけでなく

日本をも対象にした「核廃絶論」であることを思い返すべきである。

2013年12月に安倍総理は靖国神社を参拝し、

米国がそれに「大いなる失望」を表明したことがある。

オバマ政権は安倍総理に戦前回帰型の危険な兆候を見たのである。

そして直後の14年3月に開かれた「核・安保サミット」で

オバマは安倍総理に突然日本に貸し出した研究用プルトニウム300キロの返還を要求した。

プルトニウムは今年3月に米国に向けて輸送されたが、

これは米国が日本政府内に極秘の核武装計画があることを懸念したためである。

日米関係に詳しいケント・カルダー教授は

日本を取り巻く安全保障環境を1954年のヨーロッパと重ね合わせている。

ベトナム戦争で窮地に立ったフランスは米国に核兵器使用を要請したが、

米国がそれに応えないと、直後に核保有国になった。

それと同じように中国や北朝鮮に対抗する姿勢を安倍政権が強め、

米国が日本の要請に応えないと、日本はフランスのように独自に核保有に踏み切るとみているのである。

そしてカルダー教授は日本には核兵器に転用可能なプルトニウムが48トンもあると指摘している。

アジアを不安定化する恐れのある安倍総理を縛るには、

安倍総理にも世界に向けて「核廃絶」を言わせる必要がある。

それがオバマ大統領広島訪問の狙いの一つではないかとフーテンは思うのである。

そして以前のブログにも書いたが、謝罪はしなくとも「ともに追悼」する意義をオバマは広島で世界に示した。

それは安倍総理に「真珠湾での献花」を暗黙の裡に求めている。

おそらく安倍総理は「オバマと「ともに追悼」した総理として年内にも真珠湾を訪問することになるだろう。

そして9月にはG20サミットが中国で開かれる。

中国政府はその際にオバマ大統領をはじめ安倍総理らを

南京大虐殺記念館に案内する案を検討し始めているという。

すべての戦争犠牲者を追悼することの大切さを訴えたオバマ大統領に、

これを断る理屈はないと思われる。

そうやってオバマ大統領は残された任期中に米国にとって懸念材料の一つであった

安倍総理の調教を完了させるのではないかとフーテンは思うのである。

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