★朝鮮中央通信に匹敵するNHKの御用報道-(植草一秀氏)

2008年の洞爺湖サミット以来の日本開催サミットとなった伊勢志摩サミットが閉幕した。

通常国会は6月1日に会期末を迎える。

7月10日には参議院通常選挙が実施される見通しである。

安倍首相はアベノミクスの失敗を、サミットを利用してごまかそうとしたと見られるが、

薄っぺらな偽装ではすぐに魂胆を見破られてしまう。

その場その場で無責任な発言を繰り返し、つじつまが合わなくなると、

前後の見境なく新たな虚構を積み上げてゆく。

メディアが大政翼賛報道を展開するから、多くの市民がペテンにかけられてしまうが、

事実を忠実に追跡すれば矛盾は誰の目にも明らかになる。

三つのどうにもならない矛盾がある。

第一の矛盾。

2014年12月総選挙の直前にあたる同年11月18日、安倍首相は消費税再増税の18カ月延期を表明した。

その際に、

「来年10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。

再び延期することはない。

ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。」

「平成29年4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします。

3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる。

私はそう決意しています。」

http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2014/1118kaiken.html

(動画の7分48秒以降の部分)

と述べた。


重要なことは、

「景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします」

と述べていることだ。

「景気判断条項」

を付けないということは、経済状況とは無関係に消費税再増税を実施するということだ。

この宣言とリーマンショック云々という話は矛盾している。

経済がどのような状況であろうと、消費税再増税の再延期はしないと断言したのである。

この「断言」自体が間違っているが、

こう断言して、景気状況とは関わりなく消費税再増税に踏み切ることを確約した言葉の責任が存在する。


第二の矛盾。

今回のサミットで安倍首相は

「リーマンショック時と似た状況」

であると述べ、

「世界経済の危機」

と述べた。

他方、日本の国会では、

「アベノミクスで日本経済が改善した」

「日本経済は緩やかな回復を続けている」

「もはやデフレではないと言える状況になった」

などの言葉を繰り返している。

国内の国会では「景気は良い」

と自画自賛して、

サミットでは

「世界経済の危機」

「リーマンショック時と似た状況」

と述べるのでは、ほとんど錯乱状態としか言いようがない。

要するに、

「消費税再増税の再延期はないと断言した」

消せない事実に直面して、

一転して

「世界経済危機説」

を言い始めただけのことなのだ。

このいい加減さを日本の主権者は見過ごすべきでない。


第三の矛盾は、

財政・金融・構造政策の三本の矢を総動員してアベノミクスで世界経済を再浮上させると大見得を切ったことだ。

馬鹿も休み休みにした方がよい。

財政・金融・構造政策の総動員と言いながら、財政政策を超緊縮に転換して、

日本経済を奈落の底に転落させたのは、一体誰なのか。

その不必要な緊縮財政で経済の長期停滞を招き、

再延期はないと断言した消費税再増税の再延期に追い込まれているのはいったいどこのどいつなのか。

アベノミクスで掲げた政策を自分自身で破壊しておいて、

よくもまあ、平然とアベノミクスの三本の矢を総動員して世界経済を浮上させるなどと

臆面もなく宣言できるものだ。

その厚顔無恥ぶりは賞賛に値するものかも知れないが、あまりの支離滅裂さに、

まともな思考回路を有する者は、激しい頭痛に見舞われる状況だ。

野党は不信任決議案を提出し、安倍政権は衆院解散で民意を問うべきだろう。

そして、日本の主権者は、この機会に安倍政権と永遠に決別するべきだと思う。


それにしてもNHKの御用放送ぶりが目に余る。

オバマ大統領の広島訪問には、当然のことながら賛否両論がある。

日本政府は米国政府に謝罪を求めるべきであるし、

謝罪なき広島訪問を認めるべきでないとの主張は当然のことながら存在する。

NHKは公共放送として、異なる意見、主張があるのだから、双方の見解を紹介する責務を負っている。

それが政治的公平を満たす放送である。

ところが、被爆者の声を拾う際も、オバマ大統領の広島訪問を批判する声は一切報道しない。

これでは北朝鮮の御用報道と何も変わらない。

オバマ大統領が広島に来たところで、米国の核政策にはいささかの変化もない。

米国は日本の罪なき市民を大量虐殺したことについて、国際法違反を認めたこともなく、謝罪したこともない。

しかし、米国の行動は明らかに国際法違反の残虐行為であった。

これに対して、抗議すらできない日本政府は、独立国の政府としての役割すら果たしていない。


沖縄で米軍属の元兵士による卑劣かつ凶悪な犯罪が勃発した。

このような卑劣で悲惨な事件が何度繰り返されてきたことか。

しかも、公務中の犯罪であれば、日本は被告を裁判にかける権利さえ有していない。

米国が特別に認めるときだけ、日本の裁判にかけることを許可することがあるだけである。

沖縄における治外法権を認める根拠となっているのが日米地位協定であり、

日本が独立国であるというなら、安倍首相は地位協定の廃棄を米国に要請するべきだ。

しかし、日米首脳会談で安倍首相は、地位協定改定に触れることすらしなかった。

オバマ大統領は米軍属の卑劣で凶悪な犯罪に対して、米軍最高指揮官として謝罪すらしなかった。

メディアがオバマ大統領の広島訪問を

「ありがたいもの」

として絶対視報道を展開し、

世の中にオバマ大統領の「謝罪なき広島訪問」を批判する見解が存在しないかのように報道する姿勢は、

あまりにもいびつである。


メディアは沖縄での卑劣で凶悪な犯罪を

「死体を遺棄した事件」

と言い続けた。

実態は、

「強姦・殺人事件」

である。

警察が捜査を進めれば、「死体遺棄事件」から「強姦・殺人事件」に転換する。

沖縄県警は、オバマ大統領が離日するまで捜査を意図的に進展させず、報道に対しては

「死体を遺棄した事件」

で統一させたのだと見られる。

日本は完全なる植民地である。


このような状況のなかで、沖縄県議会は

地位協定見直し

普天間の辺野古移設断念

海兵隊の撤退

を要請する決議を可決した。

安倍首相は辺野古米軍基地建設断念を米国に要請するべきだが、

米国の僕(しもべ)である安倍晋三氏は、そんなことを一切口にしなかった。


経済政策論議でも、安倍首相の国内における

「アベノミクスで日本経済はこんなに良くなった」

という普段の強弁と、

「世界経済の危機」

「リーマンショック時と似た状況」

という今回サミットでの主張は、

とても同じ人間の口から出る言葉とは思えないものだ。

このような当然の疑問さえ提示しないNHKに、もはや報道機関としての存在価値はない。

誤解を生まぬよう、

「大本営」

と名称を変更するべきである。


安倍首相が衆院解散に突き進まぬなら、

まずは、参院選で反自公勢力が大勝して、安倍自公体制を一気に崖っぷちに追い込むべきだ。

そのうえで、次の総選挙に向けて、盤石の野党共闘体制を構築するべきである。

他方、安倍首相が衆参ダブル選に突き進む場合は、

これを受けて立ち、短期決戦を必ず勝ち抜く覚悟で野党共闘を一気に進展させるべきだ。

もはや、安倍政権を退場させるための時間的猶予は一刻もなくなりつつあることを

すべての主権者が認識するべきである。

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