★日本とイタリアの地位協定の違い、伊では基地の管理権は伊側。
毎日飛行計画を提出させ審査。
テレビ朝日報道ステーション2015年6月23日ー(孫崎享氏)

沖縄での女性殺害事件に関し、日米地位協定改定の問題が浮上している。

A事実関係

 1:TBS 5月24日「アメリカ国防総省、日米地位協定改定には“応じない”」

「アメリカ国防総省は23日、沖縄県で女性の遺体が見つかり、

アメリカ軍属の男が死体遺棄の疑いで逮捕された事件を受けて、

沖縄の翁長知事が日米地位協定の改定を求めていることに対し、これに応じない姿勢を表明しました。

アメリカ国防総省のデービス報道部長は23日、

日米地位協定をめぐり「日本側の懸念には改定ではなく、

運用の改善で対処してきた」と強調したうえで、「これを継続する」と語って、

改定の要求には応じない姿勢を表明しました。」

2:テレビ朝日報道ステーションは2015年6月23日「沖縄 慰霊の日

沖縄県では今日、慰霊の日を迎えた。現在でも日米地位協定が問題となっているなか、

同じ敗戦国であるドイツとイタリアでは別の現実があるという」として報道した。

http://www.asyura2.com/15/senkyo187/msg/502.htmlは文字お越しを報じているので、引用する。

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(6月23日の報ステ)

〔沖縄と違うイタリアの米軍 「主権は譲り渡しはしない」〕

 われわれは地位協定を比較するため、日本と同じ敗戦国イタリアに向かった。

このアヴィアーノ空軍基地には戦闘機部隊が配備され、1000人規模の米軍が駐留している。

日本は地位協定で、基地の管理権を米軍に委ねているが、イタリアは全く違った。

 サヴォルディ司令官(イタリア軍)「この空軍基地に来る方に念を押すんですが、

ここはイタリアの基地でそこに米軍を駐留させているんです。

私こそがこの基地の管理権を持つイタリアの責任者になります」

 イタリアではすべての米軍基地は、イタリアの軍司令官の管理下に置かれている。

イタリア軍は毎日米軍から飛行計画を提出させ審査している。

訓練飛行にもイタリアの国内法を適用し、

昼寝の時間帯には飛行させない等米軍機の飛行回数やルートを制限している。

いずれも日本では考えられないことだ。

 基地内の環境保全についても、

 アヴィアーノ市ベルナルド市長「私たちは米軍基地内の立ち入り調査も行っています。

過去には米軍の土壌汚染への対応を指示し、実際に除去させた事例もあります。

アメリカ側の費用負担で解決することになっているんです」

 基地は受け入れるが主権は譲らない。

 1995年、ランベルト・ディーニ元首相は、アメリカとこの点を再確認した(当時クリントン)。

 ディーニ元首相「イタリア国内には多数の米軍基地がありますが、主権を譲り渡してはいません。

基地の管理権はイタリアにあるんです。アメリカが所有している土地は大使館の中だけです」

 基地の外でもイタリア政府は米軍の行動に責任を以て対応する。

カバレーゼでのスキー客を巻き込んだ事故
(1998年、低空飛行訓練の米軍機が、コンドラのケーブルを切り、
ゴンドラに乗っていた20人全員が犠牲になった)では、事故直後に取り決めがなされ、

この辺りでは低空飛行が行われなくなった。イタリアの当局が米軍の事故機を検証、

強くアメリカに迫って低空飛行訓練を禁止にした。

事故後も飛行機が飛び交う沖縄国際大学とは違った対応だ。

〔敗戦国ドイツが挑んだ交渉 不平等を改定させた「世論」〕

 次に向かったのは、もう一つの敗戦国ドイツ。1993年、ドイツは地位協定の大幅な改定を成し遂げた。

 ドイツ・ラムシュタイン空軍基地は、ヨーロッパ最大の輸送拠点で、

中東での作戦に重要な役割を果たす。米軍約9000人が駐留。

ここドイツでも米軍機にドイツの国内法を適用して飛行制限。

環境保全の責任も米軍に負わせている。

ただこれらは、1993年の地位協定改定で獲得した取り決めで道のりは簡単ではなかった。

 第二次大戦後、分割占領されてきたドイツは、

米軍を始め外国の軍隊が駐留し国民は不平等は地位協定に苦しめられてきた。

 トノ・アイテル氏(元外務省法制局長)。1930年当時、地位協定改定交渉の最前線に立つ人物だ。

 アイテル「改定のきっかけは国民からの声だけではありません。

ドイツ政府も今こそ主権国家として、自国のことは自分たちで決めるべきだと考えたのです」

 しかし改定交渉は、米軍が既得権益を簡単には手放さず難航した。

 アイテル「米軍は最初”改定は必要ない何の問題もない”と言っていました」

 アイテル氏は、「一方的な形での駐留は時代遅れ」だと批判。

「対等なパートナー」として扱うようアメリカに強く迫り続けた。

 「私は交渉の中で言いました。土地を強制的に奪うことはできません。

そのような時代は終わりました。あくまで歓迎できるようなお客様でいてください。

時間をかけてこの考え方は受け入れられました」

 山口豊アナ「ドイツがこの改定で得た者は、日本も努力をすれば得られると思いますか」

 アイテル「それは可能だと思います。

ほかの国々がアメリカとどのような協定を結んでいるのかを知れば、

日本が地位協定を改定する際に、手助けとなる交渉材料が見つかるかもしれません」

 日本政府はこれまで、公式に地位協定の改定をアメリカに申し入れたことはない。

運用の改善をすれば十分という立場だ。

戦後70年、米軍に基地を提供することで日本は平和国家として血を流すことはなかった。

しかしその代償として、沖縄が不条理を背負わされてきたとも言える。

 イタリアのディーニ元首相はこう語る。

 ディーニ「もし日本政府が今の沖縄の問題を優先的に解決しなければならない重大な問題だと

とらえているのであれば、日本なりアメリカなりにおいて、

まず安部総理とオバマ大統領が直接話し合う必要があるはずです。

日本とアメリカの間にある深い友好関係に根ざしてこの問題に共に取り組まなければなりません」

 山口アナ「見てきて初めて分かったということがたくさんあった。

日本とドイツ、イタリアとの地位協定の比較だが、

米兵による事故・事件に関してはあまり大きな違いはない。

ところがドイツ、イタリアはその他の環境問題や騒音問題などで、

ここに斬り込んで実質的に地位協定を改定して権利を平等にしている。

日本はようやく環境問題でアメリカ側と協議を始めているが、

今の所、基地の立ち入り権を得るのがせいぜいだ、という現状だ。そこに大きな開きがある。

 ドイツ、イタリアが何故地位協定の改定が出来たのかというと、

そこは市民の方々の声だったと思う。市民が声を上げ、それに政治家・官僚が突き動かされて、

覚悟をもって臨んで対等な権利と得た。日本はどうだったかと言うと、

50年代に米軍によるさまざまな事故や事件があり、その時に本土にある米軍基地を沖縄に移した。

本土の人々の不満はやわらいだが、目につかないところに行ってしまった。

その瞬間に沖縄の人々は怒るが、本土の人は無関心になるという構造を生んだ。

それこそが地位協定が改定されたいない最大の原因だし、辺野古の問題にも同じことが言えると思う」

  立野純二・朝日論説主幹「…首都圏の空の主権を外国軍が持っているという現実がある。

これを以て果たして独立国と言えるのかと考えてしまう」。

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