★沖縄女性殺害事件。沖縄の基地にどう対応すべきか、
基地返還要求は日米関係を壊すものではない。
「ドイツ駐留NATO軍地位補足協定」を参考にすべきだ。ー(孫崎享氏)

1 沖縄女性殺害事件が起こった。

2 政府は20日、関係閣僚会議を開き、米政府に軍人や軍属の綱紀粛正を強く求めることを確認した。
安倍晋三首相は主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)に合わせて開かれる日米首脳会談で、
オバマ大統領に再発防止を求める方針だ(朝日)。

3:幾度となく米軍側は再発防止の約束をしてきている。こうしたことで犯罪は減少しない。

4:あまり報道されないが、米軍基地内で、米国女性軽視への性的暴行も極めて多い。

 相手国の兵士や住民を殺す、

そして自らも死の恐怖にさらされてきた兵士の価値観は一般市民の価値観ではない。

 再発防止の最大の策は、不要な米軍基地を閉鎖することだ。

5:この中で閉鎖を最も実施できるのは海兵隊基地である普天間基地だ。

 海兵隊の任務は緊急展開で、沖縄にいなければならない部隊ではない。

米国本土でも、ハワイでも、グアムでもフィリピンでも豪州でもどこにいても機能する部隊である。

6 ここで琉球新報の社説の一部を紹介する。

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えたいの知れない重苦しい塊が胸の中に居座り続けている。

なぜ繰り返し繰り返し、沖縄は悲しみを強いられるのか。この悔しさはまさしく、持って行き場がない。

被害者の恐怖と無念はいかばかりか。想像すると胸が張り裂けそうになる。もう限界だ。

今のままの沖縄であってはならない。

しかも相手はかつて海兵隊員として専門の戦闘訓練、

時には人を殺す訓練をも受けたはずである。なすすべがなかったに違いない。

沖縄はまさに現在進行形で「戦場」だと言える。

政府は火消しに躍起とされる。沖縄は単なる「火」の扱いだ。

このまま米軍基地を押し付けておくために当面、県民の反発をかわそうというだけなのだろう。

沖縄の人も国民だと思うのなら、

本来、その意を体して沖縄から基地をなくすよう交渉するのが筋ではないか。

だが辺野古新基地建設を強行しようという政府の方針には何の変化もないという。

この国の政府は明らかに沖縄の側でなく、何か別の側に立っている。

綱紀粛正で済むなら事件は起きていない。

地元の意に反し、他国の兵士と基地を1県に集中させ、

それを今後も続けようとする姿勢が問われているのである。

7:戦後、日本と同じように米軍基地を受け入れた国にドイツがある。

 ドイツは同じように地位協定を持っている。

 ここでは

①基地の米軍の軍事的教養を評価する、

②この評価と、返還した場合に生ずるドイツ側利益と比較し、
後者が大きい時にはドイツは兼官要求が出来て米国はこれに応ずるものとするとの定めがある。

 日米にはかかる条項はない。しかし条項がないからその趣旨で交渉できないものではない。

少なくとも、それに基づいて交渉して、日米関係が壊れるというものではない。

 以下参考

本間浩著「ドイツ駐留NATO軍地位補足協定に関する若干の考察 

48条5

軍隊又は軍属機関による施設区域の返還については、次の規定を適用する。

⒜軍隊又は軍属機関の当局は、使用する施設区域の数及び規模を必要最小限度に限定することを

確実にするために、施設区域の需要について絶えず検討する。

これに加えて、ドイツの当局から要請があるときは、個々特殊な場合におけるその需要を点検する。(省略)

特定の施設区域については、共同の防衛任務に照らしてもその使用よりもドイツ側の利益が

明らかに上回る場合には、ドイツ当局の当該施設区域の返還請求に適切な方法でこれに応ずるものとする。

「ドイツ側」の「利益」という基準は、合意議事録ではいっそう明確に表され、

「ドイツの非軍事部門の基本的な必要性、特に国土整備、都市計画、自然保護および農業上、

経済上の利益に基づく」と表現されている。」

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