★国民が歓迎しない謝罪なき米大統領広島訪問ー(植草一秀氏)

5月7日付ブログ記事

「知られざる原爆投下の真実とオバマ広島訪問」

http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/post-77ea.html

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「米国は日本への原爆2発投下を「目的」に行動した」

http://foomii.com/00050

にオバマ大統領が伊勢志摩サミット出席のために訪日する際に、

5月27日午後ないし5月28日午前に、広島を訪問する可能性が高いと記述した。

そして、その通り、オバマ大統領は5月27日午後に広島を訪問することが公表された。

記事では、次のように記述した。

「伊勢志摩サミット参加のために来日するオバマ米大統領による広島訪問についての情報が観察されている。

米国はオバマ大統領の広島訪問を検討していることを明らかにしている。

しかし、謝罪はしないとの方針も明示している。」

「原爆投下によって無辜の市民が一瞬にして数十万人単位で殺戮され、

その後もおびただしい数の放射能被害者を死や苦しみに追い込んだ。

このことに日本政府は抗議せず、米国は謝罪していない。

この現実に手を付けぬまま、オバマ大統領の広島訪問だけが実行されようとしている。

欺瞞に満ち溢れていると言わざるを得ない。」

米国の原爆投下を日本政府が抗議せず、米国も謝罪していない。

では、オバマ大統領は何を目的に広島を訪問するのか。

原爆の威力がどの程度あったのかを、自分の目で見物するために広島を訪問するとでも言うのか。


沖縄では、20歳の女性の死体を遺棄した容疑で、米軍属の米国人が逮捕された。

このタイミングでオバマ大統領が来日することになる。

沖縄の過大な基地負担と米国軍人による凶悪犯罪の多発について、

オバマ大統領がどのような謝罪を行うのか注目しなければならない。

このような凶悪犯罪に見舞われている沖縄県民に対して、

さらに基地負担を押し付ける考えを述べるのだろうか。

米国大統領選で共和党候補者に指名される可能性の高いドナルド・トランプ氏は、

日本が米軍駐留費を全額負担しないなら、米軍は日本から撤退することを検討すべきだとの考えを示している。

日本にとっては千載一遇のチャンスになる。

日本が無条件降伏を受け入れたポツダム宣言には以下の条文が置かれている。

ポツダム宣言第十二条
十二、前記諸目的カ達成セラレ且日本国国民ノ自由ニ表明セル意思ニ従ヒ平和的傾向ヲ有シ且責任アル政府カ樹立セラルルニ於テハ聯合国ノ占領軍ハ直ニ日本国ヨリ撤収セラルヘシ

また、日本の国際社会への復帰根拠となったサンフランシスコ講和条約には以下の条文が置かれた。

サンフランシスコ講和条約
第六条
(a)連合国のすべての占領軍は、この条約の効力発生の後なるべくすみやかに、且つ、いかなる場合にもその後九十日以内に、日本国から撤退しなければならない。


日本の独立回復後、占領軍は日本から撤退することが義務付けられた。

ところが、サンフランシスコ講和条約第6条にはただし書きが付けられた。

「但し、この規定は、一又は二以上の連合国を一方とし、日本国を他方として双方の間に締結された若しくは締結される二国間若しくは多数国間の協定に基く、又はその結果としての外国軍隊の日本国の領域における駐とん又は駐留を妨げるものではない。」

さらに、同講和条約第3条には次の規定が盛り込まれた。

「第三条
日本国は、北緯二十九度以南の南西諸島(琉球諸島及び大東諸島を含む。)
孀婦岩の南の南方諸島(小笠原群島、西之島及び火山列島を含む。)並びに沖の鳥島及び南鳥島を
合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。このような提案が行われ且つ可決されるまで、合衆国は、領水を含むこれらの諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するものとする。」

つまり、米軍は日本の独立回復後、すみやかに日本から撤退することが定められたが、

日米両国は日米安全保障条約を締結し、米軍の駐留が継続され、現在に至っている。

そのなかで、沖縄は1952年4月28日の日本の独立回復と同時に、

日本から切り離され、米国施政下に置かれた。

そして、日本本土にあった米軍基地は沖縄に移設され、

現在では日本に存在する米軍専用施設の74%が沖縄に集中している。

第2次大戦で地上戦が行われ、沖縄は本土防衛のための捨て石にされた。

敗戦後は、日本から切り離された。

そして、日本復帰後も、過大な基地負担が押し付けられたままになっている。

そのなかで、米兵による凶悪犯罪が後を絶たない。

この状況下でオバマ大統領は沖縄に謝罪することもせず、沖縄の米軍基地建設推進を強要するのか。

無辜の市民を大量虐殺した現地を訪問して、国際法違反の行為について、

謝罪もせずに観光のために訪問するというのか。

心ある日本国民は、オバマ大統領の「謝罪なき広島訪問」に連帯して抗議の意思を表明するべきである。


5月7日月記事に記述したが、

木村朗氏と高橋博子氏による著書

『核の戦後史』(創元社)

http://goo.gl/MiQ6BH

が絶妙のタイミングで刊行された。

上記掲載書の前編で、木村氏は、原爆開発から投下に至るまでの経緯を詳細な史料、

データを基に極めて詳細に、かつ、平明に開設されている。

後編では高橋氏が重大事実を明らかにしている。

原爆投下には「人体実験」の側面があり、人体被害は詳細に調査しながら一切の治療を行わず、

また原爆による残留放射能を認めなかったことや内部被ばくの存在を認めなかったことなどの事実が

明らかにされているのだ。

そして、より重大な事実は、

日本政府が1945年8月10日にスイス政府を通じてアメリカに原爆使用について公式に抗議した事実が

確認されるものの、それ以後は、日本政府による抗議が存在しないということだ。


第2次大戦を集結させるために原爆を2発も投下する必然性は存在しなかった。

米国は

2発の種類の異なる原爆を2発とも日本に投下するという「目的」を有した、

と同時に、

ソ連の対日参戦後、速やかに原爆を投下し戦争を終結させること、

を目指すとともに、

原爆投下前にソ連が対日参戦し、戦争が終結してしまうことを回避すること、

を目論んだと考えられるのだ。


米国の狙いは、

1.2種類の原爆を実戦で使用し、その効果と影響を現実のデータで確認すること

2.ソ連に対するデモンストレーションとして、2種類の原爆を投下し、ソ連に対する軍事的優位を確立すること

にあったと考えられる。

日本サイドには、「国体護持」にこだわらなければ、原爆投下前のポツダム宣言受入れは可能であったから、

「国体護持」にこだわることによって、広島、長崎の市民の大量虐殺を招いてしまった、という問題が残る。

こうした歴史の総括、責任の明確化という問題がおろそかにされたまま、

敗戦70年という時間を経過しているのである。


8月6日と8月9日の原爆投下によって、無辜の市民が一瞬にして数十万人単位で殺戮され、

その後もおびただしい数の放射能被害者が死や苦しみに追い込まれた。

この事実が厳然として存在する。

この事実がありながら、日本政府は米国に抗議せず、米国政府は謝罪していない。

「生活の党と山本太郎となかまたち」共同代表の山本太郎参院議員は、

2015年8月25日の、参議院安保法制審議特別委員会で次のように述べた。

「広島、長崎、それだけじゃない、東京大空襲、そして日本中が空爆、爆撃をされた。

それによって50万人以上の方々が亡くなっていますよ。

この50万人の中に、そのほとんどを占めるのが一般市民じゃないですか。

子供、女性、民間人への無差別攻撃、アメリカによる広島、長崎の原爆投下、

それだけじゃなく、東京大空襲を含む日本全国の空爆、民間人の大虐殺、

これは戦争犯罪ですよね、国際法違反ですよね、いかがですか。」

この質問に対して岸田文雄外務大臣は、戦争犯罪、国際法違反にあたるかどうかには触れず、

アメリカの行為が

「国際法の思想的基盤にあります人道主義の精神に合致しない、このように我が国は理解をしております。

国際司法裁判所等におきましてもそうした議論が行われていると承知をしております」

と答弁した。

国際法違反であるのかどうかという山本氏の質問に答えていない。


日本が独立国であるなら、米国に対して

「国際法違反は国際法違反だ」

とはっきりと言うべきだ。

米国が、

「日本が米軍駐留費を全額負担しないなら、日本から米軍を撤収する」

と言うなら、

「はい、喜んで!」

と声を上げて、米軍に撤退してもらうべきである。

日本は中立国として、専守防衛に徹し、自国を守れば良い。


オバマ大統領が広島に行くことが、なぜ日本人の喜びなのか。

理解不能である。

オバマ大統領が広島を訪問し、謝罪し、哀悼の意を表するというのなら、広島訪問の意味があると言える。

選挙が近づき、オバマ大統領の広島訪問で得点を稼ぐ、などという行為は

「ゲスの極み」

でしかない。

謝罪をしないのなら、日本政府はオバマ大統領の広島訪問を拒絶するべきである。

敗戦国といえども日本は独立国である。

そう考えるなら、

「国際法違反は国際法違反である」

という主張を米国に対しても堂々と提示するべきである。

これをしないということは、日本国民に対する愛と誠実さが欠落していることを意味する。

米国に言うべきことを言わず、広島を訪問してくださり、誠にありがたい、というのは、

あまりにも情けのない対応だ。

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