★金・利権・不正まみれの五輪なら返上しかないー(植草一秀氏)

オリンピックの東京招致を行った招致委員会が不正資金を支出した疑いが浮上している。

2013年7月と10月に、2020年東京オリンピック招致の名目で、

国際オリンピック委員会(IOC)前会長のラミアン・ディアク氏の息子に関係するシンガポールの口座に、

「東京2020年五輪招致」

という名目で2億2300万円の送金があったことを把握したと、

フランス検察当局が5月12日に発表した。

日本のメディアは第一報を伝えたものの、この巨大疑惑を大々的に報道しない。

三大御用コメンテーターの一人である元朝日新聞の星浩氏は、

東京オリンピック組織委員会会長の森喜朗氏が生放送番組に出演しているにもかかわらず、

恐る恐るこの疑惑に触れただけで、まったく追及もしなかった。

疑いは招致委員会が東京招致を実現するために、

賄賂を送った

というものだ。

これが事実であれば、日本は五輪開催を辞退する必要が生じる。

また、日本の招致委員会の責任者の責任が問われなければならなくなる。

日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長は、

竹田氏が理事長を務めていた東京2020招致委員会としての支払いの事実を認め、

「正式な業務契約の対価として支払った」

と述べた。


竹田氏は記者に対してこう答えている。

「招致活動はフェアに行ってきたと確信している。

支払いはコンサルタント料と確認でき、公認会計士の監査、指導を受けた上で送金されている。」

竹田氏の発言は、

2億2300万円の支払いが、

コンサルタント会社に対して、コンサルタント料として支払われ、その支払いについては、

公認会計士の監査を受けていることを示しているに過ぎない。

「招致活動がフェアに行われた」

かどうかについては、

「竹田氏が確信している」

というだけで、

フェアに行われたとの立証はなされていない。

「フェアに行われなかった」

という証拠がフランス検察当局によって公表されたが、その公表内容を否定する説明、証拠は示されていない。

コンサルタント会社にコンサルタント料を支払ったのかどうかが問題になっているのではない。

コンサルタント会社が、賄賂を送ったのかどうかが問題になっている。

問題をすり替えてはいけない。


招致委員会が契約し、資金を支払い、契約を締結したコンサルタント会社が、

不正な賄賂を送ったのが事実であることが明らかにされる場合、最終的な責任を負うのは招致委員会である。

コンサルタント会社が契約違反行為を行って賄賂を送ったということになれば、

招致委員会はこのコンサルタント会社を刑事告発する必要が生じる。

しかし、2億2300万円もの資金の支払いを招致委員会が認めて支出を行い、

しかし、それは不正な賄賂資金としての支払いではなかったと主張するなら、

契約の内容、および、2億2300万円の金額を支出した根拠を明示することが必要である。


安倍首相がアルゼンチンのブエノスアイレスに行き、

2020年オリンピック開催地が東京に決定されたIOC総会は、2013年9月7日に開催された。

日本の招致委員会からIOC元会長の息子の関連口座への資金送金は

2013年7月と10月に実行されたとフランス検察が公表しているのだ。

この資金が「賄賂」資金であれば、

日本はオリンピック東京開催を返上するしかない。

当たり前のことだ。

「不正招致をして五輪開催」

などという恥ずべきスキャンダルまみれの五輪を開催しようと考える主権者など、

ほとんど存在しないだろうと考えられるからだ。

世界に対して説明することが不能になるからだ。


新国立競技場建設、エンブレム、聖火台

などのスキャンダルにまみれてきた東京2020の、

決定的な汚点が

露見しつつある。

連日、各紙が1面トップで続報を伝えてゆかねばならない巨大スキャンダルを、

マスメディアが大きく報道しないのは、マスメディアが権力の僕(しもべ)になり下がっている証左である。

日本の招致委員会が支払った資金が、不正な賄賂資金であったことが判明するなら、

2020年東京五輪開催はあり得ない。

必ず開催辞退に追い込まれる。

安倍政権の対応が遅すぎる。

そして、この問題は、安倍政権を崩壊させる爆発力を有するものだ。


五輪を目指して切磋琢磨するアスリートの努力は素晴らしいものだ。

しかし、近年のスポーツを取り巻く、「取り巻き」の行動は、

欲まみれ、金まみれ、利権まみれ、不正まみれ

である。

新国立競技場建設問題があれほど巨大な騒動に発展した理由は、

建設費の膨張にある。

建設費の膨張が問題視された理由は、その建設費が血税によって賄われるからだ。

血税を投入して実施する事業である以上、なし崩しの金額膨張は許されない。

だから、ザハ・ハディッド案が承認取り消しになったのだ。

これは、開催費用についても、まったく同じように適用される。


なし崩しで開催費用を膨張させることは認められない。

森喜朗氏は、国民が歓迎している五輪だから、

開催費用の増大は、皆で検討して解決するべきだとの趣旨の発言を示したが、

こんな人物が日本の首相を務めていたというのは、悪い冗談でしかない。

五輪期開催費用についても、当初提示案通りに実行しなければならない。

費用が拡大し、日本の主権者が費用拡大に同意しないなら、

開催返上をIOCにできるだけ早く伝える必要がある。

そもそもオリンピックの基本精神は、

「フェアプレー」

にある。

「フェアプレー」の祭典であるオリンピックを不正に招致するというのは、

笑えぬ冗談だ。

日本の主権者が賄賂資金を負担する正当な根拠は存在しない。

FIFAも同じ。

五輪も同じ。

「スポーツ」



「スポーツ利権化」し、

「ブラック化」している。


「五輪・五輪」

と騒いでいる人々は、アスリート以外の大半は、利権集団、シロアリ軍団だ。

こんなことにお金をばら撒く前に、財政資金を投入しなければならない対象が山積している。

保育所

老人介護施設

大学進学費用支援

ひとり親世帯の子どもの貧困

やらねばならぬ政府の仕事が山積し、打ち捨てられている。

五輪招致の前に、やるべき仕事がいくらでもある。


フランス検察当局が贈賄の疑惑を明らかにしたことは、日本にとっての天祐である。

もともと、

「金まみれ、利権まみれ、不正まみれ」

のオリンピック・パラリンピックを、

日本が開催できない

正当な理由を提供しつつあるからだ。

利権まみれ、不正まみれのオリンピックなど、日本にいらない。

そこにつぎ込むお金を、国民の社会保障充実、子育て、教育、生活支援に差し替えるべきだ。

日本の招致委員会が「贈賄」に手を染めたのかどうかを明らかにしたうえで、

「クロ」との判定が出るなら、安倍政権は直ちに五輪開催返上を国際社会に申し出なければならない。

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