★日本政治最大の課題は民進党・連合の分離ー(植草一秀氏)

消費税の税率を8%から10%に引き上げることが間違った政策であることは明白である。

そもそも、5%から8%に引き上げたことが間違いである。

この増税を決めたのが野田佳彦政権。

5%から8%への引上げを実行したのが安倍晋三政権。

野田氏はすでに失脚したが、安倍氏にも責任を取らせる必要がある。

安倍首相は2014年11月18日に、

当初予定していた2015年10月の税率10%への再増税を18カ月延期することを発表した。

安倍政権はこれで選挙をやり、衆議院の与党多数議席を維持したが、これもおかしい。

消費税率引き上げの延期は、アベノミクスの失敗を意味した。

消費税率を5%から8%に引き上げたことで、日本経済は不況に転落した。

そのまま大不況に陥る公算が高まり、10%への引上げを18カ月延期した。アベノミクスの失敗だ。

このとき安倍首相は、

「来年10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。

再び延期することはない。

ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。」

と発言した。

「平成26年11月18日安倍内閣総理大臣記者会見」

http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2014/1118kaiken.html

7分48秒から8分33秒。


消費税の再増税を実施できる環境にない。

そもそも、税金の取り方が間違っている。

2009年8月の総選挙で、民主党は

「シロアリ退治なき消費税増税はやらない」

と断言した。

その張本人が野田佳彦氏だ。

https://www.youtube.com/watch?v=y-oG4PEPeGo

「マニフェスト、イギリスで始まりました。
 ルールがあるんです。
 
 書いてあることは命懸けで実行する。
 書いてないことはやらないんです。
 それがルールです。
 
 書いてないことを平気でやる。
 これっておかしいと思いませんか。
 
 書いてあったことは四年間何にもやらないで、
 書いてないことは平気でやる。
 
 それは、マニフェストを語る資格はないというふうに、
 ぜひ、みなさん、
 思っていただきたいと思います。
  
 その一丁目一番地
 税金の無駄使いは許さないということです。
 
 天下りを許さないわたりを許さない。
 それを徹底してゆきたいと思います。
 
 消費税1%分は二兆五千億円です。
 十二兆六千億円ということは、
 消費税5%ということです。
 
 消費税5%分の皆さんの税金に、
 天下り法人がぶら下がっている。
 シロアリがたかっているんです。
 
 それなのに、シロアリを退治しないで、
 今度は消費税引き上げるんですか?
 
 消費税の税収が二十兆円になるなら、
 また、シロアリがたかるかもしれません。
 
 鳩山さんが四年間消費税を引き上げないと言ったのは、
 そこなんです。
 
 シロアリを退治して、
 天下り法人をなくして、
 天下りをなくす。
 
 そこから始めなければ、
 消費税を引き上げる話は
 おかしいんです。
 
 徹底して税金の無駄使いをなくしていく。
 それが民主党の考え方であります。」


消費税率の10%への引上げは間違った政策だから、

安倍政権が消費税再増税の再延期を決めても失点にならないという声がある。

しかし、それは違う。違うというより、容認するべきでない。

野田佳彦氏や安倍晋三氏など、自分の言葉に責任を持たない人間が増殖していることが、

この日本を転落させている。

2009年に開かれた光り輝く展望を粉々に打ち砕いたのは、菅直人氏と野田佳彦氏だ。

そして、その流れを汲む安倍晋三氏が登場して、この国を破壊している。

5月11日のTPP批准阻止国会行動で、火炎瓶てつさんが、安倍政権の本質を見事に摘示した。

てつさんは、

安倍政治の本当の三本の矢は

搾取・戦争・弾圧

なのだと言った。

多国籍企業が世界を収奪し尽くすことを全面支援する安倍政権。

多国籍企業が利益を極大化させるために創作する戦争を推進し、その戦争に全面加担する安倍政権。

政権に歯向かう市民を国家権力で弾圧しようとする安倍政権。

この安倍政権を倒すことが求められている。

「消費税再増税を再延期することはないとはっきり断言する」

と述べた、発言に対する責任を、日本の主権者は問うべきだ。


2009年に実現した日本政治刷新の流れを崩壊させた主犯は誰か。

その主犯は、民主党のなかにいる。

鳩山首相は、普天間の県外、国外移設の方針を貫くべきだった。

これを撤回してしまったことは正しくなかった。

だから、鳩山首相にも責任はある。

しかし、それは国民を騙した行為ではなかった。

県外、国外移設の方針を実現するために力を注いだが、実現にまでこぎつけなかったということだ。

鳩山元首相自身が、そのことを悔いて、深く反省されている。

沖縄の主権者の意思を尊重する姿勢にはいささかのブレもない。

辺野古への回帰を誘導したのは、岡田、前原、北澤の3閣僚である。

彼らは総理の意向に沿って動かなかった。

「君側の奸(くんそくのかん)」

という言葉はこの3名のためにある。


そして、鳩山政権崩壊と同時に総理の椅子をかすめ取った菅直人氏。

この人物が2010年6月17日に、突然、消費税増税を公約に掲げて、主権者政権が瓦解したのだ。

「シロアリを退治しないで消費税を上げるのはおかしい」

と公約した民主党政権が、突然、消費税増税の旗を掲げた。

このために、2010年7月11日の参院選で民主党は大敗した。

ここから、日本政治の旧政復古が始動した。

後継首相に就任したのが野田佳彦氏だ。

「シロアリを退治しないで消費税を上げるのはおかしい」

と声を張り上げた、その張本人が、シロアリに魂を売った。

野田佳彦氏は大臣になるため、総理になるため、財務省の軍門に下った。

人間として、もっとも恥ずべきことをして総理になった。


この野田氏が2012年8月に消費税増税を国会で制定して12月に総選挙を行った。

安倍晋三に政権を献上するために選挙を行ったのである。

順当に安倍政権が生みだされて、いまの惨状がある。


この歴史事実を踏まえたとき、私たちは、日本政治の病巣が、

どの部分にあるのかを冷静に見つめる必要がある。

もはや、日本全体が機能不全に陥っている状況にあるのだが、そもそもの病原がどこにあるのか。

これを見定めて、その患部を摘出することが命を救う手立てである。

その根源は、いまの民進党の一部にある。

安倍自民党が暴走しているのは事実だが、自民党というのはもともとそのような政党だ。

憲法改定と叫び続けて来たし、

原発は推進、

消費税も引き上げると言ってきたし、

辺野古に米軍基地を造るとも言ってきた。

だから、自民が政権を奪還して、現在のような政策を進めることは、基本的には「順当」という範疇に入る。

ただし、憲法改定の手続きを踏まずに憲法の内容を改定してしまうというのは、

常識の範疇を超えた、狂気の範疇に入る。

自民党より、はるかに深刻な政党がある。

それが民進党だ。

原発に賛成なのか反対なのか。

集団的自衛権に賛成なのか反対なのか。

TPPに賛成なのか反対なのか。

辺野古米軍基地に賛成なのか反対なのか。

消費税増税に賛成なのか反対なのか。

方針が明確でなければ、主権者が票を入れるか入れないか、判断しようがない。


「シロアリを退治しないで消費税を上げるなんて絶対に許さない!」

と言っていた張本人が、シロアリを一匹も退治しないで消費税増税を強行採決して決めてしまうのでは、

主権者が選挙に行かなくなるのも無理はない。

いまの民進党の中枢に居座る勢力は、

原発推進、集団的自衛権容認、TPP推進、辺野古米軍基地推進、消費税増税推進、

というのが実態だろう。

そのことははっきりしているのだから、

これに反対する議員は、なぜ、ここから離脱して別の政党を作らないのだ。

「檻のなかの狐と狸」の状況をなぜやめようとしないのか。


恐らく巨大な政党交付金に群がっているのだ。

このカネを幹部が私物化するから、反対派が離脱できない。

政党交付金の制度を全面改定するべきだ。

政治にかかる費用を主権者が負担するなら、そのお金を政党ではなく、各議員に分配するべきだ。

議員に分配された交付金を持ち寄って政党の活動資金にするべきなのだ。


民進党問題を解決しなければ、政治の刷新が難しい。

民進党が自発的に分離しないなら、主権者はこの党を徹底的に干すべきだ。

次の総選挙で共産党を野党第一党に押し上げるのが、恐らく最も有効な方法になるだろう。

民進党の分離が実現すれば、主権者勢力の結集、連帯、大同団結が可能になる。

これを誘導するために、もう一つ必要なのが、連合の分離だ。

自公の側に位置する組合と反自公の側に位置する組合は分離するべきなのだ。

連合を分離し、民進党を分離させる。これが日本政治刷新に必要不可欠だ。

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